国公労連は本日、地方分権改革推進室との交渉を実施しました。国公労連からは岡部書記長をはじめ秋山書記次長ら5名が参加し、推進室は小高室長ら3名が対応しました。
はじめに、昨日地方分権改革推進本部が決定した「出先機関改革に係る工程表」について小高室長が以下のように説明しました。
「工程表」には3つの柱がある。1つは「事務・権限の見直し」で、国の機関の職員は大きな影響を受けることとなるため、職員の削減数などは明記せず、今後精査を進めて今年中に閣議決定する「改革大綱」に盛り込む予定であること。
2つめは「出先機関の組織の改革」で、第2次勧告など出されているが、それらの「方向性」で検討するとしたことと、雇用問題や災害への対応など、行政サービス水準を維持して、国民生活を阻害するようなことがないように、「国の事務・権限の的確かつ確実な実施を確保するもの」と明記した。そのため要員規模も一路スリム化ではなく、要員規模の精査結果とあわせスリム化方針の検討を進めるとしていること。
3つめは「人材調整準備本部の設置」で、事務・権限の見直しに伴って、国家公務員から地方公務員への移行が考えられ、これを円滑に進めるため推進本部に人材調整準備本部を置くこと。
以上の3つの柱が出先機関についての工程表で、これは地方分権改革のパーツの1つだ。今後3年の移行準備期間を設けて平成24年度から実施することをめざす。地方分権改革推進委員会からは、3万5千人の職員削減などの数字が出されているが、政府としては、今後精査して削減目標を「改革大綱」に盛り込むことになる。
この説明をうけ、岡部書記長は次のように発言しました。
「工程表」の決定前までの説明や交渉を求めてきたが、この間の経過の中で、前後したことに改めて遺憾の意を表明し、きちんとした説明と見解を求める。
私たちはこの間、再三申し上げてきたように、事務・権限の見直し等について、国の出先機関の果たしている役割等を検証した上で、憲法にも定められている地方自治の本旨に沿った検討、ナショナルミニマムを保障すべき国の責任を踏まえた検討を行うべきであると言ってきた。この間の改革論議、勧告における組織のスリム化、地方出先機関の統廃合、人員の削減など、行政減量化が前面にたったものであり、必ずしも先に述べたような議論にはなっていない。
今回の「工程表」において、具体的な数字や振興局・企画局などが盛り込まれなかったことは、受け止めたい。
今後、「工程表」に基づいて年内に策定しようとしている具体的な計画にむけては、私たちとの誠実な交渉・協議を求める。
とりわけ対象とされている出先機関の多くは国公労連傘下の各省庁の出先機関であり、私たち国公労連と交渉・協議の場を持たずに、検討や具体化、計画の決定は到底ありえないと考えている。一方の当事者とは、大臣も含めて「工程表」の決定前に時間をとっている中で、当事者団体の間に差をつけるような対応の仕方についてはこの機会に改めるよう求める。
これに対して小高室長は、「地方分権改革推進計画は、年末までに出先機関だけではなく、基礎自治体の権限委譲や義務付け・枠付け、税財政等などの項目が出てくることになる。その中の一部である出先機関改革については、重たい宿題を政府として課せられていると思っている。マスコミでは先送りなどと報道されているが、今回の工程表の意味するところは非常に大きい。我々としても、組織の改革について単なる組織いじりということのないように、より良いものができるよう各省庁からも様々な実態を聞きながら慎重にやっていきたい。特に、人事調整準備本部については、実際に働いている方々の身分の切り替え等もあることから、人事制度を所管する制度官庁とも相談しながら少しずつ進めて行きたい。また、皆さん方とのこういった場を設けて意見を聞きながら進めて行きたい。分権の観点から留意し、結論の先取りとか、はじめに数字ありきではいけないと考えている」と述べました。
最後に、再度今後にむけた誠実な対応を求め、交渉を終えました。
※国公労連・岡部書記長は、「工程表」の決定にあたって以下の談話を発表しました。
国の責任放棄につながる地方出先機関改革は認められない(談話)
〜国の出先機関改革に関する工程表決定にあたって〜
2009年3月25日
日本国家公務員労働組合連合会
書記長 岡部勘市
政府の地方分権改革推進本部は3月24日、地方分権推進委員会の第2次勧告に基づく国の出先機関改革に関する工程表を決定した。
国の出先機関の見直しでは、第2次勧告に盛り込まれていた地方出先機関の統廃合や職員の大幅削減については明記せず、今後のスケジュールを示すだけにとどまっている。
これは、われわれのとりくみの反映であるとともに、出先機関が果たしている役割をまともに検討もせず、様々な矛盾を含んだまま出された勧告であったことを如実に示すものである。
国公労連は、第2次勧告で示された国の出先機関の見直しについて、第一に憲法にもとづく国の責任、例えば都道府県労働局が担っている雇用確保、失業対策等の公共サービスを切り捨てるなど国民に対する責任放棄であること、第二に「簡素で効率的な政府」の名の下に出先機関で働く国家公務員の大幅削減を打ち出し、深刻な雇用問題が発生する危険性があること、第三に受け皿となる地方自治体の事務・権限や財源問題も先送りしていること。また、地方分権改革推進委員会の強権的なやり方は、地域の社会・経済に重大な影響を及ぼすことが危惧されること、を指摘してきた。
この間の「構造改革」によってすすめられてきた市場原理主義に基づく自由競争の弊害により、格差と貧困の拡大や雇用不安が社会問題化している。国が果たすべき役割と責任は、雇用の確保や社会保障の拡充、中小企業の経営安定など、国民生活の破壊を防ぐセーフティーネットをはじめとしたナショナルミニマムを保障することである。国の出先機関は、憲法を具現化する責任を果たすために設けられているものであり、その行政体制の確立・拡充こそが求められている。
麻生首相が「100年に一度の経済危機」と述べたとおり、国民生活を守り、安心・安全な社会を作りあげるため、今こそ政府が責任を持って全力を上げなければならない。「地方分権」で地方再生、地域振興がはかれるかのような幻想を振りまいているが、「自己責任」を押しつける「構造改革」の流れでは、財政力で差がある都市部と地方との格差は拡大するばかりである。政府に求められているのは、国民に幻想を抱かせるのではなく、住民自治の拡充と国の責任でナショナルミニマムを保障する政策を示していくことにある。
地方分権改革は、国民的に開かれた議論が保障されなければならない。同時に、当事者である国公労連ならびに関係単組との十分な交渉・協議も不可欠である。国公労連は、引き続き政府との交渉・協議を強めるとともに、政府・財界がすすめる「構造改革」路線にもとづく一連の「改革」を許さず、国民の権利と暮らし、地域を守る共同の運動を全国で強化する決意を表明する。
以上
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