研究開発力強化法成立による配慮規程の具体化
行革推進本部、財務省主計局などが事務連絡(8月末)
行革推進法による「総人件費5年間5%削減」措置にかかわって、独立行政法人・研究機関の研究者の2割がこの措置の適用除外となりました。
これは、今春議員立法で成立した研究開発力強化法第33条が「行革推進法第53条第1項の規定(総人件費5年間5%削減)の運用に当たっては、研究開発能力の強化及び国の資金により行われる研究開発等の効率的推進が図られるよう配慮しなければならない旨」を規定しており、この「配慮」規程の具体化です。
行政改革推進本部事務局、総務省行政管理局、財務省主計局による事務連絡(別添)によると、(1)国からの委託費及び補助金により雇用される任期付研究者と、(2)運営費交付金により雇用される任期付研究者のうち、国策上重要な研究課題(戦略重点科学技術)に従事する者及び若手研究者(平成17年度末に37歳以下の研究者)については、「総人件費5年間5%削減」の対象としないとしています。ただし、(2)に該当する研究者の雇用が無制限に拡大することがないよう、各研究開発法人の役職員の数又はこれらに係る人件費の額は、平成17年度の相当する役職員の数又はこれらに係る人件費の額を超えないものとする、としています。
なお、各省当局、各独法には今回の適用除外の趣旨は正式な事務連絡より以前に伝えてあり、2009年度概算要求にも反映されています。
今回の措置について行革推進本部事務局担当者は「研究機関が民間等から獲得した外部資金で雇用される任期付研究者については、これまでも『総人件費5年間5%削減』の適用除外であったが、今回は運営費交付金など国の資金による雇用まで適用除外としたものであり、(総人件費削減の立場からすれば)清水の舞台から飛び降りたような気分だ」と語っています。
また同担当者は「研究開発力強化法により独法研究機関の研究職のうち2割が適用除外となる(外部資金で雇用される任期付研究者は8%、今回の適用除外が13%で計21%)」ということも明らかにしました。さらに「100の独立行政法人のうち30の研究機関において、しかも相当数の適用除外が認められたことは、日本の科学技術の発展のためとはいえ、行革推進法の趣旨からははずれた実態となっている」とも述べています。
これまでも独立行政法人は運営費交付金の一律削減と「総人件費5年間5%削減」措置によって、慢性的な人員不足となり業務遂行に大きな支障が生じていました。研究所によっては職員が採用できず、組織の将来が危ぶまれる法人もあります。国公労連は、この間取り組んだ財務大臣宛の団体署名においても「業務の実態に応じた必要な増員を含め総人件費の増額を認めること」を要求し、財務省交渉を行ってきました。
今回の研究開発力強化法による適用除外は、研究機関の一部職員とはいえ「総人件費5年間5%削減」措置に風穴を開けたこととなり、重要な前進といえます。
【別添】
事務連絡
平成20年8月27日
各府省担当官 殿
行政改革推進本部事務局
総務省行政管理局
財務省主計局
独立行政法人における総人件費改革について
1.独立行政法人については、「行政改革の重要方針」(平成17年12月24日閣議決定)及び「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」(平成18年法律第47号。以下「行革推進法」という。)に基づき、人件費削減に取り組むこととされている。具体的には、行革推進法第53条第1項において、役職員に係る人件費の総額について、平成18年度以降の5年間で、平成17年度における額から5%以上を減少させることを基本として、人件費の削減に取り組まなければならないこととされている。
一方、第169回国会において成立した「研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律」(平成20年法律第63号。以下「研究開発力強化法」という。)第33条では、独立行政法人のうち、研究開発法人(研究開発力強化法第2条第8項に規定する研究開発法人をいう。以下同じ。)の研究者に係る行革推進法第53条第1項の規定の運用に当たっては、行革推進法の基本理念にのっとり研究開発法人の運営の効率化を図りつつ、研究開発能力の強化及び国の資金により行われる研究開発等の効率的推進が図られるよう配慮しなければならない旨規定されている。
2.このため、研究開発法人における任期付研究者のうち、以下に該当する者に係る人員及び人件費については、行政改革の重要方針及び行革推進法に基づく、総人件費改革の取組の削減対象の人員及び人件費からは除くこととする。
(1)国からの委託費及び補助金により雇用される任期付研究者
(2)運営費交付金により雇用される任期付研究者のうち、国策上重要な研究課題(第三期科学技術基本計画(平成18年3月28日閣議決定)において指定されている戦略重点科学技術をいう。)に従事する者及び若手研究者(平成17年度末において37歳以下の研究者をいう。)。
(3)ただし、上記(2)に該当する研究者の雇用が無制限に拡大することがないよう、行革推進法の人件費改革期間中、各研究開発法人の役職員(「公的部門における総人件費改革について(独立行政法人関係)」(平成18年2月14日行政改革推進本部事務局、総務省行政管理局及び財務省主計局)及び「独立行政法人における総人件費改革について」(平成20年2月14日同)において総人件費改革の取組の削減対象から除かれている者並びに上記(1)に該当する者を除く。この場合において、上記(2)に該当する者は含まれる。)の数又はこれらに係る人件費の額は、平成17 年度の相当する役職員の数又はこれらに係る人件費の額を超えないものとする。
3.本措置の適用に当たっては、事務・技術職員の給与水準が国を上回る研究開発法人においては、目標とする給与水準、目標期限を中期計画に明記するとともに、給与水準の適正化を着実に進める。
4.また、中期計画、評価結果、各種公表資料において、人件費削減の計画、進ちょく状況、達成度合いを示す際には、(1)「公的部門における総人件費改革について(独立行政法人関係)」、「独立行政法人における総人件費改革について」及び本事務連絡により総人件費改革の取組の削減対象の人員又は人件費から除かれているものを除く人員又は人件費の状況に加え、(2)これらの事務連絡により総人件費改革の取組の削減対象の人員及び人件費から除かれているものを含めた人員又は人件費の状況についても掲記することとする。
5.なお、本措置に伴い、総人件費改革の取組における削減対象人件費等を変更する場合には、行政改革推進本部事務局、総務省行政管理局及び財務省主計局と事前に調整されたい。
6.本措置は、研究開発力強化法の施行の日から適用する。
以上
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