国公労連速報 2008年4月21日《No.1973》
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【社会保険庁改革対策委員会ニュースNo.35】
年金制度は民間に任せず、国が責任をもって行うべき
〜愛知「年金を良くする会」(準備会)が「どうする年金・
社会保険、社会保険庁解体を考えるシンポジウム」を開催〜
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【愛知国公発】今年10月に政府管掌健康保険業務を引き継ぐ全国健康保険協会が発足し、そして2010年1月には年金業務を引き継ぐ日本年金機構の発足により、社会保険庁は廃止されます。
いま、「宙に浮いた年金」など5000万件の年金記録問題が社会問題になっていますが、すべての責任が末端の社会保険庁職員にあるかのような世論が作られています。
しかし、すべてを職員の責任にできるのでしょうか? 社会保険庁を解体し、年金業務の多くを民間委託することで、安心・安全の年金制度が実現できるのでしょうか? 国民の権利としての年金・社会保険をどうしていくべきなのでしょうか?
こうした問題点を解明するため、愛知では、愛労連、愛知社保協、年金者組合、全厚生愛知県支部、愛知国公の5者が、ゆるやかな共闘組織である「年金を良くする会」(準備会)を立ち上げました。
「年金を良くする会」(準備会)は4月17日、名古屋市内の労働会館においてシンポジウム「どうする年金・社会保険、社会保険庁解体を考える」を開き、全厚生の仲間をはじめ年金者組合などから87人が参加しました。
開会あいさつに立った愛知社保協事務局長の加藤瑠美子さんは、「年金を支える社保庁が解体されようとしている。年金そのものの問題もあるが、年金業務を民間に任せるのではなく、国が責任をもってやるべきでは。各界からの方の発言と、現場からの発言をふまえ、皆さんと一緒に考えていこう」と問題提起しました。
シンポジストには、社会保険労務士の後藤征男さん、全日本年金者組合愛知県本部委員長の茶谷寛信さん、全厚生愛知県支部委員長の深沢英二さん、そして朝日新聞大阪本社・社会グループ記者の石前浩之さんを迎え、国公一般愛知副委員長の杉崎伊津子さんがコーディネーターとなって進行しました。
後藤社労士は、顧客からの年金相談にも精力的に携わっており、「社保庁のずさんさの責任が職員へ転嫁されている。紙台帳がある時に統合すべきだった。消えた年金・宙に浮いた年金については、長い年月の間に記憶も定かでなく、手続きも面倒だからと放置してきた国民にも責任がある。年金業務が民間に委託されれば、年金は商品として扱われ、もっとひどくなる。もっと、国民が怒るべきだ」と述べました。
茶谷年金者組合委員長は、年金受給者の困窮を訴え、40年前から指摘されてきたこの問題は、歴代の政府に責任があると指摘し、「国民全体の奉仕者である今の職員が、専門性を生かし行うべき。労働組合の声は最初は少数派だが、運動することにより多数派となる。国民と力をあわせて多数派としていこう。民営化には断固反対」と述べるとともに、「消えた年金は時間がかかっても全部の解消が必要。そのためには管理や運営に国民・労働者の参加が必要。年金加入期間も25年から10年に短縮し、最低保障年金制度の確立と、保険料は全額税方式とすべきだ」と提言しました。
深沢全厚生愛知県支部委員長は、「今、社会保険庁職員と呼ばれるのが非常にイヤです。毎日、多くのお客様があり、座る暇もなく、体はボロボロ。今日は多くの組合員が参加しているが、送り出してくれた職場の仲間に感謝したい」と前置きし、「コンピューター化された当初から対策が後手に回っていた。年金機構が委託する業務は、パーツごとに分断され、その経費は年金から支出される。委託に際しても一般競争入札のため、低価格での落札や短期間での委託業者の変更が予測され、長期的・安定的な運営は望めない。正確な記録管理も要求され、情報漏えいの危険性は払拭できない。マニュアル的対応ではなく、経験の蓄積に裏打ちされた国民に対するサポート、アドバイスできる対応が必要だ」と述べられました。
石前記者は、マスコミが年金問題をいかに報じてきたかを説明。04年の「未納三兄弟」の騒動や、06年の「格差が広がって何が悪い」という小泉元首相の発言を紹介しながら、「スキャンダル的な取り上げ方だけでなく、どんな制度にすべきかという議論も深まりつつある」と話しました。さらに、「個人的な考えだが、社会保険庁の今の動きは、国鉄分割民営化と同じで組合つぶし的な側面もあるのではないか」と述べつつ、「大阪の社会保険事務所では、非常勤職員を社会保険の適用からはずしていた。予算が縮小されたからでは済まされない。社会保障制度を守るんだという自負がないと、国民の信頼は得られない」と指摘しました。
全厚生の仲間とともに信頼できる国づくりを!
会場からも多数の発言がありました。
社会保険事務所の仲間は、職場実態アンケートの結果をもとに過酷な労働実態と職員の不満が増大していることを報告。「今の事務所は自転車操業的な状況。舛添大臣の一声で4月の土日は全部開庁。我々は奴隷か!国民に対し、年金制度を訴える場を作っていきたい。職員に温かい言葉をかけてください」と発言しました。
自治体の仲間は、「年金関係業務がほとんど国に移管されてから、国の交付金が大幅に削減され、多くの職員がリストラされた。自治体においても年金業務は経験が必要であり、たよりになるのは社会保険事務所だけ。住民が年金受給権をしっかりと確保し、安心して暮らせられるようにしたい。今のままでは、無責任体制が広がるだけだ」と発言。
社会保険病院の仲間は、「全国に53施設があるが、社保庁解体にからみ存続の危機に瀕している。4月2日の自民・公明の会議でRFO(独立行政法人 年金・健康保険福祉施設整理機構)に入ることが合意された。地域医療と職員の雇用を守るため、健康保険病院の仲間とともにたたかい、運動を広げていきたい」と述べました。
年金受給者の仲間は、「職員の方々は、なぜここまでたたかれないといけないのか。国がどんな制度を作っていくのかが問題だが、民主では全部なくなる危険がある。全厚生の仲間とともに、年金者の生活を守り、信頼できる国づくりができるようにしたい」と発言しました。
国民は怒れ!
全厚生の仲間は勇気をもって国民に発言を!
会場発言を受け、パネリストが以下のとおり2回目の発言を行いました。
「公務員だからサービス残業はあたり前ではない。国民はもっと怒るべき。宙に浮いた年金の解消に向け、与党・野党・国民が一斉に動くことが大事だ」(後藤氏)。
「1億人への特別便発送は快挙であり、大きなチャンス。政治的大失敗だが、皆が団結して解消し、政府に考え直させる。パート労働者からも徴収と報道されている。社保庁解体と後期高齢者医療制度の二つの悪法廃止に向け、頑張っていきたい」(茶谷氏)。
「負担のあり方を含め制度の根本を考える時期に来ている。そのためにも体制確保が急務だ。年金機構は頭が国で手足は民間とバラバラにされ、指揮できなくなる。年金機構設置法の凍結が必要だ」(深沢氏)。
「信頼できる職場に向けどうするか。掛金率は大企業から零細企業まで同じ率で、零細では加入しない会社もあり、雇用の劣化につながっている。現場の職員が一番知っている問題であり、勇気をもって国民に発言を。ひいては国民の利益に結び付けてほしい」(石前氏)。
社会保険事務所前宣伝行動を提起
最後に、愛知国公事務局次長の宇野進二さんが、会としての当面の行動提起を行いました。
一つは、現在とりくんでいる「社会保険庁で働くすべての職員の雇用確保を求める国会請願署名」(公務労組連絡会等)の4月末集約に向け奮闘すること。また、全日本年金者組合が作ったばかりの「最低保障年金制度の実現を求める請願署名」を広く普及しとりくむこと。
二つは、愛知県下の16社会保険事務所前での宣伝行動を、毎週月曜日の10:00から11:00に行う。当面、一宮所(5/12)、半田所(5/19)、大曽根所(5/26)で実施する。
この二つの行動提起は、参加者全員の拍手で確認されました。
多くの仲間の参加により成功したこのシンポ。全厚生の仲間も開始当初は疲れきった表情をしていましたが、パネラーや会場からの暖かい発言を受け、閉会頃には元気を回復。反省会では、石前記者とひざを交え、大いに語りあいました。
こうした地方での元気が出るとりくみを、「全厚生組織がないからやらない」ではなく、年金者組合等と協力しあって、ぜひ全国でも展開していただきたいと思います。
そして、中央からの、最低保障年金の実現や国の責任による「消えた年金」解決などを求める統一的な請願署名の提起を早急に行う必要があると感じました。
以上
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