8月2日、国公労連は全大教と共同で、独立行政法人と国立大学法人の運営費交付金の増額を求めて財務省前行動と財務省交渉を行いました。交渉では、運営費交付金の増額を求める団体署名1426筆を提出しました。
昼休みの財務省前行動は、各単組、独法労組、全大教の仲間をはじめ、東京国公、都大教の仲間もかけつけ、120人の参加で実施。冒頭、国公労連・盛永副委員長が、「財務省は年末の予算策定に向け、各省からの概算要求のとりまとめを8月末までに行う。政府・財務省が行ってきた大企業本位の予算編成を、国民本位に切り替えさせる上で重要な時期だ。とりわけ独法と国立大学に対する運営費交付金の一方的削減はやめるべきだ」と主催者あいさつしました。
情勢報告では、国立大学に関わって全大教・森田書記長が「今年2月に国立大学の運営費交付金をすべて競争的経費化するという動きが急浮上した。これに反対するたたかいを進め、全国知事会が反対決議を上げたり、マスコミも反対するなど、共同は広がりつつある。運営費交付金は大学にとって基礎的・基盤的な経費であり、これを競争的経費化することは断固反対だ。大学は地域社会に貢献していることを訴えながら、国公労連をはじめ共闘を大きく広げ、大学の社会的応援団を増やしながら奮闘したい」と述べました。独法については国公労連・上野独法対策部長が「そもそも独法は渡しきりの運営費交付金で自由度を高めて業務を進めるという制度なのに、一般管理費3%、業務管理費1%が毎年カットされ、業務に支障が出ている状況だ。この後の交渉では、現場の実態をつきつけ、財務省に対して運営費交付金の増額を迫りたい。また、現在、行革推進本部、行政減量・効率化有識者会議を中心にして、すべての独法を廃止・民営化・市場化テストの検討対象とする整理合理化計画が年内策定に向け進められている。整理合理化計画に反対し、国民のための行政サービスを担う独法の拡充を求めて取り組みを進めよう」と報告しました。さらに「中国の唐の時代の玄宗皇帝と楊貴妃をうたった漢詩があり、天にありては願わくは比翼の鳥とならん、地にありては願わくは連理の枝とならん、と翼や枝がつながって2人が連帯していることをうたっている」と指摘し、労働運動では国公労連と全大教が比翼の鳥、連理の枝のようにずっと共同していきたい旨をのべました。
続いて決意表明では、「東京学芸大学は、運営費交付金が競争的経費化されるとワーストランクになるとされた。いまでも付属学校の教員の人件費まで削減対象になったり、事務系職員の削減も極限まで達している。教育3法改悪による教員免許講習等で業務も増大する一方だ。このままでは学部教育、研究は立ち行かなくなる」(東京学芸大学職組・藤本委員長)、「自動車検査はこの4月から新たな中期計画がスタート。これからがんばろうというときに突然すべての独法をゼロベースで見直す整理合理化計画が持ち上がった。職場は怒りに満ちている。それでなくても毎年の運営費交付金削減で検査機器も買えず、検査できる場所を減らさざるを得ない状況になっている。財務省は現場で起こっていることをきちんと把握し、運営費交付金を増額すべきだ。全運輸は300超える団体署名を集約した。タクシー労働者の仲間からは団体署名とともに次の世代に必要な車検の仕組みを作ってくれとのメッセージが寄せられている」(全運輸・小池副委員長<自動車検査労組委員長>)、「産業技術総合研究所の運営費交付金は、01年度693億円から07年度656億円と37億円もマイナスだ。そのため国の将来に関わる基礎的研究の継続が困難になっている。製品評価技術基盤機構では、パロマなどの製品事故が増大しているのに、必要な実験ができない状況だ」(全経済・村上書記長)、「全国146の国立病院の総事業費は7670億円。そのうち運営費交付金は509億円、全体の6.6%にすぎない。国は、がんや循環器病などを政策医療と位置づけているが、そこには交付金は一銭も出していないのと同じ状態だ。国民が安心して受診できるよう交付金の大幅増額を要求する」(全医労・渡辺副委員長)と、それぞれの職場実態から運営費交付金の増額が国民サービス向上のために必要であることが語られました。
要求行動には各組織の実態を訴える11本のプラカードがあり、張りぼて御輿も登場して、にぎやかな雰囲気になりました。最後に、財務省に向け、「独法の運営費交付金を増やせ」「国立大学の交付金を増額せよ」とシュプレヒコールを唱和しました。
〈財務省交渉〉団体署名1426筆を提出し
独法と大学の基盤支える財政措置求める
行動終了後、財務省に対して、運営費交付金の増額等を求める要求書(別添)を提出し交渉を行いました。交渉は、国公労連・河村書記次長と全大教・森田書記長を責任者に、全大教、国公労連・各単組独法担当など10名が参加し、財務省側は、主計局の総務課予算総括・大久保主査、調整課・米山主査、文科省担当・小山主査ら6名が対応しました。(以下、主なやりとり。○は組合側、●は財務省側の発言要旨)
○<国公労連・河村書記次長> そもそも独法は、予算も単年度で縛られるのではなく中長期に弾力的な運用ができるようにと設置されたはずだが、効率化係数がかけられるなど運営費交付金が毎年削減され、国立大学法人も含めて運営が非常に厳しくなっている。そのことにより、研究機関では機材も買えない、基礎的な研究が困難になるなど様々な深刻な問題が現場で起こっている。そのため我々は約1カ月と短期間だったが交付金の増額を求める団体署名に取り組んだ。内外から賛同いただき本日1426団体分を提出する。以下、それぞれから職場実態を訴える。
○<全大教・森田書記長> 国立大学の交付金は04年の法人化以降、毎年一つの大学分に匹敵する額が削減されている。そのため、「授業で使うプリント代が払えない」「旅費がなくて学会に出られない」「図書館を改修できず蔵書が通路に平積み」「分析機器が買えないためにパソコン上でのシミュレーションしかできない」など、大学の現場は困窮している。その上に経済財政諮問会議が、運営費交付金の競争的経費化を提起した。財務省の試算では競争的経費化により、85%にあたる74大学で交付金が削減され、そのうち50大学では交付金が50%以上減少し、まさにつぶれてしまうような状況に陥る。交付金は大学の基盤になる経費であり増額を求める。
○<全通信・研究機構支部> 総人件費を5年間で5%削減する目標が掲げられ、現在は研究職・総合職を問わずパーマネント職員の新規採用ができない事態だ。これでは組織を維持することもできない。その上、交付金削減により、外部の競争的資金を獲得するための業務量が増大している。このような交付金削減は科学技術立国を標榜する政府自らの方針にも反するものだ。
○<全医労> 国立病院の運営費交付金は毎年削減され、04年度521億円から07年度498億円まで減少している。交付金のうち8割が国時代に勤務していた職員の退職金等で、国がやるべき政策医療に対する交付金はたったの40億円、経常利益のわずか0.6%に過ぎない。いま医師不足が社会問題化する中で、女性医師や看護師の確保に大きな役割を果たす院内保育所に対する交付金も認められていない。改善を求める。
○<全運輸・航空大学校労組> パイロット育成のための訓練をする必要があるのに、燃料費の高騰のために、経費が確保できない事態だ。年度途中での交付金の増額ができないというもとで、庁舎の維持管理費用を削減したり、トイレットペーパーの購入まで見送るなどして訓練の費用を確保している。訓練機も老朽化するなど訓練飛行も困難になっている。パイロット不足が深刻化するなか、国の責任で良質なパイロットを育成するためにも、機械的な交付金削減をやめるべきだ。
○<全経済> 産総研は6年間で37億円の運営費交付金が削減された。その結果、職場では外部資金を取ってこないと研究ができないため、外部資金獲得のための書類作成におわれて本来の研究ができない事態になっている。将来の日本社会の発展につながる基礎的な研究は、外部資金が取れないため、交付金削減により継続困難になっている。製品評価技術基盤機構では、「必要な実験をしたくてもできない」「中古の装置でいいから譲って欲しい」といった切実な声があがっている。パロマの製品事故などで法改正があり、業務が増大しているのに、人員は削減され、土日出勤、手当の出ない超勤という形で現場にしわ寄せがきている。きちんと職場実態をふまえ交付金増額をすべきだ。
● 独法現場の厳しい実態は承知しているが、ご存知のように国の財政は非常に厳しいため、すべての法人にわたって交付金を増額することはできない。交付金を一律的・一方的に削減していると言われるが、財務省は独法の運営費交付金算定ルールに従って、各省とも十分相談してやっている。
● 「国立大学の運営費交付金の競争的経費化を行わないこと」と言われるが、国の財政が危機的な状況で、限られた財政なのだから、わが国の高等教育をどうしていくかという選択と集中の考えに基づき重点配分せざるを得ない。交付金はばらまき行政ではないので満遍なくということはありえない。財務省は、文科省の考えが前進しないので、試算等を出したまでだ。骨太方針2007にもあるように、今年度中に文科省が自ら交付金をどうするのかを検討することになっている。みなさんは、平成16年度から400億円も減ったと強調するが、財務省からすると効率化係数をかけてきたからこそ逆に(事業費総額では)増収しているわけで、国費ベースで補正予算を含め増収し、そして昨年度は大学施設の老朽化、耐震に対して1000億円を大学に投入している。我々も国立大学を切って捨てるわけではなく、十分に配慮している。
● 独法の整理合理化計画については、行革推進本部事務局、行政減量・効率化有識者会議が中心になり、個々の法人のあらためるべきところはあらためるゼロベース見直しを、年末までのスケジュールで行う。閣議決定されていることで財務省としても従わざるをえない。
○ 研究機関で外部資金を獲得するために、かえって非効率になっている問題は、どう考えるか。
● アメリカでは日本の競争的資金の審査は甘いと言われている。アメリカでは外部の資金を取るために1年ぐらい研究をやめてでも資料を作るのが当たり前だ。何を持って非効率というのか理解できない。
○ それはアメリカの研究環境における一面を誇張し過ぎたものだ。確かにアメリカの研究環境は競争が激しいが、基盤的研究もきちんとおさえた上での競争で、そこが日本と決定的に違うところだ。
○ 航空大学校の問題に見られるように、年度途中であっても何らかの予算措置ができないのか。
● 特殊要因という算定ルールがある。各法人で違うが算定ルールをきちんとみていただきたい。
最後に、全大教・森田書記長が「今度の選挙結果に示されているように、あまりに過激な競争や、それに基づく格差拡大の問題などに、国民がノーをつきつけたのではないか。財務省でもそれをふまえて、独法と国立大学のあり方についても、選択と集中と言われるが、基盤的なところをきちんとみる方向で検討いただきたい」と述べ、交渉を終えました。
(※団体署名はすぐ国公労連へ。第2次提出をします。)
〈別添〉
2007年8月2日
財務大臣 尾身幸次 殿
日本国家公務員労働組合連合会
委員長 福田昭生
全国大学高専教職員組合
委員長 高木正見
運営費交付金の増額等を求める要求書
独立行政法人と国立大学法人は運営費交付金の削減に苦しんでいます。
独立行政法人は、橋本行革の一環として中央省庁再編と同時に創設されました。その後、6年を経過した現在、「自律的運営で自由度が増し、仕事がしやすくなる」という創立当時の政府・当局の喧伝とはまったく逆に、予算や組織、人員、人件費などについて主務省等の圧力の下で、各独立行政法人の自主性はほとんど認められていません。加えて、中期目標に照らして主務省(評価委員会)が行った各法人に対する評価内容に対しても総務省行政管理局(評価委員会)が注文をつけ、変更を求める状況があります。
特に問題なのは、独立行政法人の財政を支える運営費交付金が毎年一律的・一方的に削減されて、業務に支障が生じ、ひいては国民サービスの低下を来している点です。現在、運営費交付金は一般管理費と業務管理費に区分され、一般管理費については毎年3%、業務管理費については毎年1%の削減を行うとする効率化係数をかけて算出されています。
更に貴職もメンバーである経済財政諮問会議が全独立行政法人(101法人)について民営化、廃止を含む業務の全面的整理合理化計画を年内に作成することを無謀にも求め、政府はそのことを「骨太の方針2007」に盛込みました。各独立行政法人は中期計画(3年から5年)にそって業務を進めており、突然の整理合理化計画策定の動きに職場は怒りが満ちています。
国立大学法人では、法人化以降、毎年1%の効率化係数と2%の附属病院経営改善係数によって、運営費交付金が毎年削減され、累計400億円の削減となっています。
さらに重大なことは、経済財政諮問会議等で、運営費交付金の競争的経費化問題が浮上していることです。文部科学省の試算では、競争的経費化された場合、87大学中70大学で交付金が減少、47大学で交付金が半分以下となり、「経営が成り立たない」としています。
国立大学法人の毎年の削減規模は1大学分の予算に匹敵するものです。運営費交付金という基盤的経費の削減により年額10万円台の研究教育費しか確保できない地方国立大学の例など、急速に教育研究環境は劣悪化しています。一方ではCOE(研究拠点への重点投資)や科研費等の競争的資金が不均衡に増加し、その獲得が困難な人文科学系や教育系での学問研究の衰退、短期的な成果を求める風潮や基礎的研究の軽視が危惧されています。またこれらの施策により、大学間格差が一層拡大し、地方の国立大学が地域社会の知識・文化の拠点としての役割を発揮するのが困難となっています。
この原因は高等教育に対する政府支出の貧困さにあります。日本の高等教育予算がGDP(国内総生産)に占める割合はOECD(経済協力開発機構)30カ国中最低水準です。これをGDP比1%までに年次的に引き上げることが必要です。
以上の状況を踏まえ、貴職に対して下記のように要求します。
記
1.独立行政法人の運営費交付金については、効率化係数を撤廃して一律的・一方的な削減をやめ、法人の運営に支障が生じないよう必要な予算措置を図ること。
2.国立大学法人等運営費交付金の「競争的経費化」を行わないこと。運営費交付金の効率化係数、経営改善係数を撤廃し、国会附帯決議に基づき、その増額を図ること。
3.独立行政法人の整理合理化計画の策定は行わないこと。
以上
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