安心年金つくろう会が再生会議、厚労省・社保庁に申入れ
年金記録問題の解決と、安心・信頼できる年金運営を強く要求
消費税増税による年金財源化に反対し、安心して暮らせる年金制度の確立をめざすため5月28日に産声を上げた「安心年金つくろう会」は20日、年金業務・組織再生会議と厚生労働省及び社保庁に対し緊急の申し入れを行いました。申入れには、中央社保協、年金者組合、婦団連、全教、自治労連、公務労組連、国公労連から9名が参加しました。(申入書・別添)
この申し入れは、官から民へと安易な業務委託は行わず、業務に精通した職員の雇用確保など、国の責任で年金業務を安定的に担う体制を確保するよう関係機関に申し入れる、との6月5日の「安心年金つくろう会」世話人会の確認にもとづいて行いました。
「記録問題は、年金機構の業務として検討していない」(再生会議事務局)
再生会議からは、事務局担当の加瀬参事官と越尾参事官補佐が対応。冒頭、川村国公労連副委員長が「年金制度は老後の生活を支えるもので単に社会保険庁を解体すればいいという話ではない。国民は年金業務の安定的・継続的な運営を望んでいる。消費税財源問題が様々議論されているが、社会保障としては全く相応しくない。19日の再生会議では、新組織の定数や社保庁職員からの採用などが議論されているが、外部から大量に採用した場合の安定的な運営や、民間委託では個人情報の保護などが危惧される。国民的な立場での議論が求められるのではないか」と基本的な問題点を指摘しました。また、参加者からは、「受給者の立場から特別便はスケジュール優先で送られているが、記録の整備は遅々として進んでいない。統合されても支給までには半年以上かかっているのが現状。こうした状況の中で組織を解体して一体誰が責任を持ってやるのか」(年金者組合)、「職員の雇用もそうだが国民の年金権を守るためにこうした組織を立ち上げた。専門的な知識・経験を持った職員を外に出してしまって一体どうするのか。こうした意見を会議に反映してほしい」(公務労組連)、「人員の問題が強調され業務をどうするのかという本来の議論が欠けているのではないか」(自治労連)、「今後現役の加入者に送付されるが、国民の願いは記録の早期全面解決だ(全教)」「記録の相談に行ったら何時間もまたされたが5分で終了。しかし、半年後でないと貰えないのが実態。2010年1月の社保庁解体では十分な合意が得られていないのではないか」(婦団連)、「年金機構のあり方は当然記録問題ともかかわっている。そのことが基本にあるべきだ」(社保協)などと制度の拡充とともに、政府による記録問題の早期整備とそのための体制確立を求めました。
これに対し加瀬参事官は、「再生会議は国会の議論を踏まえ、有識者の意見を反映するために設置された会議であり、事務局として答えられる立場にはない。記録問題は再生会議の所掌ではないが、実態や進捗状況等については、そのつど厚労省や社保庁から説明を受けている。その上で議論の俎上にはなっている」「最終報告の時期は確定していないが、渡辺担当大臣はとりまとめの時期にきていると発言している」など、申し入れ等については会議に反映する立場にはない旨の回答を行いました。
これに対し参加者は、「国民の声を無視するような姿勢ではなく、申し入れの趣旨を何らかの形で会議に反映させるべきだ」ときびしく追及し、「対応について座長と相談し、回答する」こととなりました。
※その後、再生会議事務局より全委員に申入れ書を送付する、との回答がありました。
年金業務の原点ふまえ、国民の立場に立った行政運営を要求
厚生労働省への申入れには社保庁も同席。まず、国公労連から、「業務の安定的な運営など、国民が安心できる中身を示してほしい。また、今進められている制度議論の状況についても明らかにしてほしい。日本年金機構では業務は引き継ぐが職員は引き継がれない。こうした中で、記録問題ひとつ見ても大変な状況にある。年金機構がこうした問題にきちっと答えることができるのか。国民の信頼に応えられると考えるのか」と厚労省・社保庁の基本的な考え方を質しました。
これに対し年金局年金課の小沢事務官は、「制度問題では皆年金を原則とし、社会保険方式のもと、免除制度など納めやすい環境整備を行っている。年金だけではなく社会保障全体の財源、公平性の確保など十分な議論が必要と考える」と回答。また、社保庁の運営部企画課の我田室長補佐と総務部総務課の西尾事務官が、「記録問題は送付したら終わりではなく、本人の確認・納得が得られるまで対応していかなければならない。残った業務は機構が引き継ぐことになるが、職員の適正配置や派遣社員など必要な要員で対応していくことになると思われる。皆さんの指摘はもっともだと思うので、懸念が生じないよう努力していきたい」など、基本的な考え方を述べました。
引き続き参加者から「記録問題の重要性からみれば大変な状況。こうした中での新組織の発足は、受給者の立場からはきわめて心配だ。再生会議等にも十分説明しているのか」「職員の適正配置というが分限免職まで言われている中で、雇用は職員の一番の不安であり、業務遂行にも影響する。説明責任を果たしているのか」「年金は国民に責任を持つ重要な業務。公契約のあり方が問題になっているが安易な外部委託は避けるべきだ」「皆年金というが実態は違う。基本的には税方式でないと解決できないのではないか」などと更なる問題点等を指摘。
最後に、「記録問題を見ても現状での新組織移行は全く無責任といわざるを得ない」、「安心・信頼のためにも厚労省・社保庁として国民の立場に立った行政運営に努力する」ことを求め、申し入れを終わりました。
2008年6月20日
年金業務・組織再生会議
座長 本田勝彦 殿
国の責任で、安心して暮らせる年金制度をつくる連絡会
(賛同団体)公務労組連絡会、厚生省労働組合共闘会議、
国鉄労働組合、全国商工団体連合会、自由法曹団、
全国生活と健康を守る会連合会、全日本年金者組合、
中央社会保障推進協議会、日本婦人団体連合会、
日本国家公務員労働組合連合会
国民が安心・信頼できる公的年金制度の確立を求める緊急申し入れ
公的年金制度は、憲法第25条にもとづいて勤労者の老後の生存権を保障することを軸としつつ、障害者や遺族の生活保障をも含んだ重要な制度であり、国の責任で管理・運営されるべきものです。社会的に大問題となった年金記録問題は、長期間にわたる記録管理の困難性を浮き彫りにしました。その点からも国の責任の重要性が問われています。
今、日本の年金制度は、無年金者が100万人を超えると推計され、国民年金のみの受給者の平均受給月額は4万8千円にも満たないものです。毎年引き上げられ、高すぎる国民年金保険料を払えない国民が5割を超え、厚生年金の未加入事業所も多数にのぼっています。現在の公的年金制度は、国民の老後の生活を保障するという制度に課せられた役割を果たせなくなっていると言わざるを得ません。
政府は、「日本年金機構法」のもとで社会保険庁を解体し、2010年1月に設立される「日本年金機構」に年金業務を移管するとともに、当該業務の民間委託を拡大するとしています。また、社会保険庁職員の雇用継続については、不祥事等を口実に選別採用と分限免職の導入を企図しています。
年金記録問題の解決もままならないもとで、社会保険庁を解体・民営化し、年金業務に精通した職員を解雇することは、公的年金制度を国民が求める安心・信頼の制度からますます遠ざけるものと言わざるを得ません。
私たちは、公的年金制度を国民の老後の生活を保障できる制度とするために、消費税を財源としない、全額国庫負担による最低保障年金制度の確立を求めます。それによってはじめて、年金に対する国民の不信と不満を解消し、信頼を回復することができると考えます。
同時に、年金記録問題が解決するまで、社会保険庁の解体・民営化を推し進める「日本年金機構法」を凍結し、政府の責任において記録問題を早急に解決することが重要であると考えます。
国の責任で直接国が公的年金制度を管理・運営することは、世界の常識です。年金業務の安易な民間委託は行わず、専門的な経験と知識を持つ職員の雇用を確保し、安定的、継続的な年金業務運営を確保するよう求めます。
以上
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