国の責任で、安心して暮らせる年金制度を実現しよう
「守れ!みんなの年金・社保庁改革を考える」シンポジウムを開催
公務労組連絡会と国公労連は、2月16日、東京・霞ヶ関の全日通会館において、シンポジウム「守れ!みんなの年金・社保庁改革を考える」を開き、社会保険庁で働く全厚生の仲間70人を含む240人が参加しました。
公務労組連絡会・大黒議長は、「本日の開催を年金制度の確立、社会保険庁職員の雇用を守るとりくみの皮切りとして、全国的運動に発展させよう」と呼びかけました。
シンポジストに、朝日新聞の松浦新記者、中央社会保障協議会の山田稔事務局長、日本大学の永山利和教授、菊池紘弁護士らを迎え、公務労組連絡会の黒田事務局長がコーディネータとなって進行しました。
松浦さんは、95年から年金の取材をしてきたとし、「3割の企業が厚生年金の適用になっていないのに、98%の収納率だと平気で言っていた。制度と現場に矛盾があるから、現場は嘘をつかなければならない。現場の声を聞かないでやっている。本当の意味で皆年金・皆保険にしていくために、現場の人が嘘をつかなくていい制度にしていかなければいけない。社保庁の人が現場から声をあげて欲しい」と述べました。
山田さんは、「2004年の年金大改悪で年金保険料は引き上げて給付水準は引き下げられた。100年安心どころか崩壊の危機。政府・財界は、消費税によって年金財源を確保しようとしているが、消費税ではなく一般税できちんと支える全額国庫負担の最低保障年金制度が必要」と語りました。
永山さんは、「年金を守るために雇用の安定と賃金の引き上げ、インフレの抑制が必要なのに、それが行われていない」と強調し、「政府やマスコミは、職員を『悪代官』にして責任転嫁しようとしているが、本質的な構造に問題が生じている。いま重大な転機に来ており、国民的レベルで怒りを巻き起こすときだ」と指摘しました。
菊池さんは、JRによる不当労働行為や全動労採用差別事件など数々の労働事件を担当してきた経験から、「日本年金機構に引き継ぐ際に、職員を選別するというやり方は、国鉄民営化と同じだ。専門性・蓄積を抜きにして人数だけを決めることなどありえない。このような無法を許さないためには、年金をよく知っているみなさんが、国民の年金を確立する運動をいかに広げるかにかかっている」と発言しました。
フロアーからは、「年金記録は国民の大切な財産だ。職員総動員で記録整備をしている。社保庁の方針がコロコロ変わり現場も混乱している。相談も2〜3時間待ち。記録調査に半年かかっている。制度にも問題がある。安心できる年金制度にするため、全厚生として、全国津々浦々奮闘する決意だ」全厚生(大阪)、「『ねんきん特別便』が届いても高齢者には内容把握が容易でない。特別便については対応の面でも、まだまだ問題がある。相談体制をしっかりつくるべき」(社労士)、「窓口は大変混雑している。2時間、3時間待ちで午後相談に来た人は夕方帰る。国民のみなさんのことを考えると、残業手当が4割でもしかたないと思っている。マンパワーが必要。国家公務員を組織する労働組合として、役割を果たして欲しい」(社保職員)の他、自治労連神奈川県職労、新婦人、首都圏青年ユニオン、日本年金者組合の代表など、積極的な発言が出されました。
これらの発言も受けて、シンポジストからは、「JRの分割・民営化と同様、年金問題もはねかえしていこう」(菊池氏)、「年金記録がどこにいてもつながっていて個人の権利が守られているポータビリティ制度の導入を」(永山氏)、「社会保障制度は悪だという考え方が、政府の根底にある。政府・財界が、ごっそり消費税を取ろうと狙っている。いまがふんばりどきだ」(山田氏)、「みなさんの発言は大変興味深く、取材してみたいところがいくつかあった。真実を伝えて、正々堂々とものを言っていくのは、マスメディアの責任だ」(松浦氏)など、感想もまじえた発言がありました。
シンポジウムの最後には、全厚生の鎌田さんが「『国の責任で、安心して暮らせる年金を実現する』ために、思想や信条の違いを超えて、年齢の違いを超えて、多くの国民が手をつなぎましょう」とのアピール文(別添)を読み上げ、参加者全員の拍手で確認しました。
閉会にあたって国公労連の福田委員長は、「はっきりしたことは、社会保険庁の解体・民営化などではなく、国の責任で年金制度を確立することだ。国鉄の民営化によって赤字はさらに拡大した。すでに民営化路線は破綻しており、同じことを社保庁にさせてはならない」と、たたかう決意もこめて閉会あいさつし、シンポジウムを締めくくりました。
▽シンポジウム参加者の感想から(抜粋)
○私たち一人ひとりがとりまく状況を知り、変えるために行動しないといけないことを改めて、実感しました。(30歳・公務員)
○会場、特に社保庁の職員にもっと発言の場を与えて欲しかった。当事者の思いが聞きたかった(54歳・公務員)
○社保の職員としてもっともっと外に出てまわりの組織から声をあげてもらう努力を強める必要があると強く思いました。フロアーの最後の男性の発言が一番良かった。今、目の前の問題についての切り込みがなかったのが残念。社保庁解体を阻止しマンパワーを入れさせようとのアピールが欲しかった。(56歳・社保職員)
○今日のシンポは今後各地のシンポ開催の皮切りとは思うが、それであっても市民参加の重視も願いたい。内容はすばらしいので。(年齢・職業不明)
○「社会保険解体=年金制度が安心」でないことがわかりました。(47歳・無職)
○今、年金についての関心が集まっている。組織を変えるのではなく制度改革が必要であることは明確であり、その認識を広げていくことが大切だと思った。実体を公表し、国民の同意を得た運動が必要だと思った。(36歳・社保職員)
○どれをとっても1つの組織や1つの制度を変えるためには政治を変えないと駄目なんだと実感しました。(54歳・看護師)
○職場では、現行の職員数で通常業務に加えて、記録問題による過去の記録を整理することを求められています。今回のシンポで記録問題解消に向けた意見が出されましたが、最終的には現場職員の努力が大きな力だと思います。来所された方が、記録が見つかり喜んで帰られる姿に励まされもっと頑張らなければと思う。メンタルで休んでいる職員から「しんどいけど、やっぱり出勤したい。雇用が不安だから」と聞くと、こうした職場の現状が症状を悪化させていると思う。国民の大切な記録問題を解消するために現場の現状を訴えて、今後も国の責任で年金の運営をさせるべき。増員と安心して働ける職場を!!(45歳・社保職員)
(別添)アピール
国の責任で、安心して暮らせる年金制度を実現しよう
日本の年金制度は1942年にスタートしましたが、国民が納めた保険料は当初は戦費調達として、高度経済成長期には大型公共事業を支える財政投融資の財源とされてきました。そして、グリーンピアをはじめとする年金関係施設や厚生官僚の天下りなどにも多額の年金保険料が浪費されてきました。いま、5000万件にも及ぶ年金記録問題に示されているように、公的年金は、政権政党や歴代政府、そして厚生労働省や社会保険庁官僚によって翻弄され、老後の生活を支える制度とはなっていません。さらに、社会保険庁の推計でも無年金者が最大で155万人にも上り、国民年金の納付率は66.3%にとどまっています。厚生年金も未加入事業所が多数あり、将来多数の国民が無年金・低年金者となるとの問題が指摘されています。
こうした中、記録問題をはじめとする制度運営と管理についての責任や、記録整備もあいまいなまま、社会保険庁の解体・民営化が進められています。しかし、社会保険庁を解体しても、年金制度が良くなるわけではありません。
同時に、いま、消費税を年金や社会保障の財源とする議論が活発になっています。しかし、消費税は所得の低い者ほど負担が重くなる税制度であり、所得の再配分を大前提とする社会保障制度とは相容れないものです。
誰もが安心して老後を迎え、健やかに暮らすためには、憲法25条を基礎とする公的年金制度の拡充が不可欠で、そのためにも全額国庫負担による「最低保障年金制度」の確立は喫緊の課題です。昨年の参議院選挙では、貧困と格差の拡大や庶民増税に反対し、より良い暮らしと雇用を求める国民の意思が示されました。
いま、私たち国民が声を上げるときです。
私たちは、年金記録問題については、国の責任で最後の1人まで年金記録を整備し、国民の年金権を保障することを求めます。
また、年金財源に消費税を充てるのではなく、大企業や大資産家の優遇税制を是正して応分の負担を求めるとともに、軍事費を削減し年金や社会保障制度を充実することを求めます。
そして、誰もが安心して老後を迎えられる最低保障年金制度を国の責任で実現することを求めます。
「国の責任で、安心して暮らせる年金を実現する」ために、思想や信条の違いを超えて、
年齢の違いを超えて、多くの国民が手をつなぎましょう。そのために、「国の責任で、安心して暮らせる年金を実現する会」(仮称)を中央と地方に立ち上げ、宣伝行動など大きな世論をつくる運動を進めましょう。
2008年2月16日
「守れ!みんなの年金・社保庁改革を考える」シンポジウム
以上
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