全労連公務部会と非正規センターは3月13日、「これでいいのか!公務・公共サービス なくせ!官製ワーキングプア告発集会」を全労連会館ホールで開催し86名が参加しました。
「官製ワーキングプア」といわれる公務職場における臨時・非常勤職員や、民間委託労働者の実態を告発し、今年で3回目となる集会は、参加者の発言で公務・公共サービスを支えているさまざまな職場からリアルな実態が浮き彫りにされるとともに、住民生活をはじめ社会に貢献したいとの思いも語られ、雇用や賃金、労働条件の改善を勝ち取る決意を固め合いました。
国がワーキングプアをつくりだしているリアルな実態が報告
集会は、全教の吉田書記次長と非正規センターの井筒事務局長の司会で始まりました。はじめに公務部会山口代表委員は主催者のあいさつで、「規制緩和のもと正規から非正規へおきかえる労働者の使い捨を許さず、国をはじめ自治体の多様な実態を告発しようと」訴えました。
全労連公務部会の蟹沢臨時・非常勤専門委員長の問題提起では、公務職場における臨時・非常勤職員の実態と課題が報告され、ワーキングプア根絶にむけて、国民・住民にとって公務・公共サービスを充実させるには、正規の職員を抜本的に増やすことや、制度を見直し雇用の安定や均等待遇などをはかる法整備の整備、労働者の適正な雇用・賃金・労動条件確保のため公契約法・条例の整備が必要であり、当面、最低賃金1000円以上、労働者派遣法を抜本的に改善し、働くルールを確立することが呼びかけかれました。
続いて2人の特別報告を受け、自治労連の柴田英二副委員長は「イギリス公契約」運動の調査を報告し、鈴木蔵人生協労連書記長が民間における非正規労働者の組織拡大について報告しました。
これをうけて実態の報告・質疑討論に移り、16人からそれぞれ切実な状況が報告されました。
(1)民事法務協会労働組合
約40年間法務局の登記業務を担ってきた財団法人民事法務協会が、構造改革の名のもと国家公務員の定員削減の方策として民間へ門戸を開き、「市場化テスト」による競争入札が行なわれるようになって今年で3年目を迎えている。
多くの民間業者が落札参入し、民事法務協会職員の大量解雇・失業が発生している。2009年3月には非正規職員400名の雇止め、正規職員約200人が通勤可能な職が場ないため不本意な退職をしいられている。国民の財産や身分の関係の保護にかかわる重要な業務を競争入札の対象にさせてはならない。
(2)日本総合サービス労組(国土交通省車両管理員)
国土交通省の車両管理の仕事をしている。日常業務が民間委託され民間人でありながらみなし公務員となっている。災害の対応など職員としての意識の共有をはかりってきたが、21年度の入札において予定価格の4割減となり、1400人が仕事を失い月7〜8万円の賃下げで年収が200万円を割った。
これまでも15万円では生活できないと会社と交渉するため組合を結成し、1年がかりでたたかってきた。今度はダンピング競争で22年度の業務を落札できなかった。
命を預かってハンドルをにぎり長年培ってきたもの、プライドをもって業務に就くために競争入札制度の改善で労動者を路頭にまよわせてはならない。
(3)国立病院院内保育所の保育士
厚生労働省の国立病院が2004年に独立行政法人に移行し、中高年職員の賃金引き下げ、賃金職員全員解雇などがおこった。院内保育所の職場は、法人移行時に全員解雇され全国一括採用となった。一夜明けてピジョン鰍フ有期雇用になり月収20万円以下に下がった、このような退職か賃下げを選択させる厚生労働省を許さないと裁判で係争中だ。
営利目的ではなく病院直営で、安心して働き続けられるよう子どもたちと保護者と取り組みを進めていく。
(4)大阪自治労連
大阪茨木市は、学童保育の指導員の仕事に「3年で雇い止め」の「任期付短時間職員制度」を導入し、しかも採用試験で現職の指導員16人を不合格にした。当局のルール変更で余儀なくされたものだが、より高度で社会的責任を負うべき仕事であり、学童保育や共働きの家庭にかかわる大事なことだ。経験を蓄積した指導員の存在は子どもの発達に欠かせない。非正規労働者の待遇改善、任期付職員制度の反対、大量解雇を許さず、社会的なたたかいとして、職員の姿を浮き彫りにしていく。
(5)全国税 東京地連
東京・四谷税務署は昨年12月16日に、同署の非常勤職員4人に対して、12月18日を最後に不採用とする旨の雇い止めの文書を渡した。1月〜12月の採用期間であり、1月から4月末まで確定申告でとても忙しい時期になる。手紙をうけとった職員が全国税四谷分会へ駈け込んで来て、国公一般の支援もえながらたたかってきた。全国で6500人の非常勤職員が雇用されている。税務署の非常勤職員の3カ月の更新撤廃、非常勤職員の処遇改善を求める。
(6)郵産労本部
非正規雇用労働者の正社員化と均等待遇実現に向けて2010年春闘たたかっている。郵政職場では213,000の非正規社員が雇用不安のなかで働いている。国会議員要請や「意見書」を作成して問題をつきつけてきた。政府のヒアリングや政策会議にも呼ばれ、亀井郵政担当大臣は12日の予算委員会で12万人の正社員化を表明した。
郵政民営化になってようやく改正パート法が適用されることになった。3月17日に回答指定日を設定し3月18日のストライキを構え、小泉構造改革にもたらされた非正規労働者の均等待遇や民営化の見直しにむけて奮闘する決意だ。
(7)自治労連千葉県本部 野田市学童保育員
09年6月に野田市は11カ所の学童保育園を民間委託し、指導員を非常勤化した。組合と保護者は一方的に進めることに対して追求したが、2月に試験実施された。引き続き職場にいられる保証はなくなり、学童保育の現場において雇用が継続されないとやっていけない。
野田市長は、公契約条例を全国で初めて制定したが、一方では住民の無視の実態を訴えたい。
(8)滋賀自治労連 高島市職労
滋賀の高島市では168人の大量解雇が生じた。これは2009年の総務省通達を市は曲解して、嘱託職員にしか適用できないとおし進めてきたものだ。
子どもたちとかかわる職場なのに、100人からの人間を入れ替えることを、自治体が率先してやっている。この国の民主主義を民意で動かそう。
(9)埼玉県教職員組合(埼高教)
全国の臨時教職員、非常勤講師の数は20万人に及んでいる。埼玉県では定数内臨時教職員数は高校では400人、特別支援学校では500人と増加している。埼高教臨時教職員対策部では、雇用の確保をめざして毎年1月から任用を「希望する教職員名簿」を分会に配布し、2月は非常勤講師、3月は常勤の希望者の着任をめざして日々奮闘している。
次年度から校長の推薦があれば臨時教諭の同一校3年の継続可能という大きな成果も勝ち取った。
(10)公共一般 東京都足立区花畑図書館
足立区の指定管理者制度のもと1年任期で図書館の館長を務めたが「残業が多い」として解雇された。
これはバス会社が図書館運営を受託し、会社が自治体に提出した業務計画書を忠実に遂行しようとして残業をしたところ、残業が多いとして解雇されたものだ。地域の図書館は子育て拠点として何十年も児童サービスをしてきたのに切り捨ては認められない。東京地裁に提訴中だ。
(11)東京公共一般
臨時・非常勤職員の賃金・労働条件は劣悪だ。問題なのは恒常的に公務職場の仕事に更新回数や再応募の制限を持ち込んでいることにある。撤廃にむけてがんばりたい。
(12)経済産業省 特許庁
年収160万円しかなく、ダブルワークが必要。3年の雇止めを無くしてほしい。健康診断の実施や特許庁の療養所施設を使わせてほしい。5割が非正規を超え、改善をもとめている。
私は5月20日までしかいられないが、横のつながりが重要だと思う。要求を勝ち取り、ささえあうために組合の役割は大切だ。
(13)国土交通省国道事務所
国土交通省の出先機関で事務補助の仕事をしている。前は民間会社に勤務していたが、賃金は民間の半分になった。国で働く非常勤職員はさまざまなハラスメントを受けている実態もある。機械の部品ではない。公務員だけがあぐらをかいているわけではない。地方整備局がなくなっても道路の維持管理は必要だ。政府や国の機関の役目として逆行しているのではないか。
(14)国土交通省港湾空港整備事務所
3年の雇用期間が切れて今月末で雇止めになる。昨年もこの集会に参加し、さまざまな状況におかれた方たちの話に胸がつまった。今日を生きるために命を削っている人々の声を聞き、やりがいを持って働くことを考えさせられた。官民を問わず公務における非常勤職員に厳しい定員削減のなか、官製ワーキングプアは、公務・公共サービスの低下を招く。安心して働き続けられるようにしたい。
(15)さいたま市サポート臨時教員補助員
担任の先生をサポートして1・2年生に算数を教えている。1日に5時間勤務だが、朝の会議や午後の職員会議にも出ている。時給1200円で、5年前から生活保護を受けながら教師を続けている。身分や将来の不安を訴えながら教壇に立つのは厳しい。
(16)長野県立高校
長野県の高校には300人の臨時教員がいるが、担任も任されるし、非常勤講師は正規職員がの行きたがらないところにやられる。非常勤講師は1年の契約だ。次の契約の間7日間を開けないといけないが、引き継ぎのため出ている。処遇改善を求める。
労働組合があってこそ運動がすすむ
さまざまな報告をうけて公務部会の黒田事務局長は、全国一律最賃、労働者派遣法の抜本的な改正など重点課題も訴えながら、「16人の素晴らしい発言で過酷な実態があらためて明らかになり、国や自治体が官製ワーキングプアをつくり出していること。また公務・公共サービスの質の低下で国民の安心・安全がおびやかされている状況が明らかになった。理不尽な攻撃に屈さずねばりつよくたたかわれてきている。ひとりひとりが地域に足を出していくことが大事だ。そのために労働組合の必要性も発言から明らかとなった。ねばり強くたたかっていこうと」呼びかけました。
本日の集会アピールを採択し、非正規センター小松副代表(全労連副議長)は「官製ワーキングプアの実態が明らかになり、本集会をとおして喫緊の課題も明らかになった。5月22・23日には非正規ではたらくなかまの全国交流集会を開催する。昨年の600名を上回る成功を呼びかけ、春闘の山場を迎えているなか、国民と連帯しともに奮闘しよう」と呼びかけて終了しました。(公務ネットニュースNo.831より転載)
以上
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