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7月31日、国公労連は特殊法人労連と共同で、独立行政法人の運営費交付金増額を求めて、財務省に対し要求行動と交渉を実施しました。
昼休みの財務省前要求行動には、80人の仲間が参加しました。行動は特殊法人労連の小林幹事の司会で進められ、冒頭、主催者を代表して国公労連の福田委員長が「政府は29日に09年度予算のシーリングを閣議了解し、社会保障費2200億円の抑制などを決めた。支持率低迷を内閣改造で改善しようとしているが、国民本位の予算へと転換しない限り改善するものではない。そして、独法の運営費交付金の一律的削減についても国民生活を立ち枯れにしていくものだ。政府・財務省による一律・一方的な運営費交付金削減をやめさせ、必要な予算を獲得するため年末に向かって共にたたかいを強めよう」とあいさつしました。
情勢と取り組みの報告を行った国公労連・上野独法対策部長は、「国公労連と特殊法人労連の共同で取り組んだ運営費交付金増額を求める団体署名は1,405団体を集約した。対外的な共同の拡大を重視し様々な取り組みがされた。特殊法人労連の退共労は、港区労連の仲間たちに訴え署名を広げた。国公労連の各単組は民主団体を含めて署名を広げ、ブロック・県国公はヨコのつながりを生かして、600団体から署名を獲得するなど、大きく共同を広げることができた」とこの間の取り組みを報告。情勢については、「概算要求基準の中で独法については、整理合理化計画の確実な実施、引き続く運営費交付金削減と5年間5%の総人件費削減などがいわれている。また、国立大学の運営費交付金を3%も削減することなどの暴挙が行われた。情勢は厳しいが、一方で先の国会で成立した研究開発力強化法では、研究独法の5年間5%の総人件費削減について配慮するとされており、今後、行革推進本部から何らかの対応がなされることになっている。また、国立病院の院内保育所に運営費交付金が認められるなど少しずつだが、私たちの運動の成果が実を結びつつある。国民生活を支える独法の役割を大きくアピールしながら奮闘しよう」と報告しました。
つづいて決意表明では、「一律機械的な運営費交付金の削減で、自動車排気ガスの検査機器導入が大幅に遅れるなど検査の形骸化が深刻な問題になっている。国民の安全と環境を守るため、運営費交付金の増額を求め奮闘する」(全運輸自動車検査労組・折村書記次長)、「産総研は独法化以降、運営費交付金を51億円も削減された。研究する時間も削って外部資金を集めざるをえない状況だ。国民のための研究に専念できるよう運営費交付金の増額を求めたい。製品評価技術基盤機構では、製品事故が2千件から7〜8千件と4倍近くも増加し、深夜残業、休日出勤を余儀なくされている」(全経済・森中央執行委員)、「貧困が広がる中で、学生支援機構労組は無利子奨学金に対する運営費交付金を拡大することなどを求めて、様々な団体と共に『奨学金の会』を立ち上げ奮闘している。特殊法人労連は、国民から求められる公務・公共サービス、独法の拡充のために、みなさんと共にたたかっていく決意である」(特殊法人労連・竹内事務局長)とそれぞれから力強い発言がされました。
財務省に向けたシュプレヒコールのあと、国公労連・盛永副委員長が「社会保障費2200億円削減に反対する声が大きく広がっている。真に必要な予算は削るべきではないというのが国民の声だ。一律・一方的な運営費交付金の削減をやめさせ、必要な予算措置を求め奮闘しよう」と閉会あいさつし、行動を終えました。
〈財務省交渉〉運営費交付金と人件費の増額を図れ
財務省前行動につづいて、独法の運営費交付金の増額を求め財務省交渉を、国公労連と特殊法人労連の共同で実施しました。
国公労連の香月書記次長を責任者に各単組、独法労組の代表と、特殊法人労連の代表ら14人が参加し、財務省側は主計局総括係・多田主査(補佐)ら4人が対応しました。
冒頭、運営費交付金の増額を求める団体署名1,405筆と、要求書(別掲)を提出し、香月書記次長が要求書の2項目についてただしました。それに対して財務省側は、「運営費交付金の一律・一方的な削減をやめろということだが、独法は効率的な運営が必要だ。独法導入後6年経過した昨年には原点に立ち返り、国民に必要なサービスを確保しつつ無駄を排除する整理合理化計画を作成し、独法の見直しを行ったところだ。一律というわけでなく、独法それぞれの業務を見た上で措置しているという認識だ。独法には3兆5千億円もの財政支出が行われているわけで、国の財政状況が厳しいなか、効率化をはかる必要がある。総人件費についても独法への国民の厳しい目があるなか、国家公務員に準じて5年で5%削減する。またそれぞれの賃金は、各独法において労使自治で労使交渉をベースに社会情勢をふまえて決定されるわけで、各独法で人件費の確保が必要となる」と回答しました。
つづいて、組合側から各参加者が職場実態をふまえて以下の発言をしました。
〈特殊法人労連・岡村幹事(学生支援機構労組書記次長)〉この10年で、財投と財投機関債が財源である有利子奨学金は激増しているが、運営費交付金を財源とする無利子奨学金はまったく増えていない。貧困が広がるなか、無利子奨学金の適格者が毎年2万人ずつ増えており、母子家庭や生活保護家庭の子どもまで無利子奨学金が受けられないというひどい実態が生まれている。毎年10万人以上が無利子奨学金の適格者であるにもかかわらず進学の夢を絶たれている。こうした状況を放置し続けることは、公的事業の責任放棄だ。ただちに運営費交付金の増額を要請する。そもそも日本以外の先進国には、無利子どころか返す必要がない「給与制奨学金」がある。教育の機会均等を保障する欧米並みの奨学金制度をつくるべきだ。
〈全経済・森中央執行委員〉製品評価技術基盤機構では、製品事故に関わる業務が4倍近く増加しているにもかかわらず、運営費交付金と総人件費が削減されている。業務量の増加に対応した人員増が必要だ。産総研は運営費交付金を51億円削減され、外部資金を取ってこざるをえず、そのため基礎研究・経常研究が困難になっている。大きな成果を上げているのは経常研究なのにそこがおろそかになるのは問題だ。質問だが、研究開発力強化法の33条で総人件費削減に配慮するとあるが、概算要求基準には一言もふれられていない。どういうことなのか、回答いただきたい。
〈総理府労連・若色副委員長〉宇宙航空研究開発機構では、宇宙基本法が成立したことにより、予算も含めて宇宙事業に特化していくのではないかという危惧がある。先ほど職員の給与は労使自治の問題だと言われたが、旧特殊法人と国研が一緒になったところでラスパイレス指数が高いという点を公表すること自体が労使自治とは次元が違う話になりはしないか。
〈全建労・大島書記長〉総人件費削減により新規採用者が極端に少なくなっている。土木研究所では独法移行後一桁の採用しかない。その結果、高齢化が進み研究の継承が困難になっている。これまで何十年と重ねてきた研究がこのままでは途絶えることになり、社会にとっても大きな損失となる。建築研究所では業務量の増加が原因で自殺者が出てしまった。また、運営費交付金削減で、施設の維持管理が困難になり、実験機器の電気代さえなく実験もままならない実態となっている。
〈全運輸運研支部・金田書記長〉交通運輸の安全のために事故が起こる前の予防対策にお金をきちんとかける方が結果的に安上がりになるわけで、10年20年先を見通した財政運用をお願いしたい。
〈全通信・宮澤副委員長(研究機構支部長)〉情報通信研究機構ではパーマネントの研究者の採用ができなかったが、突然の退職者が出たのでこの4月に新規採用がやっとあったという状況だ。総合職ではこの3年間で一人も新規採用できない状況の上に、コンプライアンス重視でほとんどダブルチェックの業務となっており多忙を極めている。研究開発強化法にあるように、ぜひ総人件費削減について配慮いただきたい。
〈全医労・瀬谷書記次長〉国立病院機構の運営費交付金は、04年度521億円から08年度479億円と毎年削減されている。不採算の政策医療に対する運営費交付金は約70億円に過ぎず、政策医療への運営費交付金増額が必要だ。医師・看護師不足が社会問題となるなか、国立病院は看護師養成にも大きな役割を果たしている。しかし、看護師養成所に対する運営費交付金は認められず、養成所の縮小再編と学生に負担増が強いられる状況となっている。看護師養成所は、04年度68校から08年度43校に減少し、1学年定員数は、04年度3,660人から08年度2,755人に減少。入学金は、04年度13万円から08年度18万円へ、授業料は04年度21万円から08年度40万円と、看護学生の負担が増大している。看護師養成所に対する運営費交付金を認めるべきだ。
これに対して、財務省側は、「研究開発力強化法については、『配慮する』と書いてある点の具体化について、現在、行革推進本部事務局と総務省行政管理局が検討を行っている最中だ。みなさんから職場実態が出されたように、独法は広範囲な業務を行っている。確かに現場では様々問題があると思うが、独法に見合った計画を立てて、それに見合った進め方が必要だ。運営費交付金は自由に使っていいわけだから、その範囲で独法の何にあてていくか等、自律的な運営ができるようになっている。そこは縛られているというわけではなくて、独法はいろいろな独自の取り組みができるはずだ」と回答にするにとどまりました。
最後に香月書記次長が、「独法は自律的な運営が可能と言われるが、現実はきょう各独法職場から出された厳しい実態だということだ。そこにきちんと目を向けた対応こそいま必要になっていることを強調しておく」と述べ、交渉を終了しました。(※交渉終了後、不公平税制の是正で14兆円の財源確保ができるという国公労連の「税制改革の提言」を手渡しました)
《別添》
2008年7月31日
財務大臣 額賀福志郎 殿
日本国家公務員労働組合連合会
中央執行委員長 福田昭生
特殊法人等労働組合連絡協議会
議 長 岩井 孝
運営費交付金の増額等を求める要求書
独立行政法人や国立大学法人の財政を支える運営費交付金が、毎年一律的・一方的に削減されています。独立行政法人の運営費交付金は、一般管理費と業務管理費に区分され、一般管理費は毎年3%、業務管理費は毎年1%削減されています。
元々、2001年に中央省庁再編と同時に創設された独立行政法人は、「国自らが直接実施はしないが、民間にゆだねた場合必ずしも実施される保障の無い業務」を担い、業務運営においては「自主性は十分配慮される」とされていました。ところが制度発足から7年を経過し、予算や組織、人員、人件費などについて自主性はほとんど認められていない実態となっています。昨年末の独立行政法人整理合理化計画では国からの財政支出の削減や給与水準の適正化も盛り込まれました。
特に問題なのは、連年にわたる運営費交付金の削減により、国民の安心・安全を守り社会基盤を支える独立行政法人の業務遂行に支障が生じ、国民サービスの低下を来していることです。例えば研究機関法人では、研究費減少に対応するため民間外部資金の導入を進めた結果、外部資金関連業務が激増し、研究者が本来の研究業務に携わることが困難になっています。検査機関法人では、必要な検査機器の購入に支障が生じています。更に、奨学金事業法人では、無利子奨学金希望者が多く、貸与条件を満たしていても貸与されない事例が多数存在しています。
また、独立行政法人の人件費についても、行革推進法によって平成18年度から5年間で5%の削減が決められています。そのため慢性的な人員不足となり各法人の業務遂行に大きな足かせとなっています。更に正規職員が採用されず、組織の将来が危ぶまれる法人もあります。任期付研究員が増え、研究所によっては過半数に及ぶなど研究の継続性が阻害され、研究員自身の人生設計にも問題が生じています。
以上のような状況を踏まえ、貴職に対して下記のことを要求するものです。
記
1、運営費交付金については、一律的・一方的な削減をやめ、法人の運営に支障が生じないよう必要な予算措置を図ること。
2、業務の実態に応じた必要な増員を含め総人件費の増額を認めること。
以上
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