国公労連は6月8日の午前、規制改革会議への要請行動を実施しました。
規制改革会議は、「再チャレンジワーキンググループ・労働タスクフォース」名で5月21日、「脱格差と活力をもたらす労働市場へ」と題した労働者保護を全面否定する内容の見解を公表しました。5月30日には、航空分野の規制緩和をはじめ、国民の安全・安心をいっそう脅かす第1次答申を行いました。同会議は今後、6月中には「規制改革推進3ヵ年計画」を策定しようとしています。
こうしたもと国公労連は、「規制緩和」「民間開放」ありきの立場を改め、国民生活の安心・安全を確保する視点に立った対応を求めました。
規制改革推進3ヵ年計画策定前に規制強化の必要性認める
規制改革会議への申し入れには、国公労連の河村書記次長を責任者に単組代表など10名が参加、規制改革会議は、内閣府規制改革推進室の小川参事官補佐が対応しました。
冒頭、「申し入れ書」(別添)の趣旨をのべ、続いて各単組から職場実態を踏まえ、行き過ぎた規制緩和の問題点を訴えました。
申し入れの概要は以下のとおりです(○:国公労連、●:小川参事官補佐)。
○ 会議として、今後どのようなスケジュールを想定しているのか明らかにされたい。
● 5月30日に第1次答申を行ったところであるが、それと前身の規制改革・民間開放推進会議が昨年12月に取りまとめた3次答申にもとづいて、今月下旬に3ヵ年計画を取りまとめたいと考えている。
○ 5月21日に労働タスクフォースが公表した内容は、労働法を根本から崩すものであり、強い問題意識をもっている。この内容は、第1次答申には盛り込まれていないが、今後どのように取り扱おうとしているのか。財界の要望そのものであるこれらの内容は、3ヵ年計画には盛り込むべきでない。
● 労働タスクフォースの見解は、議論のたたき台として問題意識を示したものであり、オープンな議論をいただきたいと考えている。
○ 委員会には労働者代表委員が含まれず、その中で労働法などの検討が進められるのは認められない。交通運輸の分野では、相次ぐ規制緩和が競争を激化させ、労働強化が進む中で、それが大事故につながっている。第1次答申にアジアゲートウェイ構想が示されているが、欧米に無理に合わせようとしても我が国は状況が異る。省内で検討しようにも、規制改革会議や経済財政諮問会議で枠組みを決められては、自由な議論にならない。
● 国民の安全・安心については、軽視する考えはない。十分意識しながら検討されているものだ。
○ コムスンによる介護医療事業での脱法行為は、規制改革や民間開放の弊害だ。公共性の高いものは、国・自治体・社団法人など非営利団体が運営すべきで、民間開放に無理があったのではないか。
○ 重大事故が相次ぐなど規制緩和のマイナス面が出ており、特に、公共性の高い分野に関しては、規制の強化を含めた検討が必要だ。
● コムスンの案件は大きな問題と考えているが、単に規制改革に問題があるものではない。会議では、一方的に規制緩和のみを議論しているわけではない。強化すべきものはその立場で検討している。
○ 規制改革会議はコスト削減が第一の使命であろうが、市場化テストの労働関係モデル3事業は、価格と質両面で官が有利という評価結果が出ている。前身の規制改革民間開放推進会議で総括主査を務め、現在経済財政諮問会議の民間議員である八代尚宏氏も市場化テスト評価委員会の委員であり、率直に受け止め対応すべきだ。
● 官民競争入札等監理委員会において取り扱うものであろうが、こうした結果となった原因がどこにあるかについて、議論されていると承知している。
最後に、河村書記次長から、(1)会議の議論はあくまで机上のものであり、現実に何が起きているか、我々の職場の実態もしっかり見て、それを踏まえて議論すべき、(2)タスクフォースの見解が、オープンな議論という説明であったが、我々はどうやって議論に参加できるのか。非現実的な説明に過ぎない、(3)規制改革会議、経済財政諮問会議、官民競争入札等監理委員会など業務が輻輳し、各省当局は対応に追われ非効率であることから整理すべきと主張し、委員に伝えるとともに意見の反映を求めました。
小川参事官補佐は、寄せられた意見委員に伝えることを約束し、申し入れ行動を終えました。
以上
〈別添〉
2007年6月8日
内閣総理大臣 安倍晋三 殿
内閣府特命担当大臣(規制改革) 渡辺喜美 殿
規制改革会議議長 草刈隆郎 殿
日本国家公務員労働組合連合会
中央執行委員長 福田昭生
規制改革推進3ヵ年計画策定にあたっての申し入れ書
規制改革会議は、1月以来5回の会議を行い、重点項目を掲げ、5月30日には第1次答申を発表しました。
それに先立つ5月21日には、「脱格差と活力をもたらす労働市場へ〜労働法制の抜本的見直しを〜」を唐突に公表した。その内容は、労働者保護法制の全面否定であり、雇用の流動化と低賃金をいっそう加速し、より使い勝手の良い労働力を得ようとする財界のあからさまな要望に過ぎません。また、ILOでも確立された、労使の代表参加による労働政策立案の決定システムまでも否定することは、国際的にも異常な内容と言わざるを得ません。こんにち、ワーキング・プアの急増と固定化が深刻な問題となっており、その解決が求められる中、こうした問題を一顧だにしない姿勢は、内閣府に置かれる公的会議の発言にあるまじきものです。
この間「構造改革路線」のもとに進められたさまざまな「規制改革」は、国民生活のさまざまな分野で深刻な影響をもたらし、交通運輸分野では重大な事故を引き起こしています。しかしながら5月30日にとりまとめられた「第1次答申」では、航空分野の規制緩和に言及しており、国民の安全・安心をいっそう脅かすものとなっています。また、分野横断的に規制の見直しを行うとしていることも、セーフティネットの充実を求める国民の願いに背くものです。
今後会議は、今月にも「規制改革推進3ヵ年計画」を策定するとしています。私たちは、「規制緩和」「民間開放」ありきの立場を改め、すでに明らかとなった構造改革の負の部分を直視し、国民生活の目線に立った対応を進めるよう下記事項を要請します。
記
1.規制緩和や官製市場の民間開放による弊害を直視し、ビジネスチャンス目的の一方的な規制改革は止めること。
2.行政の事務・事業は、国民の安全・安心に直結するものであることから、市場化テスト対象業務の拡大は行わないこと。また、対象業務選定にあたっては、利用者や、当該業務に従事する職員で構成する労働組合の意見を十分尊重すること。
以上
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