7月29日、国公労連は特殊法人労連と学研労協の3者共同で、独立行政法人の運営費交付金の増額等を求める財務省交渉を実施しました。国公労連は秋山書記次長を責任者に各独法労組代表など8名が参加し、特殊法人労連と学研労協からはそれぞれ代表2名が参加しました。財務省側は、主計局総務課予算総括係の安出主査他3名が対応しました。
冒頭、秋山書記次長が、今回初めて3者共同で取り組んだ独法の運営費交付金の増額等を求める団体署名1,619と、儀我壮一郎氏(大阪市立大学名誉教授)、後藤俊夫氏(中部大学副学長)、宇都宮健児(弁護士・反貧困ネットワーク代表)など学者・有識者からの賛同アピールを手交し、「運営費交付金の削減により、各法人の業務の遂行が困難になっている。一律的・一方的な削減をやめ、必要な運営費交付金の増額をはかるべきだ。また、総人件費削減は、例えばポスドク問題に顕著に見られるように、日本で安定雇用が得られないため、若手研究者が海外流出せざるをえないような事態になっている。人件費をきちんと担保することは、研究機関独法のみならず日本社会の未来がかかった問題だ。必要な増員を含め、総人件費の増額を求める」と、要請書(別添)の趣旨を強調しました。
つづいて、それぞれの代表から要旨以下の要請が行われました。
<学研労協(池長議長)> 科学技術全体の予算は増えているが、研究機関独法の基盤的経費である運営費交付金は毎年削減されている。これは、それぞれの研究機関独法のミッションに一切関係なく一律的に削減されている。外部資金を取れと言われるが、外部資金ではパーマネントの職員は雇用できないわけだから、ポスドクや任期付の不安定雇用が増え、パーマネントの研究者も研究支援部門の職員も減り、研究機関独法の運営は困難になっている。研究開発力強化法も限られた時期の任期付研究者だけに適用されるもので、あまり有効ではない。とりわけ、ポスドクは、将来の雇用が保証されない不安定な状態にあるとともに、プロジェクトのテクニシャンとして雇用しているのだから研究論文を書くことも制限されるケースもあるなど、研究者の実績という点でも将来につながらない使い捨て状態に置かれており、ポスドク問題の改善をはからなければ研究の未来もない。それから、つくばではポスドクの公務員宿舎への入居が認められているが、今中期目標限りとなっている。ポスドクが担っているプロジェクトの期間はまちまちで中期計画と同じではない。今中期目標という期限をはずしてもらいたい。
<産総研労組> 連年の運営費交付金削減は、研究関連・管理部門の人員と予算の削減でこれまで対応せざるをえなかったが、それも限界となり、とうとう研究費の2割カットに及び、基礎研究が危機的な状態になっている。たまたま補正予算でポスドクの大量解雇を今年度はまぬがれたが、補正予算が来年度も続く保証はないわけで、来年度の第3期中期計画がスタートした途端、ポスドクの大量解雇が発生する危険が強くなっている。運営費交付金の増額をはかるべきだ。
<特殊法人労連> 不況のもと奨学金の申請が殺到し、昨年の2倍になっている。ところが、運営費交付金の削減で、無利子貸与の奨学金を増やすことはできず、奨学金を受ける資格を満たしているのに78%が受けられなかった。生活保護の状態でも奨学金を受けられない事態にまで立ち至っている。満足な教育も受けられない子どもの貧困がいま社会問題化するなか、奨学金に対する運営費交付金をいますぐ増額すべきだ。
<全運輸> パイロットの慢性的な不足で定期便の航空機が長期間運用できない実態となっている。航空大学校はパイロットの養成を行っているが、原油価格の高騰等で訓練機による十分な訓練も困難になってきている。国民の安全を守るためにも運営費交付金を増額し、優秀なパイロットの養成をはかれるようにすべきだ。
<全医労> 医師不足が社会問題となるなか、医師(女医)・看護師を確保するという観点からも院内保育所の充実は大切になっている。ぜひ運営費交付金を増やしていただきたい。また、看護師等養成所は国立病院が独法化された2004年と比べて授業料が2〜3倍になっている。看護師養成所の授業料は04年20万円から09年36万円に、作業療法士の養成所の授業料は04年28万円から09年70万円になっている。人材養成が課題となっているのに問題だ。運営費交付金を増額し改善いただきたい。また、重症心身障害や神経難病、結核などの政策医療の充実、新型インフルエンザへの対応などのために運営費交付金を増やすことが必要だ。加えて、来年度独法化される国立高度専門医療センターも政策医療を担っており、運営費交付金の十分な確保を求める。そして、医療問題が危機的な状況になるなか、人員の確保が必要になっている。一律の総人件費削減はあらためるべきだ。
<全経済> 製品評価技術基盤機構は、相次ぐ製品による事故等への対応が求められている。しかし、毎年1%の人員削減などが押しつけられており、選択と集中をせざるを得ず、新規業務以外の既存業務は大幅な削減を強いられている。各独法は、それぞれの小さな枠の中で運営費交付金と人件費の一律削減を強いられているため、国の機関の中にいたときよりも独法化されて以降の方がはるかに困難な運営になっている。そういう点もきちんと見て、運営費交付金を増額する必要がある。
<統計センター労組> 人員削減に加えて、業務の高度化と効率化が求められ、職員は疲弊し、正確な統計調査結果を保つのも限界になってきている。それなのに、経済センサスは地方でやっていたものもすべて国でやることになり、業務量は限界を超え、民間開放を進めざるを得ない状況だ。しかし、民間開放は事務が複雑でさらに業務が煩雑化しているのが実態だ。国勢調査や経済センサスなど各省統計の母集団となるものを正確に早く提供するために、運営費交付金と人員の拡充を求める。
こうした現場の実態をふまえた切実な要請に対して、財務省側は、「個別の指摘については関係部署に伝えておく。いま財政健全化をはかるため、独法に限らず、あらゆる手立てをつかって経費の削減を進めている。しかし、運営費交付金を一律的に削減していると言われるが、個別の独法に特段な事情がある場合は、それに対応できるスキームになっている。現に政策係数を確保している独法もある。そもそも独法の中期計画時に各省庁も含め決めていくわけで、財務省が頭ごなしに一律削減を押しつけているわけではない。財務省は各独法の所管省庁に対応しているわけで、個別の独法で困難な状況がある場合は、所管省庁にきちんとつなげていただきたい」と述べるにとどまりました。
その後、財務省と意見交換を行い、最後に秋山書記次長は各独法が国民の安全・安心をささえる役割を果たしていることを強調し、運営費交付金の増額等を重ねて要請し終了しました。
2009年7月29日
財務大臣 与謝野 馨 殿
日本国家公務員労働組合連合会
委員長 宮垣 忠
特殊法人等労働組合連絡協議会
議長 岩井 孝
筑波研究学園都市研究機関労働組合協議会
議長 池長裕史
独立行政法人の運営費交付金の増額等を求める要請書
貴職の日頃からの国民の安全・生活向上に対するご尽力に敬意を表します。
さて、独立行政法人や国立大学法人の財政を支える運営費交付金が、毎年一律的・一方的に削減されています。
独立行政法人の運営費交付金は、一般管理費と業務管理費に区分され、一般管理費は毎年3%、業務管理費は毎年1%削減されています。
元々、2001年に中央省庁再編と同時に創設された独立行政法人は、「国自らが直接実施はしないが、民間にゆだねた場合必ずしも実施される保障の無い業務」を担い、業務運営においては「自主性は十分配慮される」とされていました。ところが制度発足から8年を経過し、予算や組織、人員、人件費などについて自主性はほとんど認められていない実態となっています。2007年12月に閣議決定された独立行政法人整理合理化計画では、国からの財政支出の削減や給与水準の適正化も盛り込まれました。
特に問題なのは、独立行政法人や国立大学法人における連年にわたる運営費交付金の削減により、国民の安心・安全を守り社会基盤を支える独立行政法人の業務遂行に支障をきたし、また国立大学法人では教育や研究の質の低下をまねいていることです。
また、独立行政法人や国立大学法人の人件費についても、行革推進法によって2006年度から5年間で5%の削減が強要されています。そのため慢性的な人員不足となり各法人の業務遂行に大きな足かせとなっています。更に正規職員が採用されず、組織の将来が危ぶまれる法人もあります。任期付研究員においては、2009年度より5%削減からの適用除外の措置が講じられるようになりましたが、不安定で劣悪な研究労働条件に置かれているポスドク問題を解消するものではありません。任期付研究員が増え、研究所によっては過半数に及ぶなど研究の継続性が阻害され、研究員自身の人生設計にも問題が生じています。
以上のような状況を踏まえ、貴職に対して下記のことを要請します。
記
1、独立行政法人の運営費交付金については、一律的・一方的な削減をやめて、法人の運営に支障が生じないよう必要な予算措置を図っていただきたい。
2、業務運営の実態に応じた必要な増員を含め、総人件費の増額を認めていただきたい。
以上
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