2010年10月29日、参議院議員開会において国公労連などの主催で「10.29能開機構廃止法案を考える院内集会」が開催され、会場からあふれる60名が参加のもと、08年に閣議決定され今臨時国会で法案の国会審議が予想される(独法)雇用・能力開発機構(以下「能開機構」という)の廃止問題について、「能開機構廃止にともない職員の『労働契約に係る権利及び義務』が承継から除外され(解雇が前提)とされている。そもそも雇用が破壊されている中、国の責任による公共職業訓練は廃止ではなく充実こそが必要」などの認識を共有しました。
シンポジウム冒頭、呼びかけ人の後藤道夫教授(都留文科大学)があいさつに立ち、「能開機構の廃止は日本の進路を誤る大変な問題。職員の雇用が承継されないことも問題だが、廃止そのものが日本の職業訓練事情から大変な問題。失業者数は310数万人、そのうち半年以上が約3割、1年以上が約5割にのぼる長期的な失業状態。就業しながらの求職者も失業者と同数程度存在し、これらの合計は労働者全体の12.3%を占め、日本は実態的にOECDの平均失業率を上回る高失業率社会となっている。政府は職業訓練も『民間に任せればよい』と言うが、民間に任せれば就職しやすい人材の選別、就職させやすい業種への偏重などが生じ、国力が落ちること必至」と述べました。
つづいて国会議員からのあいさつとして、田村智子議員(参・共産)と高橋千鶴子議員(衆・共産)が、能開機構廃止法案の審議日程などの国会情勢、現場視察も踏まえた能開機構が果たす役割、基礎自治体の財政状況では地域職業訓練センターなどを承継できない状況、能開機構廃止の撤回に向けてともにがんばる決意などを述べました。
その後、篠原副議長(特殊法人労連)の運動経過の報告につづき、来賓あいさつとして、小川英郎弁護士が「デンマークの職業高校は事業所での実習が中心。地域の労組と使用者団体が協力してプログラムを作成。職業高校中退者の受皿もしっかりしている。能開機構廃止法案は法律によって雇用を奪うはじめてのケースであり問題」、水口洋介弁護士(日本労働弁護団幹事長)が10月28日付日本労働弁護団声明「法律により独立行政法人職員の雇用を奪うことは違憲である」を紹介しながら「テレビ報道での部分的・偏重的な情報しかなく、国公労連・特殊法人労連からの要請があるまで実態を知らなかった。能開機構廃止法案は憲法27条、労働契約法に違反」、平井哲史弁護士(自由法曹団)が7月26日付意見書「勤労権の保障を減らし、雇用を危うくする独立行政法人雇用・能力開発機構の廃止法案を批判する」を紹介しながら「能開機構廃止法案は能開機構職員のみならず、多くの国民の勤労権を奪う問題」と述べました。
つづく会場発言では、小柳氏(東京中小企業家同友会)が「能開機構廃止法案は、地方移管でなくすことが目的。民主党の政策や中小企業憲章にも逆行する動きで単なる行政コストの削減。イタリアのボローニャ周辺では、無料の職業訓練は周辺での就業により何れは税収などで還元されるという考え方が基本であり、失業率ゼロを達成している自治体もある。職業訓練は充実こそ必要」と述べ、山崎氏(全労働)は「能開機構の職業訓練が都道府県や民間委託よりも高い就業率を挙げていることはデータからも明らか。これは職員の専門性と熱意によるもの。政府は成績が高い能開機構を地方や民間へ移管し、職員を解雇しようとしている」と問題点を具体的に指摘し、北久保氏(社会保険庁不当解雇撤回全厚生闘争団)からは闘争団のたたかいの経過報告と合わせ「能開機構廃止法案は国鉄、社保庁につづく国による解雇の事例づくりを積み上げ、拡大しようとしている」とともにたたかう決意を述べました。
最後に閉会のあいさつに立った宮垣中央執行委員長(国公労連)は、「能開機構の廃止は公務員をクビにできるシステムづくりに他ならない。国は果たすべき職業訓練の責任を守らなければならない。ともにたたかおう」と呼びかけました。
以上
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