年金業務・組織再生会議に意見を送付
〜雇用不安を招かないよう雇用の継承を求める〜
知識や経験を有する社会保険庁職員の活用と、業務に専念できる体制の確立を!
2月27日、国公労連は年金業務・組織再生会議が公表した「職員の採用についての基本的な考え方」「外部委託の推進についての基本的な考え方」(中間整理)に対する意見を送付しました。3月5日の中央行動では、再生会議事務局へ意見の申し入れを直接行い、職場の厳しい実態を訴えます。
なお、「年金業務・組織再生会議の中間整理についてのご意見・情報の募集」の受付は、29日(金)までとなっています。みなさんも再生会議に意見を届けましょう。
年金業務・組織再生会議のホームページはこちら↓
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/nenkin/index.html
以下、意見書全文です。
「職員採用及び外部委託推進」(中間整理)に対する意見
2008年2月27日
日本国家公務員労働組合連合会
はじめに
いま社会保険庁の職場は、自主退職者が急増し、精神的不調により休職する職員も大幅に増加するなど慢性的な欠員状態にある。そのもとで職員は、年金記録の統合や年金相談の業務で忙殺され、休日出勤も含めた長時間労働を余儀なくされている。この職場状況に追い打ちをかけている最大の問題点が、全国健康保険協会や日本年金機構への移行にあたって、分限免職や選別採用などの雇用不安が職場を支配していることである。
いま求められているのは、国民の信頼を回復するためにも、年金記録問題の早期解決を図るための業務執行体制を確立するとともに、すべての職員がその能力を最大限に、しかも献身的に発揮することができる条件を作ることである。同時に、「改革」しなければならないのは年金制度そのものであり、年金業務・組織再生会議(以下、再生会議という)には、誰もが安心して老後を迎えられる年金制度確立に向けた検討こそが求められている。
したがって、再生会議に対しては、国民の信頼を回復するためにも、真に必要な施策を検討することを求める。そのことを前提に、以下、「職員の採用」と「外部委託の推進」についての「中間整理」に対する見解を述べる。
1.「職員の採用」に関わって
再生会議は、「職員の採用についての基本的な考え方」(中間整理)において、「公的年金業務に対する国民の信頼を著しく損ねたような者が、漫然と機構の職員に採用されることがあってはならない」との一文に端的に示されているように、「公的年金業務への信頼」を損ねた原因をもっぱら社保庁職員に求めている。そして、「過去に懲戒処分や矯正措置などの処分を受けた者」についての選別・排除を当然のこととする採用基準を示している。
しかし、年金記録問題検証委員会(以下、検証委員会という)は、年金記録問題発生の根本問題として、年金業務に対する使命感や責任感が「厚生労働省や社会保険庁に決定的に欠如していた」、「社会保険庁の業務について総括責任を有する歴代の社会保険庁長官をはじめとする幹部職員の責任は最も重い」と指摘している。また、暦年にわたって、大量業務を確実に実施する体制確立が行われてこなかったことも事実であり、現に在職している個々の職員の責任をことさら問題とすることは、問題の解決方向を誤らせるものと言わざるを得ない。
社保庁職員として、年金記録問題や年金業務で国民の不信を招いたことへの反省と再発防止にむけた努力は当然のこととしても、日本年金機構の発足にあたっては、「業務の円滑な移行のため、機構の業務に必要な知識や経験を有する社会保険庁職員の活用」こそが求められる。業務の継続性、安定性、専門性を確保するためにも、また、国民の信頼を早期に回復するためにも、職員が安んじて業務に専念できる体制を確立することが不可欠であり、雇用不安を招かないよう雇用の継承を求める。
「経営管理の強化」や「監査機能の強化」など、「社会保険庁職員からの採用だけでは得難い能力・経験を有する者」についての外部からの積極採用も打ち出しているが、社保庁職員の採用を最優先する立場から、必要最小限にとどめるよう求める。
2.「外部委託の推進のあり方」に関わって
再生会議は、「外部委託の推進についての基本的な考え方」(中間整理)において、「業務が正確に遂行されることが、国民にとって最大の関心事であり、何にもまして重要なことである」と述べているが当然のことである。
しかし、「組織構造や組織体質と関わる問題を一掃するため必要な組織改革を断行しなければならない」として、「行政処分」をともなう業務も含めた積極的な外部委託の検討を打ち出している。社会保険庁においても十分な管理ができなかった長期間に及ぶ年金記録などの管理を、民間業者に委ねることは以下の点から問題である。
第一に、競争入札による民間委託は、「入札や契約の状況について厳格なチェック」、「業務品質の維持・向上が図られるような措置」を講じるとしても、価格競争のもとでのコストダウンは避けられず、その結果、人件費の抑制とも相まって業務品質の低下・劣化をもたらさざるを得ないものである。
第二に、民間委託は受託業者の交替が前提となるが、年金業務の知識や経験のない業者の参入が繰り返されると、「業務品質の維持・向上」と国民の信頼確保の前提である業務ノウハウの蓄積が困難となる。同時に、参入時の「業務引継」や「委託業者の業務内容を適正に管理、監視し、委託者としての管理責任を果たす」ための経費や労力を多大なものとし、非効率なものにならざるを得ない。
第三に、年金業務は、適用・徴収・給付・相談等の一体的運営こそが求められるが、これらを分割・民間委託することは、チームワークや安定的、効率的な運営を阻害し、サービス提供に支障を来すものである。また、検証委員会が提起している「職員の一体感を醸成すること」や「事務処理の統一性を確保する」ことにも反するものである。
第四に、「外部委託推進にあたって留意すべき事項」として、「実体上も委託業者などに於いて個人情報が適切に管理されるよう、徹底した指導やルール化が求められる」と強調しているが、営利企業である民間保険会社などの参入による個人情報管理の不安は解消できるものではない。
したがって、民間委託については、臨時的・派生的な業務に限るなど、根幹業務の安定性、継続性、専門性に支障のないものに限定するよう求める。
おわりに
検証委員会は、「今後に向けた教訓」として、組織及び業務の管理・運営に関して、ガバナンスを確立することとあわせて、(1)年金記録管理に関する基本的姿勢、年金記録管理の正確性確保に対する認識、裁定時主義等に基本的問題があったことを反省し、意識改革・業務改革を推進すること、(2)適切な人材を養成・確保するとともに、職員の一体感を醸成すること、(3)事務処理の統一性を確保するとともに、人が行う事務処理に伴う誤りをゼロにすることは困難であることから、誤りを発見し、これを是正していく仕組みを構築すること、(4)年金記録の正確性を確保するためには、被保険者等の協力が不可欠であることを認識し、その仕組みを構築すること、(5)職員団体と適切な関係を保つこと、などの改革を提起している。
年金機構法の目的や基本理念を達成するためにも、この検証委員会の提言を厚生労働省と社会保険庁の幹部職員、そしてすべての職員のものとし、その実現をめざすことが求められる。そのことが、すべての職員が責任と働きがいを持って、国民の年金権保障に向けた業務に専念できる条件を整備することにつながると考える。
以上
|