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国公労連速報 2008年11月27日《No.2077》
公共サービス切り捨てる国の出先機関の統廃合やめよ
地方分権改革推進委員会へ「第2次勧告」に向けた申し入れ
 

 

 11月26日、国公労連は地方分権改革推進委員会(内閣府地方分権改革推進本部)に対して、「第2次勧告」に向けた申し入れを実施しました。国公労連は、川村副委員長を責任者に、各単組から書記長ら11名が参加し、地方分権改革推進委員会事務局側は小事務局次長(内閣府地方分権改革推進室長)、吉田参事官ら5名が対応しました。
 冒頭、川村副委員長が、申し入れと要求書(別掲参照)の趣旨を述べ、「きょう、全国町村会が、住民と行政との距離が一段と広がることになる地方分権・道州制には断固反対すると表明した。格差と貧困と広がるなか、公共サービスを切り捨てる地方分権はやめるべきだ」と強調しました。つづいて、各単組から資料等も提出しながら、要旨以下の発言がされました。

〈全建労〉私たちは、いま進められようとしている地方分権について、地方自治体などと懇談を重ねてきた。地方自治体からは、財政状況によって社会資本の整備に地域間の格差が生じることや、災害から国民の安全・安心が守れなくなるとの危惧などが寄せられ、「引き続き国の責任で実施して欲しい」との意見が数多く出されている。こうした地域の声をふまえて、現在直轄で整備・管理している道路・河川行政は国の責任を明確にし、安易な地方整備局の廃止や地方移譲は行わないことを求める。

〈全法務〉不動産登記、商業・法人登記は、いずれも国家運営の基本をなすと同時に、国民経済の基盤を形成し、経済取引の根幹を支える制度だ。したがって、登記など法務局の仕事は、全国統一の事務処理基準に基づき、国が責任を持って実施することが国民の利益につながるものだ。

〈全労働〉現在、各都道府県労働局には需給調整指導官が配置され、労働者派遣法や民営職業紹介事業に関する指導監督業務を行っている。ブロック機関化すると、最も行政の支援を必要としている労働者の利便性を犠牲にし、結果として労働者を“泣き寝入り”させてしまうことになる。男女雇用機会均等法、パートタイム労働法、次世代育成支援法などの施策を担う雇用均等室も各都道府県労働局にあるが、セクハラやパワハラ等の被害に悩む労働者からの相談を多数受け付けている。都道府県労働局には全国で年間100万件を超える相談事案が寄せられており、その数は年々増えている。都道府県労働局のブロック機関化は、深刻な労働紛争事案を抱えた労働者が相談窓口を失ってしまうことになる。都道府県労働局の廃止、ブロック機関化は、労働者・国民の権利保障そのものに決定的な影響を及ぼすことは明らかだ。

〈全経済〉中小企業・地域経済支援、消費者行政など、経済産業局が行っている業務を都道府県に移譲することには、次の点から反対する。(1)中小企業行政など経済産業政策は全国的規模で一体的に行う必要がある、(2)ブロック経済、大都市圏、海外の市場を視野に入れた産業政策を担う国のブロック機関の必要性がある、(3)国の機関だからこそ、産業政策の人材、ノウハウの蓄積があり、困難かつ高度な行政を行い得る。業務を移譲した場合、この人材、ノウハウが活かされなくなる恐れがある、(4)製品安全業務、電気・ガス事業などは、都道府県に所管を移すと業務量に比し、過大な体制をとらなければならないなど行政効率に逆行することも生じる、ことから引き続き経済産業局が担うべきだ。

〈全港建〉港湾や海洋環境など国土の整備や保全を担う業務は、国が責任を持って行うべきだ。地方整備局は廃止ありきとする議論には納得できない。

 これに対して、地方分権改革推進委員会事務局側は要旨次のように述べました。
 12月上旬の第2次勧告をめざして作業を進めている。柱は、国の出先機関と義務付け・枠付けの見直しだ。後者は本日の委員会で、勧告素案が議論された。出先機関の改革は、特定の省庁を狙い撃ちするわけではないが、道路・河川のボリュームが大きいことから、本日、3人の知事から国交省との協議の状況と要望を聞いた。来週、国交省から都道府県との協議状況を聞くことになっている。
 みなさんから意見が出されたが、我々は地方分権を進めるための委員会として、一つひとつの事務・権限について、可能な限り地方移譲ができないかを検討している。組織論の面では、地方移譲しても、国に残る事務はあると考えている。残った事務を担う組織についても第1次勧告や中間報告で議論してきたところだ。第2次勧告では、少なくとも国に残った事務を担う組織のあり方についての方向性を盛り込む。
 個別の機関の統合についても視野に入れて具体的な指針を提示する。一定の個別の事務・権限を地方に移譲すべきと明記する第2次勧告になる予定だ。また、最初から組織の廃止ありきとか、行政減量のリストラを進めるためなどではなく、あくまで地方分権を進める立場で、地方に移譲するという作業を進めているということだ。我々の勧告は、地方分権の詳細な結論ではなく、方向性を示す指針であり、これを受けた政府が具体的な法案づくりに入るということだ。

 最後に、川村副委員長が、「国の役割は憲法が保障する国民の基本的人権を担保することにある。その基本からはずれ、国の責任を放棄する地方分権は行うべきではない」「引き続き、国公労連との協議を求める」と強調し、申し入れを終了しました。


《別掲》

2008年11月26日
 内閣総理大臣 麻生太郎 殿
(地方分権改革推進本部長)
日本国家公務員労働組合連合会
中央執行委員長 宮垣 忠

「地方分権改革」に対する要求書

 政府は、地方分権改革推進法に基づく「地方分権改革」を進めるとして、地方分権改革推進委員会を設置しました。地方分権改革推進委員会では、本年5月の第1次勧告に続き、現在、国の出先機関の見直しに関する第2次勧告に向けた議論が進められています。

 委員会での議論のさなか、麻生首相は、地方分権改革推進委員会の丹羽委員長と会談し、国の出先機関である地方整備局と地方農政局について、廃止も含めた抜本的な統廃合を求めました。こうした手法は、委員会での議論を無視した結論の押しつけであり、到底認めることはできません。

 今進められている「地方分権改革」は、自己責任の名の下に社会保障をはじめとする公共サービスを切り捨てるものであり、国の公的責任を放棄するものです。
 加えて、国家公務員の雇用や労働条件に深くかかわる問題について、当該職場で働く公務員労働者を組織する国公労連に何ら説明しないまま、将来に対する職員の不安を煽ることは行政遂行における安定性・専門性にも支障を来すものです。使用者としての重大な責任を厳しく指摘するとともに、政府として関係各方面に対し真摯な対応を行うよう求めます。

 つきましては、下記の要求について政府として誠意ある対応を行うよう求めます。


1.行政サービス・公的責任の放棄につながる国の出先機関の廃止・統合などを行わないこと

2.大幅な定員削減を目的とした国の事務・事業の地方移譲や地方支分部局の統廃合による「合理化」を行わないこと

3.当事者たる国公労連との誠意ある交渉・協議を行うこと

以上


2008年11月26日

地方分権改革推進委員会
委員長 丹羽宇一郎 殿
日本国家公務員労働組合連合会
中央執行委員長 宮垣 忠

「第2次勧告」に向けた申し入れ

 貴委員会は、本年5月の第1次勧告に続き、8月には「国の出先機関の見直しに関する中間報告」を出し、現在、第2次勧告に向けた議論を行っていると承知しています。

 地方分権改革推進法では、地方分権改革に対する理念を定めていますが、国民福祉の増進を図るために国と地方の役割を明確にするとしています。しかしながら、第1次勧告や中間報告では、国と地方自治体の責任と役割の検証と議論を抜きに、地方出先機関が担っている事務・権限を地方移譲することに主眼が置かれており、国の責任を放棄するものとなっています。これでは、国民福祉の増進や住民自治を拡充するものとはなり得ません。

 国公労連は、憲法の完全実施を求める立場から下記事項を申し入れるので、貴委員会として誠意ある対応を行うよう求めます。

1.国の責任を放棄し、公共サービスを破壊する国の出先機関の統廃合を拙速に決定しないこと
(1)国が直轄で整備・管理している道路・河川・港湾行政は国の責任を明確にし、安易な地方整備局の廃止や地方移譲は行わないこと
(2)国が実施している無料職業紹介事業の都道府県への移譲は行わないこと。また、利用者の利便性と労働者保護を大幅に後退させる都道府県労働局のブロック化は行わないこと。
(3)中小企業・地域経済振興、消費者行政拡充に逆行する経済産業局の業務の移譲は行わないこと
(4)登記など法務局の仕事は国が責任を持って実施すべきであることから、地方移譲は行わないこと
(5)行政の専門性を損ない、権力の集中化による弊害を惹起することから、地方支分部局の総合化は行わないこと

2.当事者たる国公労連との誠意ある交渉・協議を行うこと

以上

 
 
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