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国公労連速報 2007年8月1日《No.1893》
科学技術予算編成で内閣府・総合科学技術会議に申し入れ
重点化で基礎・基盤的研究が困難になっている〈国公労連・学研労協〉
     
 

 

 国公労連と学研労協(筑波研究学園都市研究機関労働組合協議会)は、7月27日、総合科学技術会議事務局(内閣府政策統括官付資源配分担当)に、来年度の科学技術関連予算編成等に関する要求書(※別添)を提出し申し入れを行いました。これには、学研労協・池長議長、国公労連・上野独法対策部長をはじめ、各研究機関労組代表、学研労協役員ら8人が参加、内閣府側からは森山企画官、山下参事官補佐が対応しました。主なやりとりは、次のとおりです。(※○は組合側、●は内閣府側)

 ○ 我々は独立行政法人(独法)の6年間を検証するとテーマで6月13日、国立試験研究機関全国交流集会を開催した。独法に移行にするにあたって事前に喧伝されていたものと違って「予算等が使いやすい状況にはなっていないのではないか」という意見も出された。その上に、いま独法のゼロベース見直しが言われており、政府は独法の「整理合理化計画」を年内に作るとされている。しかし、それぞれの独法は、中期計画を終了して組織改編なりの見直しをして、新たな中期目標・中期計画で研究業務に邁進しているさなかだ。そこに、ゼロベース見直しがくるとなると、現場は右往左往して研究も立ちゆかなくなる。研究機関独法のゼロベース見直しにかかわって、総合科学技術会議から、何らかの意見を主張することがあるのかどうかを、まずお聞きしたい。
 ● 「整理合理化計画」は、行革推進本部事務局が作業を進めており、まだ具体的な話は聞いていない。今の段階では研究機関独法の見直しがどういうものになるかは分からない。総合科学技術会議としては、研究開発をしている独法については、他の独法とは違うというスタンスでいる。我々としてもできるだけ現場の研究と法人経営を含めて各独法がやりやすい形で進められるように考えたい。目的積立金の運用のあり方等、工夫をしているところだ。ただ、ゼロベース見直しの視点がどういう形でくるのか、個別でくるのか、それとも独法制度全体で見直すのか、行革推進本部事務局の具体的な検討結果をみてからでないと、こちらもどうアプローチするかは定まらない状況だ。
 ○ いま「整理合理化計画」策定にあたっての基本方針が、「公共インフラ業務」とか「研究開発業務」など、それぞれの独法の業務類型に分けて見直しの基準を作るような動きになっているので、その際に、総合科学技術会議が意見を聞かれるべきだと思っているし、意見を言うべきだと思う。
 ● 当然、そうなるはずだ。その内容に問題があれば、こちらからも指摘していく。
 ○ 予算編成にあたっては、現場の声をきちんと反映してもらいたい。我々が取り組んだアンケート(回答861人)では、独法化の当初に期待していた自由度が増えるのではないか、という点はある程度は実現しているが、もう少し自由度をあげるべきだという声が出されている。研究テーマについて重点化していこうというトレンドがかかっていて、結果が出るまでに時間がかかるようなテーマは取り組みにくくなっている。短期的に集中して研究結果を出すということも大事だが、それだけでは、長期的な研究が切り捨てられてしまうので、長期的な研究も担保することが必要だ。
 ● 言われていることに同感だ。「イノベーション25」(6月1日閣議決定)にしても長期的な目標を掲げて取り組んでいるところだ。そのまとめ方がすべていいかどうかはあるが、少なくとも視点としては長期的なことを考えながらやっていくということは政府としても確立されている。みなさんのアンケート結果については、個別にどうくんでいくかという点があるが、参考にしたい。各独法、各省においても長期的な視点を持って進めていけるようにしたい。基礎的・基盤的な研究は当然に必要だと思っていて、そこをおろそかにするようなものを出していることはないと思う。我々事務局も民間議員もそこは大事だと何かにつけて主張しているところだ。もし不十分であれば、さらにみなさんの意見を反映していきたい。
 ○ いま重点化である程度、仕方がない面もあると思うが、短期間で結果を出すものに資金が集中している。我々は運営交付金がベースになって基盤的な研究を進めているが、全体的に運営費交付金は減らす方向になっている。法人で競争的資金も取りにいっているが、それは3〜5年先のもので、10年スパンの研究ができない状況になってきている。限られた資金の中だが基盤的研究を上手くできるような施策を考えていただきたい。結局、運営費交付金の一律削減をやられると基盤的な研究の現場にしわ寄せがくることになる。
 ● その問題については、行革推進本部事務局等とやりとりをしている。運営費交付金がベースになっていることは理解しているが、独法制度の考え方自体が、自由度と同時にできるだけ税金を入れているのを減らすという方向がどうしてもあるから難しい面がある。特許の利益等もきちんと考慮するなど工夫はそれなりにやっている。それでも無制限に付けられるわけではない。交付金の一律カットの年1%、5年で5%というのも、重要な課題をかかえる独法については、政策係数を付けるなどして柔軟な対応をやってきているところだ。しかし、それを全体に付けるのは難しい。
 ○ 総額人件費改革の中で、5年で5%の削減をかけられると、結局、人を減らさざるを得ないのが実態だ。研究は人の頭でやるものだから、人がいなくなるとその分野の科学研究は確実にできなくなる。交付金が減らされる中で、プロジェクトで3〜5年で人を取ってこれるが、将来が不安定なポジショニングでは、研究へのモチベーションは持てない。与えられたプロジェクトの課題はこなせるかもしれないが組織の将来はどうなっていくのか。実際の研究現場は、25年先のイノベーションをどう担っていくのかという考えはまったく持てずに、自分の目の前の課題にきゅうきゅうとしている。人が育てられない組織では科学研究はだめになって行く。重点化の予算の中でも人件費をみると言うが、将来につなげられるかというとそうなっていない。流動化で任期付きで異動をしなければならないけどもテニュア制度でつないでいくという状況が各独法に必ずしもない状況だ。人材育成につながる予算の確保を考えてもらいたい。
 ● その点も、できるだけやっていきたいと考えている。
 ○ 今回、プロジェクトで研究者を雇える政策を打ち出していくということだが、総合科学技術会議がそれをテニュアに変えては駄目という制限をするということはないか?
 ● そういったことを各省も人件費をつけて要求してくれということだ。
 ○ 重点化ということで、取り組まれない研究課題が増えていきはしないか。取り組まれない研究課題の中に、本当は長い期間をかけてやる大事な基盤的な研究があり、その人がいなくなってしまったからその研究がなくなってしまうようなことでは問題だ。総枠人件費の削減は、結局、研究者がいなくなって、研究もなくなっていくことにつながる。
 ● そこの重要性は当然認識している。行革推進本部事務局にも働きかけているところだ。
 ○ 独法になって旅費とか消耗品は使いやすくなっているが、繰り越しの問題が残っていて、中期計画の中で総枠として運用すればいいよということだが、実際は財務省が厳しく、年度計画の中できちんと償還できずに、中期計画が流れて延長して残せるということが厳しくなっている。それが研究する上で、障害になっている。非常にハードルが高いので、総合科学技術会議として改善していく施策をやってもらいたい。
 ● 総合科学技術会議は司令塔なので、どこまで細かい話ができるかという問題はあるが、今日いただいたアンケート資料等は、関係者にまわしたいと思う。言われたように繰り越しの問題は、制度的に駄目というわけではないので、我々としても各省や財務省に働きかけるが、各独法が実態を示していく方が効果が大きいだろう。
 ○ 実験系の研究者は、大型装置が陳腐化する。運営費交付金だけでは買えないので、3年計画で積み残して買いたいということがある。そうした点に繰り越しで対応できるようにしてもらいたい。
 ● 目的積み立て金の場合は、繰り越しできるようにした。できるだけできるようにと考えている。
 ○ 総合科学技術会議に司令塔の役割があるという話だが、当局は外圧という言い方をするが、ときとして総合科学技術会議の考え方が、現場の研究条件改善をはばむ制限のように立ちはだかることがある。例えば流動化せよだとか、任期制を増やさなければいけないだとか、パーマネント雇用よりも流動化を進めた方がいいだとか、そこは違うのではないか。本当の研究のしやすさや人材育成するというのは、流動化させると同時にテニュアという両論の場合もあるが、それぞれが効率化、予算の削減という中で動いていくと厳しいものがある。お金の使い安さにしても期を越えてというのも7月ぐらいにスタートして12月にはもう年度の終わりの報告書を出さなければいけない問題がある。
 ○ 科学技術基本計画の中に総合科学技術会議が司令塔の役割を担うとあるが声が聞こえてこない。もっと現場の研究者や国民にもつたわるようにアピールして欲しい。最近、聞こえてくるのは、行政減量・効率化有識者会議とか経済財政諮問会議など、科学技術の素人のような、科学技術立国の将来を考えているとも思えないような声しか聞こえてこない。総合科学技術会議は大きな声でアピールして欲しい。
 ● その点は、記者発表等も他の機関に負けない頻度で行っているのだが、マスコミがとりあげてくれない。今後は事務方のアプローチの仕方等、工夫していきたい。

 最後に、池長議長が、「せっかく政策をつくり、予算もあてて、研究を進めているのに、実際の研究現場がうまくいっていないと非常にもったいないので、研究現場の声を聞く機会を多く持って欲しい。総合科学技術会議の役割は、日本の研究をどうレベルアップしていくかであり、現場の研究者も思いは同じだ。省益ではなく国益で取り組んで欲しい。今回、網羅的な要求書を提出しているが、短時間ではなかなかお互いの意見交換も難しいので、今後は、もっと工夫して、やりやすいやり方をお願いしたい」と述べ、総合科学技術会議側もその点は改善できるよう検討したいと答え、申し入れを終了しました。

〈別添〉

2007年7月27日

総合科学技術会議議長 安倍晋三 殿
日本国家公務員労働組合連合会
                       中央執行委員長 福田昭生
                筑波研究学園都市研究機関労働組合協議会
                            議長 池長裕史


    平成20年度の科学技術関連予算編成等に関する要求書

 2001年に多くの国立研究機関が独立行政法人化された。当初、法人化により多くのメリットが生じると政府は喧伝した。「業務の自律性」「予算の柔軟な運用」「効率的業務の実施」等がそれである。「官に縛られない自由な発想での研究が可能となる」と謳われた独法化であった。
 しかし、6年を経た今、果たしてそれらは現実のものとなっただろうか。
 我々が旧国立研究機関等で実施したアンケート調査は、研究・教育現場が、当初の期待とは裏腹に独法化以後、大きな混乱に晒されていることを明らかにした。
 業務の肥大化、人材流動化政策による不安定雇用の増大、新規採用の抑制による恒常的な過重労働を強いられ、科学技術予算の極端な重点化は、本来、科学技術基本法が最重視した基礎基盤研究の脆弱化を招き、長期的視野に立った研究は、その立案さえ困難な状況にある。
 このような現状を顧み、我が国の将来を思うときに、我々は不安を覚えざるを得ない。科学技術政策を一刻も早く科学技術基本法の原点に立ち返らせ、真の科学技術立国を目指すことを我々は真摯に切望するものである。  こうしたことを踏まえ、我々は平成20年度予算編成にあたり、貴職に下記事項の実現を強く求める。
 なお、我々は、研究集会「独立行政法人の6年を検証する」を開催するにあたり、独法化前後変化に関するアンケートを実施した。その結果を本要求書に添付した。



1. 科学技術政策立案に関わる要求
(1) 科学技術政策立案は、短期的視野のみならず、長期的視野に立って行うこと。
(2) 重点分野だけでなく、基礎・基盤的研究にも充分配慮すること。
(3) 総合科学技術会議の意志決定過程を透明化し、政府として説明責任を果たすこと。
(4) 政策決定に当たっては、アンケートによる調査を実施する等して、研究機関・大学の労働組合を含む研究現場の意見を反映させること。
(5)「人材育成」に対し積極的な資源の投入を行い、かつ政策として明文化すること。

2. 予算編成の基本方針と執行に関わる要求
(1) 独立行政法人研究機関に必要な研究予算を充分確保し、運営費交付金の一律削減は行わないこと。
(2) 運営費交付金による研究費については、研究職員の自由な発想が活かされるものとして最大限保障すること。また、府省試験研究機関の経常研究費の確保・拡充を図ること。
(3) 予算の年度繰り越し制度を実効あるものとし、年度当初からの予算執行を可能とすること。
(4) 予算査定について下記のことを関係機関に働きかけること。
 1)研究遂行に必要な研究者の学会加盟年会費および学会参加費を公費で負担をすること。
 2)光熱水料および図書費は、別枠として必要な額を確保すること。
 3)老朽化した施設・設備の改善について、充分な予算を措置すること。
 4)安全・衛生管理に必要な予算を交付金とは別途に措置すること。
 5)耐震性の確保に必要な充分な予算を措置すること。
(5) 競争的資金について
 1)競争的研究資金の研究予算全体に占める割合を現状以上に増加させないこと。
 2)競争的研究資金による研究課題の採択審査においては、下記のことに配慮すること。
  (a)審査基準の透明化、審査結果の公開を推進し、審査の公平を期すること。
  (b)各分野の専門家が審査にあたるように審査体制を充実させること。
  (c)提出資料の大幅な減量に努めること。
  (d)予算執行が年度初めから可能となるよう審査のスケジュールを組むこと。
 3)競争的研究資金の費目間流用制限を緩和すること。
 4)競争的資金により整備した大型装置・機器等について、当初計画終了後の有効活用のために別途予算措置を講ずること。開発・購入した経費とは異なる予算措置による改良・改造や運転経費等の充当を可能とすること。

3. 人員に関する要求
(1) 試験研究機関・大学の大幅増員を行い、欧米の同種の研究機関・大学に匹敵する規模とすること。
(2) 非正規職員の労働条件を抜本的に改善すること。恒常的な非常勤職員については、労働法規に則った常勤化を図ること。
(3) すべての研究機関に対し、男女共同参画推進委員会またはこれに相当する機関の設置を働きかけること。その機関において、女性が意欲を持って働く事のできる環境整備の取り組みを進めるように働きかけること。
(4) 「改正高年齢者雇用安定法」や「障害者雇用の促進等に関する法律」の精神に従い、高齢者やハンディキャップを持った研究者・研究支援者を積極活用すること。また、そのための適切な労働環境整備に努めること。
(5) 研究支援業務全般について安易な民間委託・下請け化(アウトソーシング)を推進しないこと。研究所における研究ポテンシャルを維持するためにも、支援業務に従事する職員については長期的な視野にたった適切な補充と育成を行なうこと。また研究支援職員の処遇を改善すること。

4. 独立行政法人の運営に関わる要求
(1) 独立行政法人の運営について
 1)法人運営・中期目標の策定にあっては、法人の自主性、自律性を確保すること。
 2)法人の長、および理事職には、研究について高い見識を有している者を任命すること。
 3)中期計画、年度計画、人員配置等を労使協議事項とすること。労使協議の結果を尊重し、法人運営に反映させること。
 4)独立行政法人の見直しにあたっては、職員への十分な説明と協議を行い、納得を得て行うことを徹底させること。
(2) 法人の業績評価について
 1)評価基準は、長期的な研究や基礎研究を保障するものとすること。
 2)評価基準を公開すること。
 3)評価に際し、組織・研究者の抗弁権を保障すること。

5. ボスドク・任期制採用に関わる要求
(1) 若手研究者が長期間にわたって不安定な雇用条件(ポスドク・任期付き研究員)におかれている現状を改善すること。
(2) 任期付き職員の一律的採用拡大を見直すこと。やむを得ず任期付き職員を採用する際には、各試験研究機関の特性や研究者のライフサイクルに十分に配慮し、労働組合と協議しながら慎重に行うこと。
(3) 総合科学技術会議のイニシアティブにより、大学教員、独立行政法人・国立研究機関研究職員、民間企業研究員への、若手研究者の採用拡大をはかるとともに、国としての新たな若手研究者育成策を講ずること。
(4) 採用に際しては研究の継続性に充分に留意すること。
(5) 任期付研究者が自由に使える経常研究費を確保すること。
(6) 競争的資金の応募の促進など、任期付研究員の自立的研究を促進・保障すること。
(7) 特に女性任期付職員が出産・育児等により、不利益を被らないよう、制度的な保障を行うこと。出産に係る休暇と任用期間の柔軟な運用を推進すること。具体的には研究機関等に0歳からの保育施設の設置を勧告するなど、安心して研究に従事できる環境を整備すること。

6. 個人業績・能力評価に関わる要求
(1) 個人評価の目的を、個々の研究者のポテンシャルを引き上げることにおくこと。
(2) 評価の基礎となる組織・個人の目標、評価基準、評価方法については、労働組合との協議、職員本人との話し合いにより、公平性・客観性・透明性・納得性を確保すること。また、苦情処理制度を確立すること。
(3) 短期評価の賃金反映は行わないこと。すでに賃金反映を行っている試験研究機関においては、当面、公平性・客観性・透明性・納得性確保の観点から、労働組合との交渉等を通じて抜本的見直しを行うこと。
(4) 長期評価に基づく研究者の昇格については、論文数に偏重することなく、技術的な貢献や学会活動での貢献など、総合的な要素を勘案して納得性を高めること。

7. 研究環境の改善に関する要求
(1) 研究環境の改善に関し、下記の項目について関係機関に働きかけること。
 1)研究者の自主性を尊重し、研究発表の自由を保障すること。
 2)国内外留学、研修制度を充実し、研究者の資質向上に役立てること。
 3)サバティカル制度(一定期間勤続した研究職員に対する有給の留学等のリフレッシュ制度)の導入をはかること。
 4)パワーハラスメント、アカデミックハラスメントについて、苦情処理制度を徹底させること。加害者側の自覚を促す予防的な教育・制度の充実を図ること。
 5)メンタルヘルスケア制度を充実させること。

8. 国立大学法人に関わる要求
(1) 高等教育・研究に対する国の責任を明確にすること。私立大学も含め、高等教育・研究の充実を進めること。
(2) 任期制の拡大など、一律的な統制を行わず、それぞれの国立大学の進める改革を尊重すること。

9. 労働条件の改善に関する要求
 独立行政法人研究機関、府省試験研究機関、国立大学に働く職員の労働組合と協議のうえ、労働条件の改善を図ること。

以上

 
 
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