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国公労連速報 2008年12月2日《No.2080》
独法の運営費交付金・人件費の増額を求め財務省交渉
     
 

 

 12月1日、国公労連は、独立行政法人の運営費交付金の増額等を求め、財務省交渉を実施しました。国公労連側は、秋山書記次長を責任者に各単組、独法労組の代表ら10人が参加し、財務省側は主計局総括係・多田主査(補佐)ら5人が対応しました。
 冒頭、要求書(別掲)と運営費交付金の増額を求める団体署名206筆(※今年7月提出後に集約されたもの)を提出し、秋山書記次長が要求書の2項目について要旨以下のようにただしました。
 運営費交付金が毎年一律的に削減され、独法の現場では業務や研究に様々な支障をきたしてる。加えて人件費の削減で慢性的な人員不足に陥り、組織の維持も困難になってきている。同時に人件費削減がいま社会問題となっている非正規の拡大につながり、官製ワーキングプアといわる状況をうんでいる。運営費交付金の一律一方的な削減をやめ、必要な予算措置をはかり、あわせて必要な人件費の増額を求める。また、現段階における来年度の予算編成の状況についてうかがいたい。

 つづいて、各単組、独法労組の代表から、職場実態をふまえた以下の発言がされました。
 《全経済》産業技術総合研究所も製品評価技術基盤機構も、独法移行後、運営費交付金が削減され、研究現場も検査現場も厳しい状況になっている。産総研では、交付金が削減されるなか、委託費に頼らざるを得ない。ところが委託費による研究は、決まるのも時間がかかり、実際に使えるようになるのも、極端な例で言えば、10月におりてきて1月までに執行しろということもある。これでは、非常に厳しいタイトなスケジュールで、仕事をしなければならず、本来の研究以上に事務処理に負われる状況にあり、様々な会計処理上の問題も出ている。この点から考えても、運営費交付金を大幅に拡大することが必要だ。また、独法には、国の定員査定と違って人を増やす仕組みがない。中期計画、中期目標を変えないと人が増やせず、財務大臣協議となっている。財務大臣として増員、体制充実を進めるべきだ。

 《全運輸》税金の無駄遣いがあるとするならば、きちんと効率的に執行すべきだが、業務の内容にかかわらず、毎年一律的に効率化係数がかけられ運営費交付金が削減されているのは問題だ。航空大学校は、飛行機を使って実習訓練を実施しているが、運営費交付金の削減に加えて、原油高騰による業務費の増大で、厳しい職場実態になっている。業務の実態にかかわらず一律的に削減していくやり方はやめ、それぞれの独法の業務実態に応じて、増額が必要な場合には増額すべきだ。削減ありきでなく、国民のための行政サービス提供を担う独法の役割をふまえ、業務実態に応じた運営費交付金の増額を求める。

 《全建労》建築研究所、土木研究所がつくばに移転して30年が経過した。設備も老朽化し、更新等が必要になっているが、運営費交付金の削減で、設備の更新が困難になっている。設備のメンテナンスを行う人件費も削減され、団塊の世代も退職していく状況で、業務を引き継ぐ人員も確保できない状況になっている。とりわけ、規模の大きな設備のメンテナンスが困難になっており、国民の安全・安心を守る土台となる研究が行えない状況に追い込まれている。運営費交付金の増額を求める。

 《全通信》情報通信研究機構は、人件費削減で組織の維持も困難な状況になっている。研究開発力強化法で、ポスドクや有期の研究者については人件費削減の枠から除くとのことで一定の改善があった。しかし、中期計画・中期目標で遂行しなければならない本来業務に、有期の職員を投入して行うということは、問題ではないか。有期の職員は、結局は途中で離職せざるをえず、その研究遂行にとっても研究所の将来にとっても支障をきたすことになる。運営費交付金と人件費を増額して、本来の研究をきちんと進めることができる体制を担保することを求める。

 《全医労》国立病院は、民間では担えない不採算な政策医療を担当しているが、政策医療にかかわる運営交付金の割合は15%にも満たない。また、看護師の養成所は、交付金が認められていない。いま看護師不足が社会問題化し、看護師の大幅な確保が求められるにもかかわらず、養成所を減らしている。独法移行時点では、68カ所あった看護師養成所が、今では43カ所まで減らされている。国立病院はへき地医療も担っており、通常でも看護師の確保が困難な中で、養成所が重要な役割を果たしてきた。養成所が減らされ、看護師が欠員になっている国立病院が少なくない。看護師養成所について、運営費交付金を認めていただきたい。院内保育所については、08年度に認められたが、医療危機の中で、医師・看護師を確保するために院内保育所は重要な役割を果たしてきている。引き続き、院内保育所への運営費交付金の増額を求める。

 《統計センター労組》統計センターは統計調査の製表を担っている。失業率や消費者物価指数などは毎月出しており、独法移行後、毎年人員を削減され、若者も責任の重い業務をやらされてメンタル疾患が増えている状況だ。その中で、来年度は5年に1度の大きな調査が二つある。経済センサスではこれまで各県で集計していた部分がすべて統計センターがやることになっている。これは膨大な業務量となるため、人員の確保と運営費交付金の増額を求める。

 これに対して、財務省側から要旨以下の回答がありました。
 ● 予算編成のスケジュールは、まだ具体的にどの段階で編成するか明らかになっていない。従来から言えば12月上旬には、年内の予算編成の形が明らかになるだろう。
 ● 独法については、昨年12月の整理合理化計画で、国民サービスの低下を招くことなく、効率的な運営をめざすことが求められ、個々の法人について事務事業の見直しが掲げられている。その主旨をふまえて21年度予算も組まれる。一律削減ではないかと指摘されるが、国の機関から独法に移行するときの制度設計にある通り、効率的な運営をいかにして確保していくかが根本命題として存在する。当然、個別に必要なものについては、個別に必要性をはかる。そのために各省の評価や総務省の評価がある。
 ● 委託費については、交付が遅いという話があったが、これは私たちも認識しており、各省や総合科学技術会議に対して、再三改善を求めている。しかし、実態がともなっていない状況にあり、執行が困難な現実があることを考えると、必要のない予算ではないのかという話にもなりかねない。
 ● 独法に対しては、相当な無駄があるのではないかという提起があり、国民の間でも疑問視されている。どう予算が使われているのかという予算執行の透明性を明らかにしないと、国民的にも納得させられない状況だ。人件費は総額の縛りがあるが、運営費交付金は、国とは違って、理事長が裁量権を持っている。各自どう使うか決められる制度になっているし、繰り越しもでき、翌年度に自由に使えるわけだ。中期計画のときに見ると、交付金が相当残っている独法も存在する。そうすると、一律削減で減額されているから問題だとうことではなくて、使い方の問題もあるのではないか。だから、交付金がどう使われているのか分析する必要もあるのではないか。

 最後に、秋山書記次長が、「そもそもの独法制度の矛盾や、制度設計にかかわる問題も出てきている。国民サービスを充実する方向で、それぞれの独法の現場の実態をふまえた改善が必要だ。引き続き、国公労連との交渉・協議を求める」と強調し、交渉を終了しました。

以上


《別添》

2008年12月1日
財務大臣 中川昭一 殿
日本国家公務員労働組合連合会(国公労連)
中央執行委員長 宮垣 忠

運営費交付金の増額等を求める要求書

 独立行政法人や国立大学法人の財政を支える運営費交付金が、毎年一律的・一方的に削減されています。独立行政法人の運営費交付金は、一般管理費と業務管理費に区分され、一般管理費は毎年3%、業務管理費は毎年1%削減されています。

 元々、2001年に中央省庁再編と同時に創設された独立行政法人は、「国自らが直接実施はしないが、民間にゆだねた場合必ずしも実施される保障の無い業務」を担い、業務運営においては「自主性は十分配慮される」とされていました。ところが制度発足から8年を経過し、予算や組織、人員、人件費などについて自主性はほとんど認められていない実態となっています。昨年末の独立行政法人整理合理化計画では国からの財政支出の削減や給与水準の適正化も盛り込まれました。

 特に問題なのは、連年にわたる運営費交付金の削減により、国民の安心・安全を守り社会基盤を支える独立行政法人の業務遂行に支障が生じ、国民サービスの低下を来していることです。例えば研究機関法人では、研究費減少に対応するため民間外部資金の導入を進めた結果、外部資金関連業務が激増し、研究者が本来の研究業務に携わることが困難になっています。検査機関法人では、必要な検査機器の購入に支障が生じています。

 また、独立行政法人の人件費についても、行革推進法によって平成18年度から5年間で5%の削減が決められています。そのため慢性的な人員不足となり各法人の業務遂行に大きな足かせとなっています。更に正規職員が採用されず、組織の将来が危ぶまれる法人もあります。任期付研究員においては、2009年度より5%削減からの適用除外の措置が講じられるようになりましたが、ポスドクの抜本的解決には程遠いものです。任期付研究者が増え、研究所によっては過半数に及ぶなど研究の継続性が阻害され、研究員自身の人生設計にも問題が生じています。

 以上のような状況を踏まえ、貴職に対して下記のことを要請します。


1、運営費交付金については、一律的・一方的な削減をやめ、法人の運営に支障が生じないよう必要な予算措置を図ること。

2、業務の実態に応じた必要な増員を含め総人件費の増額を認めること。
以上


 
 
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