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国公労連速報 2009年8月26日《No.2221》
【社会保険庁改革対策委員会ニュースNo.76】
     
 

 

日本年金機構の設置凍結を
国公労連、全厚生が各野党に要請


 国公労連と全厚生は8月12日、国民生活のセーフティネットであり、老後の命綱である公的年金の安定的・専門的な運営を確保し、当面、年金記録問題の解決に全力をあげるべきとの立場から、民主党、共産党、社民党、国民新党に対して「日本年金機構の設置の凍結を求める要請」を行いました。
 年金機構の設置凍結を求める要請にあたっては以下の三点を強調。(1)膨大な年金記録の整備統合や再裁定業務があるにもかかわらず、現行組織に比べて大幅に削減した人員体制のもとでの対応を基本とする日本年金機構では解決できないこと、(2)基幹業務も含めて民間委託を大幅に拡大する日本年金機構では、膨大な個人情報の管理や安定的な運営は困難であること、(3)業務は引き継ぐにもかかわらず社会保険庁職員の雇用は継承しないとしているが、記録調査や再裁定処理はとりわけ専門的な知識と経験が不可欠な業務であり、業務に習熟・精通した職員が求められること、などを申し入れました。
 こうした申入れに対して民主党、社民党、国民新党は要請書を受け取り、「党として検討する」と回答しました。また、共産党は、「日本年金機構は、消えた年金、消された年金問題を解決しなければならない国の責任も放棄してしまうもの。2010年1月からの社会保険庁の解体・民営化は中止し、これまで繰り返し政府が国民に約束してきたように、最後まで国の責任で解決するにふさわしい体制をとることを求めています」とコメントしました。


○○党 殿

日本国家公務員労働組合連合会
中央執行委員長 宮垣 忠
全厚生労働組合          
中央執行委員長 飯塚 勇

日本年金機構の設置凍結を求める要請

 社会保障制度の拡充にむけた貴党のご奮闘に敬意を表します。
 さて、公的年金業務を運営してきた社会保険庁を廃止し、年金業務を継承する日本年金機構(民間型・公法人)の発足まで5カ月を切りました。私たちは、国民生活のセーフティネットであり、老後の命綱である公的年金の安定的・専門的な運営を確保するためにも、日本年金機構の設置は凍結し、当面、年金記録問題の解決に全力をあげるべきだと考えます。
 その理由の第一は、国民的課題である5000万件の「宙に浮いた年金」をはじめとする記録の整備統合や、いまだに終わりが見えない再裁定業務が日本年金機構で解決できるのか、疑問です。
 記録問題では、今後予定されている8億5千万件の紙台帳との照合・補正には数年かかるとの指摘もあります。日本年金機構は、現行組織に比べて大幅に削減した人員体制のもとでの対応を基本としていることから、いっそうの混乱は避けられません。派遣労働者や請負業者による記録問題対応は、現在でもその非効率さが指摘されており、民間委託は混乱を大きくするだけです。
 第二は、日本年金機構は、基幹業務も含めて民間委託を大幅に拡大するとしていますが、膨大な個人情報の管理と専門性が求められる年金業務の安易な民間委託では国民の信頼を回復することは困難だということです。
 国民年金保険料の納付率改善のために民間のノウハウを活用するとして導入された収納業務の「市場化テスト」ですが、ほとんどの社会保険事務所で納付率が低下し、08年度は過去最低となりました。しかし、「コストが削減された」ということのみを強調し、さらなる民間委託の拡大が進められています。
 年金情報には、国民の職歴・年収・配偶者情報、受給者の年金額や金融機関情報など重要なデーターが管理されています。民間委託は、こうした業務を行なう業者や従業員が競争入札によって数年ごとに入れ替わることを前提とするものであり、安定的な運営はできません。年金記録問題以上の重大な事態が危惧されます。
 第三は、業務は引き継ぐにもかかわらず社会保険庁職員の雇用は継承しないことから、年金機構では業務運営の安定性、専門性が懸念されることです。この間の社会保険庁改革によって既に6000人近くの正規・非正規職員の削減が行なわれてきましたが、年金機構発足に伴ってさらに1000人もの職員が排除されようとしています。民間からの採用内定も報道されていますが、記録調査や再裁定という現下の課題は、とりわけ専門的な知識と経験が不可欠な業務です。公的年金に対する国民の信頼を回復するためには、業務の正確な運営が不可欠であり、そのためにも業務に習熟・精通した職員が求められます。
 いま、民間開放・規制緩和を中心とする構造改革により、格差と貧困が拡大しているなか、老後の支えである公的年金の拡充を求める国民の声はますます高まっています。安心して暮らせる年金制度の実現と国の責任による安定的な運営は国民の願いです。
 厚生年金のモデルとされているドイツの連邦年金保険庁国際担当局長のユルゲン・マイヤーコート氏は、「私たちの組織は公的なものであり、利潤追求を目指していない。それゆえに加入者からは民間の保険や銀行より高い信頼を得られていると思う。日本の社保庁が、民間の組織として再出発するのは理解しづらい面もある」(08年11月7日付朝日新聞)と指摘しています。また、社会保険庁の最高顧問を務めた堀田力弁護士は、「与党案は、首がネコで胴体が犬のようなもの。どこも責任をとらない仕組みになっている。やめた人でも責任を負うようなルール作りをしないとだめ」(07年6月20日付毎日新聞)と問題を投げかけています。
 公的年金の空洞化も深刻です。法人事業所は強制適用であるにもかかわらず任意加入に近い適用状況であり、加入事業所のうち1割が保険料の滞納事業所となっています。また、国民年金保険料が過去最悪の納付率となっている実態などをどのように解決するのか、その方向性もなしに単に組織を変更しても、安心・信頼の年金制度は実現しません。
 国の責任と国民の権利を曖昧にする日本年金機構の設置は凍結し、年金記録問題の解決を最優先するとともに、制度と組織の在り方については国民的な議論が行なわれるよう、貴党の特段のご尽力をお願いいたします。

以上

 
 
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