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談話
 政府の一方的かつ前代未聞の人件費削減通告に断固抗議する
 10年人事院勧告の取扱いに関する閣議決定にあたって(談話)
     
 

 

2010年11月1日
日本国家公務員労働組合連合会
書記長 岡部勘市

 政府は本日、8月10日に出された人事院勧告の取り扱いについて、勧告どおり改定するとした一方、「(自律的労使関係制度の)実現までの間においても人件費を削減するための措置について検討し、必要な法案を次期通常国会から順次提出する」などとする閣議決定を行った。
 国公労連は、政府による一方的かつ前代未聞の人件費削減通告に満身の怒りを込めて抗議する。政府・使用者が労働条件決定に直接関与しようとするのであれば、直ちに争議権を含む労働基本権を完全に回復し、労使対等の労働条件決定システムと関連諸制度の整備に向けた交渉・協議を開始することを要求する。

 前段の「完全実施」は、「人勧制度は公務員の労働基本権制約の代償措置の根幹をなすものであり尊重する」という政府の基本姿勢からすれば当然の帰結であるが、本年の勧告には重大な問題点を含んでいることから、国公労連としては容認しがたい。
まず、第一に今年の勧告は、職員の生活や労働の実態を何ら顧みない2年連続の賃下げであるばかりか、職務給の原則に反し年齢差別である55歳を超える職員の賃金減額措置を盛り込んでいることである。
 第二に、こうした労働条件の不利益変更となる制度改変であるにも関わらず、人事院が納得し得る根拠やデータを開示しないため、誠実な交渉・協議が尽くされておらず、労働基本権制約の代償に値しない勧告である。
 第三に、一向に回復の兆しすら見えない厳しい経済社会情勢のもとで、勧告の影響を直接受ける580万労働者のみならず、公務員の賃金切り下げが経済の縮小、賃下げのスパイラルを加速させ、地域経済にも多大なマイナス効果をもたらすことになる。
 なお、非常勤職員に対する育児休業の適用などに関する意見の申し出にもとづく法改正は、この間求めてきた均等待遇・処遇改善に向けて一歩前進となるものであり、早期の実現を求める。

 後段の「人件費削減措置」は、国家公務員人件費2割削減という政権公約のもと、民主党PTで人事院勧告以上の賃下げ検討が行われ、代表選挙で菅首相も「(勧告の)さらなる切り下げを行う」との公約を掲げたことに加え、「ねじれ国会」のもとで自民党やみんなの党の人件費削減法案提出の動向とも関わって、「見通し」を示すことが必要との判断が働いたものと思われる。
 しかし、これは「自律的労使関係制度」の構築とは相容れない。閣議決定という最高権力による一方的な労働条件切り下げ通告であり、今後、現行人事院勧告制度は無視するということに他ならない。そもそも「自律的労使関係制度を措置する」などという表現に象徴されるように、労働基本権を憲法に保障された労働者の人権としてとらえるのではなく、立法政策上の制度として発想してきたことに問題の大本がある。
 国公労連は、公務・公共サービスの安定的提供と民主的公務員制度の根幹を歪め、公務員労働者の権利を踏みにじるこうした暴論を到底認めることはできない。
 付言すれば、国の財政赤字の原因は公務員の人件費ではない。政府の資料でも明らかなように、日本の人口1,000人あたりの公務員数は先進諸国で最も少なく、公務員賃金はこの10年間平均年収ベースで70万円以上も切り下げられている。しかしその一方で、国の借金は2倍以上にも増え続けている。これは、日米貿易の不均衡是正を目的として行われた構造協議にもとづく630兆円もの公共投資拡大と、アメリカの「年次改革要望書」に応えて強行してきた各種の規制緩和など、この間の「構造改革」路線にその根源があると言わなければならない。

 昨今「行政の無駄」排除が声高に叫ばれ、国税庁の民間給与実態調査結果との対比で公務員賃金の切り下げを求める主張が繰り返し行われているが、消費税増税をはじめとする国民負担の増大に向けた地ならしとしての世論誘導であることは明らかである。公務と民間労働者、国民を分断する狙いを見抜かなければならない。
 国公労連は、富を蓄積し続けている大企業の内部留保を社会的に還元させ、労働者の雇用拡大・賃金引き上げで内需拡大を図ること、そして税の応能負担原則を貫き、再配分機能を高めることが優先されなければならないと考える。
 今臨時国会における給与法「改正」法案に反対の立場を堅持するとともに、引き続く秋季年末闘争において「賃上げと雇用の安定で内需拡大と貧困の解消」をめざす国民的運動の発展に力を尽くす。同時に、いかなる形であれ「人件費削減措置」の具体化を許さず、国民生活の改善に向けた来年度予算の編成とするため、全力をあげる決意を表明する。

以上



 
 
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