全労連公務部会と全労連非正規雇用労働者全国センターは、2月14日に「使い捨てられてたまるか!『官製ワーキングプア』告発集会」を都内で開催し、120人(国公労連は78人)が参加しました。
集会は、「構造改革」の名のもとで進行した公務の切り売りにより生じているさまざまな矛盾・弊害の実態を告発し、公務のあり方について問いかけることを目的として開催されました。
冒頭、主催者として全労連公務部会の若井雅明代表委員があいさつを行い、「派遣切りは、雇用政策と政治経済の課題そのものだ。NHK番組報道では公務のありようを含めて議論されるなど、いま新しい条件がつくられている。政治を変えるチャンスであり、公務労働組合の課題としてたたかおう」と述べました。
続いて、基調報告を行った全労連公務部会の秋山正臣事務局次長は、「公務職場は財政赤字をけん伝され、さまざまな業務に競争入札が行われている。落札業者が安定せず、常に雇用不安がある」と指摘。「臨時・非常勤職員は、日々雇用という国家公務員法と労働基準法のはざまにあり、解雇の制限が何もない無権利状態。民間以上にひどい。生活できる賃金確保を義務付ける公契約法・条例制定の実現が必要」と強調しました。
専門性無視の競争入札で、2000人の解雇の危険性も
続いて、現場で過酷な労働条件で働く臨時・非常勤職員や委託先労働者の実態が次々に明らかにされました。
道路や河川を監視する国土交通省職員を支える車両管理員の労組、日本道路興運労働組合の吉村さんは、「高度な運転技術が必要とされる専門性の高い仕事なのに、誰でもできるからと一般競争入札とされた。いくらがんばっても収入は低いまま。国土交通省の委託業務の削減方針により、昨年夏の入札では420人が整理解雇された。今年度末には2千人が解雇される危険性が高まっている」と訴えました。
法務局の登記業務を委託されている民事法務協会労働組合の杉浦さんは、市場化テストの導入により、37年間法務行政を支えてきた財団法人職員620人の首切りがされようとしていると告発。「私たちは誇りをもって働いてきましたが、『市場化テスト』という民間参入の政策によって、仕事はあるのに職場を追われる現実に、怒りと悔しさを感じています。失業の危機に立たされ、雇用と生活への不安におしつぶされそうになる思いを抱えながら、日々を送っています」と語り、「いま、団体交渉で雇用の確保を求めています。貧困と格差をなくすため、全国一律最低賃金制と均等待遇、公契約法を求めていきます」と決意を語りました。
「子どもにきちんとした生活をさせてあげたい」涙ながらに訴え
非常勤職員として働く全医労鳥取医療センター支部の伊藤さんは、独立行政法人化で雇用形態が変えられ、時給820円とされました。そのため、生活を大幅に切りつめてきたことを述べましたが、仲間と励ましあいながら、労働組合運動をたたかったことで時給が10円上がり、今年の冬には灯油を買うことができたといいます。「子どもが『ストーブつけたら暖かいね』と言いました。子どもにきちんとした生活をさせてあげたい」と涙ながらの訴えに、会場からすすり泣きが漏れていました。
自治労連の江花さんは、総務省が行った「短時間勤務のあり方研究会報告」について内容を報告しながら、不当な雇い止めを合法化するものであり、均等待遇の原則が欠落していることなどを指摘し、改善に向けたとりくみの重要性を訴えました。
東京公務公共一般労組の伊藤さんは、多摩市にある福祉施設において、正規職員採用を理由に非正規職員50人の雇い止めがされようとしていることや、ある自治体では民間の「派遣切り」された労働者を受け入れながら、足元で働く非正規労働者の解雇している実態など、自治体で様々な矛盾が起きていることを報告するとともに、「4月26日にナショナルセンターを越えて『反・官製ワーキングプア』集会を開催しますので、参加してください!」と、幅広い仲間との連帯と共同の運動を呼びかけました。
年収80万円で、生活保護を受けて教壇にたつ非常勤教員
全労連・全国一般の林さんは、民間委託した下水処理場業務の落札額が下がり続けており、すさまじい劣悪な賃金で働いている実態と経営が成り立たないとして企業の撤退が相次いでいることを報告しました。公務・公共サービスを支えている一員として、住民サービス向上のために労働条件の底割れにストップをかけるため、最賃と均等待遇、公契約運動に取り組んでいることを報告しました。
埼高組臨時教職員の鈴木さんからは、「年収80万円のみで、生活保護を受けて教壇にたっている非常勤教員がいます。給食の民間委託などを加えると、教育現場の非正規労働者は自治体も正確に把握できないほどの状態になっています。」と述べた上で、労働組合のたたかいにより改善していこうとする仲間が増えており、組織拡大が進んでいることも報告しました。
フロアからも実態告発と改善に向けたとりくみが
引き続き会場から、特殊法人労連事務局長の竹内さん、大阪自治労連・枚方市職労の橋野さん、全労働本部の高村さん、全労働北海道支部委員長の富塚さん、全建労九州地本大分支部の山崎さんの5名から、単産でのとりくみや職場実態などが報告されました。
発言では「同じ職場で働く仲間として、みんなが笑顔で働き続けてほしいのです。均等待遇めざし、とりくみをすすめていきます」「安ければいいなどという入札改革により、一番損をするのは国民ではないでしょうか。国だけでなく自治体にも訴え、社会問題として世論をつくっていきます」などと力強い決意表明などが行われました。
集会のまとめとして全労連公務部会の黒田事務局長は、「この集会で、法の谷間で無権利になっている非正規労働者の実態が明らかになりました。本集会を起点に、職場を基礎にして、一人ひとりが知恵を寄せ合いたたかいを広げよう」と訴えました。
また、「公務の切り売りによる労働者の使い捨てを許さない決議」を集会参加者全体で確認し、全労連非正規センター井筒事務局長の閉会あいさつで、集会が成功裏に終わりました。
公務の切り売りによる労働者の使い捨てを許さない決議
「構造改革」による公務員削減・総人件費削減のもとで、正規職員から非正規職員への置き換えや民間委託がすすみ、国や自治体の職場で、非正規職員である臨時職員、非常勤職員、委託職員が増加してきており、雇用形態も多様化している。また、市場化テストの導入や競争入札の増加などにより、労働者が商品のごとく扱われ、公務職場でも雇用破壊が行われようとしている。
昨年秋から大手製造業を中心に行われた「派遣切り」などは、大きな社会問題となり、大企業の社会的責任を問いかけた。一方、公務職場においても、無駄の排除を理由とした競争入札の原則導入により、委託労働者などの雇用が破壊されようとしている。
公務員に対するバッシングが続いていることもあり、公務における非正規問題にまで焦点は当たっていないが、今年度末で多数の雇用が危機にさらされている。加えて、競争入札の激化による入札単価の切り下げ競争により、賃金の切り下げ提案が横行している。国や自治体がこのような雇用破壊をおこすことは見過ごすことができない。政府は、雇用に対する責任を果たすべきである。
集会では、公務職場における臨時職員、非常勤職員、委託職員の実態と雇用と労働条件を守る各単産でのたたかいや現場実態の告発がなされた。正規・非正規・委託を問わず、労働者の連帯で、公務職場における雇用破壊をストップさせる運動を大きく広げなければならない。そのためにも、本日の集会を起点にあらゆるとりくみを強化する必要がある。
「構造改革」路線に基づく総人件費削減、公務・公共サービス破壊の攻撃に対するたたかいを基軸に、公務・公共サービスの拡充を目指すとともに、委託労働者などの雇用破壊にストップをかけ、労働条件の底割れを許さないための「公契約」運動を発展させるものである。
以上、決議する。
使い捨てにされてたまるか!「官製ワーキングプア」2.14告発集会
以上
|