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国公労連速報 2007年5月14日《No.1840》
【社会保険庁改革対策委員会ニュースNo.14】
     
 

 

民間委託は「安かろう悪かろう」の無駄遣い
委員会での野党追及に政府はまともに回答せず


 11日の厚生労働委員会は、野党のみ質疑で、6人の委員による質疑が行われました。
 この日は、冒頭から、民主党の資料請求に対し、政府からの提出が審議直前となったことにより委員会は混乱しました。社民党からは市場化テスト「モデル事業」の結果が、民間の優位性を示すものとなっておらず、「安かろう悪かろう」が民間委託ではないかとの追及がありました。共産党からも民間委託の範囲を第三者機関に丸投げするのではなく、国の実施が譲れない部分は大臣として物を言うべきなどとする指摘がありましたが、いずれも政府の回答は不十分な内容でした。
 審議の概要は以下のとおりです(国公事務局の作業の都合上、大幅に簡略化しています)。

【長妻 昭(民主)】
 年金記録の消失に関する調査の資料請求を3月9日に行い、審議前の提出を求めていた。しかし、その資料が届いたのはつい先ほど、審議1分前だ。これでは読む時間もない。委員長、休憩としてもらいたい。

【櫻田厚生労働委員長】
 休憩の予定はない。長妻委員は質問を続けてください。

(ここで、「1分前で質問は無理だろう」など、野党側からヤジが相次ぎ、議場は騒然となりました。櫻田委員長は「質問を続けろ」を繰り返し、民主党議員が「時計を止めろ」と委員長席に詰め寄りました。いったん委員長が速記を止めるよう指示したものの、数分後には速記を起こしたため、再び混乱し、与野党の筆頭理事が協議する3分間のみ時計を止めたうえで、審議が再開されました)

【長妻 昭】
 請求した資料は、社会保険庁によると1ヵ月前に出来ていた。なぜその時に出さないのか。嫌がらせとしか思えない。また、7分が、委員長の問題ある進行で過ぎてしまった。
 誰のものかわからない宙に浮いた年金記録が5千万件ある。政府はこれらについて心配ないとの答弁を繰り返している。政府は、既に亡くなった方の記録、受給資格の無い方の記録、これ以外は順次基礎年金番号に統合していくと言うが、5千万件の中には、不完全で、統合できないデータもあることを認めるべきだ。

【柳澤厚生労働大臣】
 本人の申し出により、出来るだけ裏付けとなる資料をもとに統合すべく努力しているが、手がかりの無いものも皆無と言い切ることは難しい。その場合であっても、納付記録を仔細に見て、申し立てから確実であるものは統合している。

【長妻 昭】
 申し出と言うが、相談を受けた中には、認知症になった父親が社会保険事務所に相談に行ったところ、転職した先を覚えていないと支給できないと言われているといった、深刻な内容もある。

【柳澤厚生労働大臣】
 息子さんからの相談であっても、申し出ていただければチェックする。ていねいにサービスしなければならないと考えている。

【長妻 昭】
 昭和59年前後に手書き台帳をパソコンに入力したが、入力漏れがある。しかし60年9月、入力が終わったら、一部の特殊台帳のみマイクロフィルム化し、残りの台帳は捨てるよう指示している。この通知は間違いではないか。

【柳澤厚生労働大臣】
 入力完了後、元台帳と突合し、必要な補正を行うよう指示しており、あえて磁気データと二重保管する必要はなく、事務処理として合理的と考える。

【長妻 昭】
 当時、アルバイトや外注でチェックしており、ダブルチェックされていない。一部には入力しないまま捨てたという話もある。社会保険庁のいい加減な体質から、「捨てろ」という指示を守っていないケースがたくさんあり、倉庫に残っている台帳がある。そうした全国の台帳を集めて、コンピュータの記録と突合すべきだ。

【柳澤厚生労働大臣】
 どのくらい紙台帳が残っているか、全貌は把握していないが、活用したい。保管状況の調査を予定している。保管状況がわかれば報告したい。

【長妻 昭】
 特殊台帳はマイクロフィルム化されているが、これもずさんな処理により、特殊台帳でないのにマイクロフィルム化されたものがある。こうした残っている台帳を、全件、コンピュータの記録とあっているかチェックしていただきたい。

【柳澤厚生労働大臣】
 被保険者からの申し出を受け、それに答えるためチェックする資料として活用したい。

(以後、全数チェックをする、しないの議論)

【長妻 昭】
 民主党政権ならただちにチェックする。あきらめず追及する。市町村が年金業務を行っていた時期があり、市町村には記録があるが、社会保険庁になかったものは何件なのか。

【柳澤厚生労働大臣】
 従来、国民年金の主たる窓口は市町村であり、そこに被保険者名簿があった。社会保険庁に進達し、庁で台帳を作成した。市町村に記録があって庁に欠けていたものは18件である。

【長妻 昭】
 少ない分母で18件だ。平成14年から社会保険庁が所掌するようになったが、市町村が持っている記録を保存しているかどうかはまちまちだ。遅すぎるが、社会保険庁は昨年8月、市町村に対し記録を保存するよう要請している。保存している市町村と捨てている市町村はどのくらいか。

【柳澤厚生労働大臣】
 調査中の段階であるが、保管している市町村が1,551、捨てていたのが284市町村である。

【長妻 昭】
 保管しているという回答には、一部しか保管していないものの含まれる。それでも1,551市町村に生の資料があるので、これも全件チェックすべきだ。

〜休憩〜

【長妻 昭】
 厚生年金記録は、手書き台帳がマイクロフィルム化されている。これも全件チェックすべきだ。

【柳澤厚生労働大臣】
 基本的に照合済みであるが、社会保険庁のデータを被保険者に開示し、疑問があれば申し出ていただく中で確認してまいりたい。

【長妻 昭】
 言ってこなければ調べない姿勢は引き続き追及する。
 民主党案の歳入庁における不祥事防止策は。

【園田 康博(民主)】
 国税庁職員の意識、モラルの高さ、税に対する信頼の高さは、他の省庁に比べてかなり秀でている。社会保険庁職員と国税庁職員がまじわる中で、文化、モラルが大幅に向上する。法案ではさらに歳入庁監察官を置いている。この監察官は犯罪捜査権を有する。強力な権限で内部監査、内部コントロールが可能となる。捜査対象は、職員が勤務時間外に起こした交通事故など、広範なものとしている。最大200人配備する。

【長妻 昭】
 国税庁の監察官の権限とはどういうものか。

【政府参考人 加藤国税庁次長】
(略)

【長妻 昭】
 日本年金機構に捜査権を持つ監察官を置くのか。社会保険庁監察官に捜査権はあるのか。

【柳澤厚生労働大臣】
 公法人に「官」は置かない。社会保険庁監察官は捜査権はない。

(不祥事防止策が不十分との議論)

【長妻 昭】
 総務省は厚生年金の適用漏れをどのように把握しているのか。

【政府参考人熊谷行政評価局長】
 適用漏れのおそれのある事業所数は、63万ないし70万事業所程度と推計している。

【長妻 昭】
 社会保険庁の把握する適用漏れ事業所は何件か。

【柳澤厚生労働大臣】
 推定ではなく、個別具体的な数字として、平成18年度末で63,539である。

(未適用事業所対策の民主党案優位の議論)

【長妻 昭】
 日本年金機構の職員は民間人か。

【柳澤厚生労働大臣】
 概念として民間人。

(給与は税金で賄われるので看板架け替えとする議論、なお柳澤大臣は、内部事務を担う者は国庫負担で、他は保険料と答弁)
(保険料を充当する範囲や天下り規制に関する議論)
(業務委託先のチェック機能に関する議論、民主党の「野党が求めれば日本年金機構の理事長を参考人招致するか」の問いに、櫻田委員長と与党筆頭理事は「ケースバイケース」)
(コスト削減効果に関する議論)

【長妻 昭】
 民間並みの能力・実績主義を導入すると言うが、公務員制度改革が実現すれば非公務員型の法人にする必要はない。

【柳澤厚生労働大臣】
 意識の問題としても、公務員の身分を捨て、はるかに違った行動が期待できる。

【長妻 昭】
 公務員の賃金を上回ることはないと明言せよ。

【柳澤厚生労働大臣】
 そういう方向性でないとならないと考えるが、同時にメリットシステムをはからないとならない。平均給与で言うならご指摘の方向だが、職員の処遇をいろいろ述べると民営化の意味合いを減殺しかねない。

【長妻 昭】
 このままでは平均給与が上がってしまう。
 最後に、年金保険料は年金給付にあてる、事務費に充てないと答弁した大野功統議員と小泉元総理の参考人招致を求める。

【櫻田委員長】
 理事会で検討する。

〜休憩〜

【阿部 知子(社民)】
 保険料を年金給付以外に使わないことは、小泉前総理も国会答弁され、確認された原則だ。しかし、暫定措置として保険料が事務費に充当されており、平成10年度から18年度の推移を見ると、国庫負担が減って保険料負担が増えている。10年度は国庫負担が2,329億円、保険料が608億円と4対1だが、19年には1,796億円と957億円、2対1になっている。このからくりは何か。

(厚生労働大臣の答弁が明確でないため、次回に回答を求める。)

【阿部 知子】
 社会保険庁の国民年金保険料収納業務で市場化テスト(モデル事業)を行い、社会保険庁の評価結果が出ている。それによるとコストは安かったが収納率の改善はない。遠隔地や山間部への納付督励に手が付いていない。結局は安かろう悪かろうではないか。しかしながら総括を待たずに今年度は同じ手法で30ヵ所に拡大され、来年度は90ヵ所に拡大される。これは税金の無駄遣いだ。

【柳澤厚生労働大臣】
 総括的に評価しつつも、なるほど、民間はそうやるのかと感じるところがある。たとえば、納付を働きかけるとき、早朝や夜間、休日に接触している。弾力的に対応できるのは民間であり、不便なところにも行けるような評価基準を作って、スキームを改善して委託したい。

【阿部 知子】
 いま大臣が答弁された内容は報告に述べられていない。納付率が悪いのに、同じスキームで拡大しようとしている。この点も次回追及する。

【糸川 正晃(国民)】
(機構の業務の範囲、人員の想定に関する議論、略)

【細川 律夫(民主)】
 (年金福祉事業団、年金福祉研究会に関する議論、他、略)

【内山 晃(民主)】
(特定されない年金記録に関する議論、他、略)

【高橋 千鶴子(共産)】
 昨年12月の朝日新聞社説は、与党のまとめた案について、頭と心臓は国、胴体は非公務員型の新法人、手足は民間、まっすぐ歩くとは思えないと指摘している。与党の要職にあった人々にも様々な意見があった。つなぎ合わせれば足がもつれる。なぜ法案が信頼回復につながるのかを質問したが、直接の回答はなかった。あらためて説明を。

【柳澤厚生労働大臣】
 民間の経営原理で、より効率的、不正を許さない組織を作る。能力・実績主義の人事管理など、職員の親方日の丸的、ぬるま湯的、閉塞的な組織体質を一掃したい。

【高橋 千鶴子】
 公務員でなければ信頼は回復されるのか。

【柳澤厚生労働大臣】
 信頼を得る道として、公務員を続けていては適わないと考え、意識改革や民間の人事管理システムを導入し、解決したい。

【高橋 千鶴子】
 社会保険庁の不祥事は組織的に行われたものであり、幹部がそのまま新組織にスライドしてはならない。

【柳澤厚生労働大臣】
 中立公正な第三者機関の意見を聞いて適切に対処したい。

【高橋 千鶴子】
 理事長は大臣が指名する。トップがそのままスライドしてはならず、「そのようなことは考えていない」と答えるべき。

【柳澤厚生労働大臣】
 考え方として人事も刷新するが、特定の方々の人事に言及するのは適切ではない。

【高橋 千鶴子】
 トップのスライドは行わない指摘はふまえるべきだ。
 大臣は36万人の居所不明者の作業が完了していない、5千万件の年金記録統合も誠実に対応すると言うが、そうなら、社会保険庁の作業が宙に浮き、途中で終わることがあってはならない。

【政府参考人 清水社会保険庁総務部長】
 不在の問題や、作業中のもの、時間がかかるものもあるが、機構発足までに速やかに作業を行いたい。

【高橋 千鶴子】
 長い年月正確な記録管理が求められ、安定的運営のための収納対策、事業所の適用対策など、つきつめれば国が直接行うべきではないか。

【政府参考人 清水社会保険庁総務部長】
 22年の新組織を見渡すと、ふさわしくない職員が漫然と移ることはあってはならない。

【高橋 千鶴子】
 分限はやるべきでないが、それを聞いているのではない。非公務員型はふさわしくなく、国がやるべきと言っている。

【政府参考人 清水社会保険庁総務部長】
 大臣が監督するなど、国の責任が果たされるしくみである。

【高橋 千鶴子】
 監督するからとの答弁だが、機能するかを検証したい。全国健康保険協会のケースが参考となる。設立委員会が第三者機関の意見を聞きながら行う同様のしくみだが、設立委員会の大事な議論がなぜ非公開とされているのか。

【政府参考人 水田保険局長】
 他の法人の設立委員会でも非公開とされている。それもふまえ、委率な議論を促すため委員の総意として非公開としているが、透明性を確保するため概要を公表している。

【高橋 千鶴子】
 第2回までしか公表されず追いつかない。率直な議論を保障すると言えば何でも非公開にされる。情報公開に逆行するもので、どうしても公開できなければ、議事録だけでも公開すべきだ。

【政府参考人 水田保険局長】
 第1回会議で公開するかどうかの議論はあったが、率直な議論を促すため、委員の総意にもとづき氏名を伏せた概要を公開することとした。

【高橋 千鶴子】
 日本年金機構設立で設置される第三者機関も非公開となるのか。

【政府参考人 清水社会保険庁総務部長】
 第三者機関は内閣官房で検討される。設立委員の会合は設立委員で適切に判断される。

【高橋 千鶴子】
 国が責任を持つと言いながら、公開か非公開かさえ発言権が無く、どうやって国民の信頼を得るのか。第三者機関の決定に従って、大臣は運営責任を持たされる。どうやって責任を果たすのか。第三者機関に出て行って、国が直接行う業務として、これは譲れないと発言するとか、第三者機関の決定に拒否権を持つべきではないか。

【柳澤厚生労働大臣】
 第三者機関の意見を聞いて基本計画が定められる。そのもとで私が基準を定め業務運営の枠組みを作る。したがって、基本計画の内容を覆すことにならない。

【高橋 千鶴子】
 担当大臣として、積極的にかかわる姿勢を持つべきだ。
 業務をばらばらに委託して制度の安定的運営が出来ると思わない。どう考えているのか。

【柳澤厚生労働大臣】
 今回の改革は行政改革の一環で、行政改革を受ける側が仕切って良いのかとの考え方がある。制度運営については、効率性、公平性をチェックする必要があり、継続性・安定性とのかね合いで、適切に運営されると考えている。

以上

 
 
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