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国公労連速報 2007年3月15日《No.1800》
【社会保険庁改革対策委員会ニュースNo.6】
     
 

 

「日本年金機構法案の概要」に関する見解 発表

 社会保険庁「改革」をめぐり、社会保険庁は2月27日、自民党社会保険庁等の改革ワーキンググループ・厚生労働部会合同会議に「日本年金機構法案の概要(案)」を明らかにしました。(3月13日には、法案が閣議決定され国会提出されました。関連する速報は追って配信します)
 社会保険庁を解体し、年金業務を新たに設置する日本年金機構に担わせ、さらにその業務の多くを民間委託するとする内容となっていますが、民間委託によって、制度の安定的運営に支障が生じることが懸念されます。
 また概要は、職員の採用や転任、配置転換等において、使用者に幅広い裁量を与えた上で、職員の分限免職にまで言及しています。使用者である国は、職員の雇用に責任を果たす必要があります。こうした問題意識から国公労連・厚生共闘は、「概要」の問題点について、3月7日厚生労働省記者クラブにおいて「『日本年金機構法案の概要』に関する見解」として発表しました。
 記者会見には、幹事社のNHKをはじめ12名の記者が出席し、国公労連から河村書記次長と北畠中執、厚生共闘からは全厚生杉浦副委員長と飯塚書記長、福士書記次長が参加しました。
 冒頭、河村書記次長から、いま国民が求める「安心できる年金」の確立のためには、年金制度の改善が緊急に求められていることや、「公務が悪、民は善」の図式は成り立たず、法案提出の必要性が認められないことなどが強調されました。
 また「概要」の具体的な問題点として、効率性ばかりが追求されることによって制度の安定的運営が困難となること、年金個人情報の流用が懸念されること、ワーキングプアをつくり出す恐れがあること、そして国の雇用責任が放棄され分限免職の強行が想定されていることなどを指摘しました。記者からは質問が相次ぎ、国公労連の回答に熱心にメモを取る姿がみられました。
(見解の全文は、国公労連及び全厚生ホームページに掲載しています)

<「日本年金機構法案の概要」に関する見解の要旨>

【社会保険庁解体の必要性に疑問】

 ◆不祥事根絶は再発防止策こそ必要
  ○不二家やリンナイなど後を絶たない民間企業の不祥事
   →「公務が悪、民は善」の図式は成り立たない

 ◆組織改編でなく制度改善こそ急務
  ○国民年金は4割が未加入、厚生年金も3割が未加入 空洞化する公的年金
  ○高い掛け金と低い支給額が国民の年金不信・不満の本質

【制度の安定運営に障害】

 ◆効率性のみに変質
  ○日本年金機構役職員には、効率性を求める一方国の生存権保障義務が欠落

 ◆年金個人情報の流用が懸念
  ○年金記録は個人の収入が含まれ、将来の受給額も予測可能
   →民間企業の営利活動への流用が可能(公務員が行うこととの違い)

 ◆年金制度の安定的運営が困難に
  ○競争入札により受託業者がその都度交替、不慣れな運営
   →年金記録は1ヵ月でも空白が生じれば重大な制度不信に
   →「年金の記録管理が不適正なので契約を解除する」では手遅れ
  ○「年金新組織改革推進会議(仮称)」の民間有識者は市場万能論者の危険性

 ◆ワーキングプアをつくり出す
  ○価格競争の入札では人件費の抑制は避けられない、しかも有期契約

【国は雇用責任を果たすべき】

 ◆無責任な採用システム
  ○企業の人事・労務管理の立場から、採用選考に口出しする機関の設置
  ○労働組合敵視の採用選考が徹底される懸念
  ○職員の雇用・労働条件に責任を負わない者が職員の採用に介在する異常

 ◆分限免職は許されない
  ○形式的になりかねない社会保険庁長官の分限免職回避のための努力
  ○「不正免除」を考慮することは不当な二重制裁
  ○社会保険庁長官に広い裁量権を付与しての分限免職は断じて容認できない

 ▼会見後の記者との主なやりとり

記者) 当初、自民党案ではもっと激しい分割・民営化を想定していたが、今回の法案では組織が残っており、「看板の架け替え」という批判もあるが。

国公) 概要では、公法人の業務を、さらに細分化して民間委託することになっている。こうした業務の連携を断ち切れば、円滑な業務運営は困難となる。いまの社会保険庁では、さまざまな業務を経験し、年金全般の知識を蓄積している。年金制度や適用のしくみを理解しているから、保険料徴収にも説得力を持つ。この点で、一体的な運営が必要と考えており、法案は「看板の架け替え」ではない問題がある。

記者) 見解の中で、民間委託によって個人情報が流出するとしているが、覗き見問題でも明らかなように現行の公務でも発生しており、説得力に欠けるのではないか。

国公) 目的外使用、データ流出はあってはならないことであり、厳しく受け止めなければならない。
 見解で述べているのは、民間企業に委託した場合、例えば、生命保険会社が受託したなら、年金型商品の販売に利用できるデータに接することになる。年金記録には個人の収入も含まれている。近年、自動車など富裕層向け商品と低所得者向け商品を区分した販売戦略が採られていることなどを考えると、営業活動に年金記録が流用されない保障はない。
 国家公務員の場合、社会保険の年金制度の運営が本業であり、他の目的に流用する術を持たない。ここが、民間委託との決定的な違いと考える。

以上

 
 
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