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「地域主権戦略大綱」の閣議決定にあたって(談話)
     
 

 

2010年6月22日
日本国家公務員労働組合連合会
書記長 岡部勘市

 菅内閣は本日、「地域主権戦略大綱」を閣議決定した。「大綱」は、「第1 地域主権改革の全体像」から「第10 緑の分権改革の推進」までの構成で、主な柱は「義務付け・枠付けの見直しと条例制定権の拡大」、「基礎自治体への権限移譲」、「国の出先機関の原則廃止」、「ひも付き補助金の一括交付金化」となっている。
 「大綱」は国公労連がこれまで主張してきた、国が行うべき国民に対する最低限の生活や権利の保障を投げ捨て、公務・公共サービスの後退を招く「地域主権改革」の全体像を示したものである。さらに、「地域住民が自らの判断と責任において地域の諸課題に取り組む」と称して、地域住民に自己責任を押しつけ、地域間格差が生じても「住民による選択と責任」を理由に国の責任放棄を肯定化している。国民主権や地方自治の本旨などを規定した憲法に抵触する極めて危険な内容となっている。

 「義務付け・枠付けの見直しと条例制定権の拡大」では、国が法令により地方自治体の条例で自主的に定める余地を認めていないものを見直して、地方自治体の条例制定権を拡大し、自主性を強化し政策や制度含めて自由度を拡大するとしている。
 しかし、教育や保育、福祉など地方自治体が提供する住民サービスについて、国が定めた最低基準を撤廃し、地方自治体がそれぞれ条例で定めることは、財政力等の地域間格差によって住民サービスの低下が危惧される。

 「基礎自治体への権限移譲」では、住民により身近な基礎自治体に事務・権限を移譲していくことで、基礎自治体がより自主的かつ総合的な行政を担えるとしている。
 「構造改革」による三位一体改革によって地方交付金は大きく削減され、地方自治体は深刻な財政難に陥っている。さらに、「平成の大合併」によって基礎自治体といわれる市町村は広域化による弊害や財政難など問題は山積みしている。自治体のこうした問題解決なくして、事務・権限を移譲しても、「自主的かつ総合的な行政」は絵に描いた餅で、むしろ、ますます地域の疲弊が増幅するだけである。

 「ひも付き補助金の一括交付金化」では、「ひも付き補助金」を廃止して基本的に地方が自由に使える一括交付金にすることで、財政的観点から地方自治体の自由度を拡大するとしている。
 「ひも付き補助金」の大半は社会保障や義務教育の費用である。全国画一的な保険・現金給付に対するものは一括交付金の対象外としているが、国家財政難の中で、社会保障・教育の予算が削られる可能性は否定できない。一括交付金の総額が縮減されれば、地方自治体によっては優先度、緊急度などにより社会保障や義務教育関係が後回しになることが懸念される。

 「国の出先機関の原則廃止」では、国の出先機関の事務・権限の地方自治体への移譲など抜本的改革を進め、地域における行政を地方自治体が自主的かつ総合的に実施するとしている。人員の移管等の取扱いは、総合的調整を行う国と地方の関係者で構成される体制を整備し、枠組み・ルール等を構築するとしている。各府省は、所管する出先機関の事務・権限仕分けを自ら行って、本年8月までに地域主権戦略会議に報告することとし、その結果を踏まえて移譲等の取扱方針およびその実現に向けた工程やスケジュール並びに組織のあり方についての「アクションプラン(仮称)」を年内に策定するとしている。
 国の出先機関は、地方・地域で国民の安心・安全を確保し、国民だれもが等しく享受できる住民生活に不可欠な行政サービスを全国で提供する重要な役割を果たしている。出先機関の原則廃止や事務・権限の移譲は、全国一律に平等、公正、継続性をもって提供されてきた必要不可欠な行政サービスが後退する恐れがある。そのことは、基本的人権の侵害に繋がりかねない。
 「アクションプラン(仮称)」について、先に行われた国の出先機関改革の「公開討議」における地方自治体側と所管府省側との意見が平行線であることを踏まえるならば、地方移譲や廃止等を前提とせず、出先機関が地方で果たしている役割を十分に検証することがまずもって必要である。同時に、職員の身分・労働条件に重大な影響を及ぼすことから、当事者たる国公労連との誠意ある交渉・協議を行うとともに国が雇用に責任を持つことは言うまでもないが、一方的な検討と閣議決定に厳しく抗議する。

 私たち国公労連は、国民の生活および権利保障としてのナショナルミニマムに対する国の責任放棄を許さず、憲法をくらしと行政にいかすため、「地域主権改革」がもたらす問題を広範な国民・地方自治体と共有しながら、国民本位の民主的な行財政・司法の確立にむけて奮闘していく。

以上

 
 
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