通常国会に提出されている国家公務員法「改正」法案等は、4月14日の衆議院内閣委員会で約7時間の審議がおこなわれました。
質疑では、自民党の中川議員から修正協議を求める意見が出されるなど、9日から本格審議がはじまった法案審議は、民主・自民の両党間での水面下の動きを強めており、きわめて重大な局面をむかえています。
今後、16日の内閣委員会の審議ののち、来週20日には参考人質疑が予定されており、引き続き傍聴行動に取り組んでいきます。
審議2日目で早くも密室での「修正協議」を持ち出す自民党
14日の内閣委員会では、小泉進次郎・中川秀直・橘慶一郎・平井たくや(以上、自民)、中島正純(民主)、浅尾慶一郎(みんなの党) 、高木美智代(公明)、塩川鉄也(共産) の各議員が質問に立ちました。
この日の質疑も、9日に続いて政府法案、自民党・みんなの党共同提案による法案が一括して審議され、自民党やみんなの党からは、政府法案の「欠陥」を追及する質問が目立ちました。
そうしたなか、自民党の中川議員は、政府法案の修正について「理事会において、与野党協議を正式に提案している。強行採決にならないように期待したい」とのべるなど、法案審議がはじまったばかりにもかかわらず、水面下の動きを強めていることは重大です。
中川議員は、総務省の任務として内閣総理大臣を補佐することが定められているが、今後、内閣人事局が総理大臣を補佐して適格性審査や幹部候補者名簿を作成するならば、「二重行政」になってしまうと指摘し、「政府法案は、条文として体をなしていない」と切り捨てました。そのうえで、「これらの不備については、いずれ与野党協議のなかでも判断してもらわなければならない」などと主張しました。委員会審議を無視した民主・自民による密室協議は断じて認められません。
この日の審議では、前回の委員会に続いて、幹部職員の適格性審査などを通して、政治の力による恣意的な人事がまかり通るようになるという点が各議員から指摘されました。
民主党の中島議員からの「恣意的な人事を排除するために、適格性審査はどのような基準にもとづいておこなうのか」との質問に対しては、政府側は、「標準職務遂行能力を基準にするが、実際の当てはめの際には、民間有識者等にもかかわってもらいながら、公平・中立なものになるように仕組みをつくる」(階総務大臣政務官)と考え方をのべました。
また、事務次官から部長級までをひとまとめにして、「転任」と称して事実上の降任を可能にさせる制度について、中島議員が、「事務次官が局長や部長に転任となれば、本人がそれを受けいれずに辞職する場合もある。そうなると事実上の退職勧奨だ」と指摘すれば、仙谷公務員制度改革担当大臣は、「そうした場合がたまに出てくるかもしれないが、退職勧奨の意図をもって人事がおこなわれることは考えていない」などとあいまいな答弁に終始しました。
「降任人事が『転任』で落ち着くのか」と人事院総裁が懸念表明
自民党の橘議員は、人事院の江利川総裁に対して、「次官が局長・部長になるような人事異動を、降任と言わずに転任ということでいいのか」と見解を求めました。
江利川総裁は、「この法律改正が通ると、その異動は国家公務員法上は転任だ」と一般論をのべつつも、「例えば局長から審議官への人事が、転任であるとすっきり落ち着くのか。降任人事と受けとめられる可能性は残る」との懸念を示し、その上で、「人事評価の公正性が担保されることとともに、本人をふくめて全体として納得性のあるものとなることが大事だ」と問題提起しました。
公明党の高木議員は、「『国民全体の奉仕者』を定めた憲法15条や国公法96条の規定を根拠にして、公務員の公正・中立性を確保すべきだ。情実人事や、恣意的な人事が起こるのではないかという懸念に十分応える制度が必要だ」とのべたことに対して、仙谷大臣は、「恣意性が入ったり、公正さに欠ける人事がないように、官房長官や総理大臣が心して協議する責任があると思っている」と考え方をのべ、一方、自民党案提出者の塩崎議員は、「次官から部長級までを同一職階にして、標準職務遂行能力を一つにそろえるというやり方はおかしい。これでは情実人事がおきてしまう」とのべ、一般職と切り離して「幹部職国家公務員」をつくる自民党案は、「能力主義と内閣との一体性で判断していく点で、政府案よりも優れている」と強調しました。
労働基本権にかかわっては、前回につづいて公務員総人件費削減と結びつけた質問がたびたび出され、自民党の小泉議員は、定員や給与を減らすため、「内閣人事局に総務省、財務省、人事院の機能を移管すべき」と主張したことに対して、仙谷大臣は、「労働基本権を付与することによって、交渉を通じて給与水準などを変える制度にすべきである」と応じました。
高木委員も、「労使交渉によって総人件費削減が期待できるのなら、法案の中に給与法の改正、退職手当等の改正など総人件費抑制策を、今後の検討項目としてきっちりと盛り込むべきだ」と要望すると、「今後、労働基本権を付与し、労使交渉を法定化する。言われているような勤務条件も、労使交渉の対象となる」と答弁しました。
「抜け道」をつくり、防衛省・自衛隊の「天下り」あっせんを推進
「天下り」あっせんの禁止をめぐって、中川議員は、野党時代に民主党が、官民人材交流センターを「天下りバンク」と呼んだり、「公務員も民間と同じようにハローワークに行け」と主張していたのに、新たに「適正化センター」をつくるのかと、政府を追及しました。仙谷大臣は、「組織改編によって最後には分限免職するとしても、それを回避する努力が必要だ。適正化センターは、分限免職を回避する努力の一つの姿を示したものだ」などと答弁しましたが、一方で、実際に500人を超える社保庁職員の分限免職が強行されたことへの政府の責任には、いっさい言及がありませんでした。
共産党の塩川議員は、政府案について、「民主党の政策は、天下りに甘い、かつての自民党と同じになってしまったと指摘せざるを得ない」とのべつつ、自衛隊法が「改正」された後でも、特別職である自衛隊員には、防衛大臣が再就職先をあっせんできるとする「抜け穴」を追及しました。
塩川議員は、防衛省から三菱重工などの軍需企業に数多くの天下りが繰り返され、そのことが航空自衛隊による官製談合事件などをまねいているとして、ただちにあっせんを禁止するよう求めました。
これに対して、防衛省の楠田大臣政務官は、「若年定年制のもとで、働き盛りでやめていかざるを得ない隊員がいる。自衛隊の今後のあり方をふまえ、募集する際に有能な人材を獲得するため、任務に専念してもらうために、隊員に対する雇用の責任として援助していく必要がある。ただし、承認基準を設け、防衛省に置かれる審議会で監視していく」と答弁しましたが、塩川議員は、「監視組織は、独立した第三者機関ではなく、防衛省内部の組織だ。それで監視機能が果たすことができるのか」とせまり、「天下り禁止は、民主党の一枚看板だったが、今回の法案は、最大の天下り組織である防衛省・自衛隊の天下り推進法となっている」と厳しく指摘しました。
(※全労連公務員制度改革闘争本部「公務員制度改革」闘争ニュースNo.90より転載)
以上
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