政府、日本年金機構法案および関連法案を閣議決定・国会提出
政府は3月13日、日本年金機構法案および関連法案を閣議決定し、国会に提出しました。法案には、多くの問題点があり、実質的に社会保険庁の解体・民営化と言えるものです。
「日本年金機構法案」の国会提出にあたり、国公労連は、法案の問題点を指摘するとともに、公的年金の充実と分限免職を許さない立場から14日、「社会保険庁の解体・民営化に断固反対する(談話)」を発表しました。
談話の全文は以下のとおりです。
社会保険庁の解体・民営化に断固反対する(談話)
〜「日本年金機構法案」の国会提出にあたって〜
政府は13日、日本年金機構法案および関連法案を閣議決定し、国会に提出した。法案は、年金業務を非公務員型の公法人「日本年金機構」に移管し、実務の多くを民間委託するという社会保険庁の解体・民営化法案であり、そこには多くの問題点を有する。
第1に、不祥事根絶の立場が貫かれていない。法案は、社会保険庁で起こった不祥事を理由に、国民の信頼に応えることができる事業運営体制確立を目的に掲げ、そのため非公務員型の年金公法人を設置し、民間企業へのアウトソーシングを進めるとする。しかし、民間企業による不祥事は連日のように報道されており、民間委託が不祥事根絶の方策になり得ないことは明白である。真摯な原因究明と対策確立こそ急務である。
第2に、法案が公的年金制度を世代間扶養と所得再分配を行う仕組みとし、安定的な運営の必要性を指摘しているが、ならば公的年金制度の現状を率直に見るべきである。国民年金の加入対象者の4割、厚生年金の対象事業所の3割が未加入と、公的年金制度の空洞化は悪化の一途をたどる。その原因は、高い掛け金と低い支給額に対する国民の制度不信にあり、公的年金を論ずるなら、組織改編ではなく制度の改善こそ急ぐべきである。
第3に、法案は民間有識者で構成する第三者機関で、民間委託する業務の範囲を検討するとしているが、業務を細分化して営利企業に委託すれば、個人情報の流出・流用が懸念され、年金制度の一体的運営を阻害する。受託事業者が頻繁に交替することは、長期間にわたる年金記録の安定的な管理を困難にし、入札制度での価格競争は、人件費の抑制作用が働き、社会問題となっている働く貧困層の拡大につながりかねない。
第4に、職員の分限免職は断じて容認できない。年金運営の組織が変更されたとしても年金業務は引き続き存在し、過去に行われた組織改編に伴う分限免職とは質が異なる。法案は法人の職員採用基準についても第三者機関で検討するとしているが、社会保険庁職員は、不祥事について既に処分という制裁を受けており、公的年金制度の信頼回復に今も全力で努力している。使用者である政府には、職員の雇用を守る当然の責務がある。
第5に、悪質な保険料滞納者に対する強制徴収の権限を国税庁に委任するとしているが、国税庁は国税を専門に扱う機関であり、国の取り立て屋ではない。公的年金制度の専門家が制度の重要性を訴えることなく、保険料の徴収業務を行うべきではない。
このように重大な問題を持ち、提出理由も不明瞭な法案は、国民の支持を失いつつある安倍内閣が、社会保険庁職員に悪政の責任を転嫁し、政争の具として利用するものと言わざるを得ない。国公労連は、老後の命綱である公的年金の充実を願い、労働者の権利擁護を求める広範な国民と力を合わせ、廃案をめざし全力でたたかうものである。
2007年3月14日
日本国家公務員労働組合連合会 書記長 岡部 勘市
【各地のとりくみ】
全厚生大阪支部
街頭宣伝に市民から“がんばってな”
全厚生大阪支部は府内のすべての社会保険事務所近隣での宣伝行動に取り組んでいます。3月7日には、大阪国公と共同でJR天満駅前において宣伝行動を行い、9名が参加しました。
約1時間にわたる宣伝行動では、通行人からいろんな反応がありました。「あんたらの言うことはわかるけどこんなことして、変えることできるのか」「政党のお金の使い方がオカシイ」「政治家は自分のフトコロにお金を入れている」などなど。約30分にもわたって年金相談を受ける場面もありました。そして「がんばってな、風邪ひいたらアカン」などの声もかけられ、他の宣伝行動とはひと味違う「社保庁改革」問題を実感した参加者でした。
民間単組とも共同行動すすめるぞ
またこの日は、全国一般大阪府本部の「07春闘勝利、総決起集会」に全厚生大阪・勝井支部長が参加しました。
勝井支部長は「社保庁にさまざまな不祥事があるから、解体と言うが、民間でうまくいくのか。年金は40年50年と管理しなければならない。業務を分割するのではなく、国が一括してしっかり責任を果たすことが必要だ。国民のたから年金制度を守ろう」と団体署名への協力を訴えました。
以上
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