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国公労連速報 2008年8月25日《No.2045》
「国の出先機関の見直しに関する中間報告」で地方分権改革推進委員会に申し入れ
 

 

 8月22日、国公労連は地方分権改革推進委員会に対して、「国の出先機関の見直しに関する中間報告に対する申し入れ」を実施しました。国公労連は、川村副委員長を責任者に、各単組から書記長ら11名が参加し、地方分権改革推進委員会事務局側は小事務局次長(内閣府地方分権改革推進室長)、吉田参事官ら3名が対応しました。
 冒頭、川村副委員長が、申し入れ(別掲参照)の趣旨を述べ、「いま地方が疲弊し、特に自治体の財政難が深刻になっている。そういう中で、国が責任を果たさなければならない役割が地方分権の名で地方に移されようとしている。これは重大な問題として注視せざるを得ない。国の役割は憲法が保障する国民の基本的人権を担保することにある。これを基本にすえるべきだ」と強調しました。つづいて、各単組から要旨以下の発言がされました。
〈全経済〉8都市にある経済産業局の8機関は、それぞれ国が行うべき事業を行っており、「二重行政」という批判は当たらない。経済産業局が行っている中小企業やベンチャーの育成は、効率性・公益性の観点からも国が実施することが適切であるし、中小企業の利便性にも応えるものだ。経済産業局の地方支分部局も小さいが、力を発揮しており、自治体との間で、行政の重複や無駄な事業はない。
〈全建労〉地方整備局は、主に道路と河川の管理をしている。確かに自治体も管理しているが、そもそも仕事の中味が違う。例えば国道は基本的に国土交通省で全国的なネットワークとして管理している。我々は、広域的な交通ネットワークを担っているところを管理している。それを自治体に管理をゆだねてしまうと、それぞれで管理水準や舗装整備が全然違うというようなことも起こりかねない。全国的な道路網を維持するためには国として統一的に責任を持って管理するべきだ。河川の管理についても道路と同じで、例えば複数の自治体にまたがって大災害が発生した場合、それぞれの自治体の利害関係の調整などが必要になり、一つの自治体の枠でできるのか非常に疑問だ。災害に対する備えが、住んでいる自治体によって、水準が違うということも容認できない。国民の安全・安心を確保するために、国が責任を果たす必要がある。
〈全労働〉労働局の地方委譲やブロック単位機関への集約化が議論されているということだが、我々はいずれも不適切であり強く反対する。労働行政は憲法の保障する勤労権、職業選択の自由といった憲法上の基本的人権を保障するためにあり、国が責任を持って全国一体的に行わなければならない。自治体は財政が厳しい状況にあり、税源移譲も難しいとした場合、労働行政が担う基本的人権が地域によって格差が生じることになりかねず、憲法上そうした事態は許されない。また労働局は単なる都道府県単位機関ではなく、例えば社会問題化している違法派遣や偽装請負などの取り締まりであるとか、労働保険の適用・徴収、総合労働相談など、労働者、事業主に直接かかわる地域に密着した業務を執行する第一線機関だ。これをブロック単位機関に集約化することになると担っている機能が大きく後退することは避けられない。また、グッドウィルやNOVAの問題など、全国的な問題についても国が対応する必要がある。いま労働者派遣法の改正が次の臨時国会の焦点になっており、規制強化の方向で議論されるが、違法派遣の取り締まりは労働局がやっている。もしもその体制が後退するようなことがあったら政治的にも大問題になる。
〈全法務〉地方支分部局を含めて地方委譲するという議論がされているが、登記は、国土を管理しており、そもそも国がやるべき仕事である。業務の面ではいまは全国一律の登記業務が行われ、国民の安全・安心が担保されているが、それを地方委譲すると、自由裁量権もあるとされる自治体できちんと登記業務が行われるのか疑問である。
〈全運輸〉自動車登録が地方に委譲されてしまうと、手数料がそれぞれで違うであるとか、全国一律のサービスが壊れてしまう。航空や陸や海の交通に対しても全国一律でなければいけない。誰もが好きなときに移動できる国民の交通権が崩れてくる懸念が考えられる。国民の安全・安心の行政サービスを確保する観点から問題を考える必要がある。
〈全港建〉地方分権の議論は、単に人をどれだけ減らせるか、お金をどれだけ削れるか、という議論に終始している。真の国民のための行政サービスを考えたときに、どういった形が求められているのかという議論が欠落している。我々の港湾関係は、整備、防災などを担っているわけだが、必要最小限の組織を確保すればいいという議論がされているが、我々からすれば、この間の定員削減で少ない人員のもとで精一杯国民のための行政サービスを提供しており、すでに必要最小限もしくはそれ以下の行政体制になっている。何より国民への行政サービス提供の観点からきちんと議論していただきたい。
〈全通信〉地方出先機関の見直しは、国民の生活や暮らしを守る観点から国の役割は一体どこなのか、というきちんとした議論がなされていないのではないか。地方出先機関の統廃合ありきの議論は避けていただきたい。

 以下、要旨次のやりとりがされました。(※●は地方分権改革推進委員会事務局側、○は国公労連側)

 ● 8月1日に中間報告を出して今後の道筋をあきらかにしているところだ。申し入れ書の中にある事務・権限の仕分けについては、現在、各省に見解を求めている。その見解に基づき委員会で議論していくことになっている。初めに行政サービスの削減ありきということではなくて、各省の見解に基づき議論していく。最初から、何か結論めいたことがあるわけではない。

 ○ 状況の変化の認識はないのか。貧困と格差が社会問題となり、政府としてもこれにきちんと対応していかなければならないときに、当初の地方分権のまま、国の行政スリム化ありきでは問題だ。国の出先機関を地方に展開することが悪であるかのように言われていることに疑問を感じる。基本認識のところで、いま地方がおかれている状況、国民の状況をどう認識されているのか。ナショナルミニマムは達成されていると以前言及されていたが、今もそういう認識なのか。地方分権は、国民の暮らしが豊かになる方向が必要なのに、とにかく二重行政、地方出先機関は非効率だとして、ますます国民サービスが後退する方向で議論が進められているのではないか。どうすれば国民の基本的人権が保障されていくのかという観点から議論すべきだ。

 ● 私は総理大臣ではありません。いま言われた非常に大きな問題、なかんずく憲法に基づく国民生活の保障ということについて、委員会事務局が担っているわけではない。地方分権委員会は、国民の生活水準を下げるようなことは一言も言っていないわけで、水準については、国の行政と地方の行政をあわせて、各省などそれぞれのところで議論している。そういうところにまで我々は権限を与えられているわけではない。あくまでも我々は地方分権を進めるという委員会の事務局として議論の手続きをふみながら作業を進めていくわけで、誤解のないようにお願いしたい。

 ○ 今回の我々の申し入れを受け止めて、委員会に反映していただけるということで理解していいのか。

 ● 指摘されていることは、すでに委員会で議論されてきている。その上で、いよいよ当てはめ問題としてどう具体化するかというところにきている。ナショナルミニマムをどこまでどのレベルで果たすのかという話と、分権として国と地方の役割分担をどう考えるのかというのは、別の問題だ。ナショナルミニマムの要請にこたえつつ、国と地方の役割分担で、国がどこまでどういう対応をしていくのか、国と自治体でどう効率的な行政システムをつくるかという問題だ。委員会はナショナルミニマムのレベルをどうするか、レベルの上げ下げの議論をしているわけではない。分権改革とは何なのか、委員会がどういう理念のもとで議論しているかは昨年5月の基本的考え方で示してある。そこで一定の大きな整理をした上で、個別具体の課題で、当てはめ問題として我々は作業を進めている。自治体の実情を無視するかどうか以前の問題として、自治体の責任とは何なのか、自治体に求めるべき責任領域は何なのか、まさにその役割分担の議論を進めている。二重行政についても、無駄とされるものもあれば、分担型もあるし、国が関与していることをもって二重行政と言っているものもあるし、国がもっぱらやるべきものなのに、潜在的には地方でもやりうるという潜在的な二重行政をどう解消するかという区分をした上で仕分けするので、一律・機械的に仕分けをするのではない。そして、事務権限がどこに帰着すべきなのか、各省の見解をいま求めているところだ。
 財源の担保についても、仕事が動くのあれば金と人の手当は不可欠であるというメッセージは繰り返し出している。三位一体改革で、仕事に対応する財源の確保が結果的になされなかったという自治体のトラウマがあり、その点への強力な意見が出されており、我々は十分意識して議論を進めている。最終的には第3次勧告で、出先機関の仕事の役割分担を整理していく中でも財源を確保する方向だ。現に道路や河川の問題についても1次勧告の中で、財源と人の移管をどうするのか国交省も含めて議論している。財源確保を最大の論点として、中間報告の中でも出し、今後も我々として重視していくということでご理解いただきたい。
 雇用の問題も人員の移管に伴って必要な調整の話が出てくるため、そうした仕組みをつくる必要があるということを1次勧告でも中間報告でもきちんと書いている。それを具体化することが今度の2次勧告になると思う。
 また、交渉・協議という名は別にして、こうして意見をうかがう機会を作っているし、実務的な情報交換もやっていくという姿勢で望んでいる。申し入れにある4点については、我々も充分念頭に置きながら対応していきたい。

 最後に、秋山行革対策部長が、今後も国公労連と十分な交渉・協議を行っていくことを確認して、申し入れを終了しました。


《別掲》

2008年8月22日
地方分権改革推進委員会
委員長 丹羽宇一郎 殿
日本国家公務員労働組合連合会
中央執行委員長 福田昭生

国の出先機関の見直しに関する中間報告に対する申し入れ

 政府は、8月5日、地方分権改革推進委員会が行った「国の出先機関の見直しに関する中間報告」を了承した。
 中間報告は、国の出先機関について見直しの基本的考えを示し、事務・権限の仕分け、組織の見直し方向を明示し、年内に第2次勧告を行うことを表明している。
 国公労連は、憲法で規定された地方自治を実現する上で、国と地方の役割のあり方を検討すること自体を否定するものではない。しかし、その際に最も重要なことは、すべての国民が享受すべき憲法上の権利としてのナショナルミニマムが保障されることであると考える。その点で、国の役割を外交や防衛、治安の確保などに限定し、あるいは政治をサポートする政策の企画・立案に重点化することは国民に対する国の行政責任を放棄するものと言わざるをえない。
 医療や教育を国民に保障し、環境を保全することや、また、完全雇用を具体化するための職業訓練や職業紹介事業、防災や社会的インフラ整備とその維持管理など、国民の安心・安全を支える公共サービスは、貧困と格差が拡がり、地域格差もますます拡がっている現状においてこそ、国の責任で拡充されなければならない。
 「小さな政府」「地方分権」の名の下に、「先に統廃合ありき」で国の出先機関を見直そうとする中間報告は、国の役割発揮が特に求められている今日、国民の要求に逆行するものといわなければならない。
 以上の立場から、国の出先機関の見直しにあたって、下記とおり申し入れるものである。


1.憲法上の権利として、ナショナルミニマムを確保する国の責任と役割分担を明確にすること
2.公共サービスを確保する観点から、国の出先機関の見直しによる事務・権限の仕分けでは、次の点に留意すること
(1)自治体の実情を無視して、役割分担・権限委譲を行わないこと
(2)「二重行政」について、その歴史的経緯や背景、実情を精査し、一律・機械的な仕分けを行わないこと
(3)財源の担保を保障すること
3.公務員の雇用不安をおこさないよう、政府の責任で雇用と労働条件を確保すること
4.当事者である国公労連と十分な交渉・協議を行うこと

以上

 
 
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