【青森県国公発】
11月13〜14日の二日間、青森県五所川原市で、地域主権問題をテーマに「自治体・地域づくりセミナー」が開催され、青森県国公もシンポジストとして討論に参加しました。
このセミナーは、青森県地域自治体問題研究所の主催で毎年開催されているもので、今回で10回目となります。県内外各地から市民や学識経験者、自治体や労働組合の関係者、市民などなど約80名が参加。青森県国公からも全労働、全国税、全建労から計8名が参加しました。今年は主要課題として地域主権改革を取り上げ、青森の地域性を踏まえた議論とおして学習を深めました。
1日目は、日本大学の永山利和教授が基調講演を行い、次いでシンポジウムでは青森県国公から伊藤嘉明事務局長、自治労連の木村雅英中央執行委員、NPO法人あいゆうの八木橋敏晃さんがシンポジストを行いました。2日目には、青森県労連の奥村榮議長、青森県社保協の山本公行副会長がそれぞれ特別報告を行いました。
青森県国公が、職場実態と地域主権改革の問題点を告発
まず、「地域主権改革と今後の地方自治」と題して基調講演を行った日大商学部の永山利和教授は、民主党の地域主権改革について、「自民党時代からの新自由主義的な政策を引き継ぐもの。基本的人権の保証を国から地方にゆだね、限られた大企業が利益を上げるために有利な国づくりが目指されている」と指摘しました。
次いで、シンポジウム「職場の実態と地域主権改革の問題点」においては、公務職場について青森県国公の伊藤事務局長が、保育問題について自治労連の木村雅英中央執行委員が、障害者福祉の現場について八木橋利晃NPO法人あいゆう管理者が、それぞれの立場から地域主権改革への懸念を表明しました。
伊藤事務局長は、全建労作成のDVD「あなたの町は大丈夫?」を教材に、公務が地域社会において果たすべき役割の重要性を強調。あわせて、昨今急浮上したハローワークの官民共同窓口にかかる厚生労働省の構想について、「市民や利用者への影響や、公務の果たすべき役割についての議論は全く不十分。現状でいわれている地域主権改革には反対せざるを得ない」と指摘しました。
自治労連の木村中執は、「民主党政権の『新成長戦略』において、保育の産業化が目指されている。地域主権改革は、福祉領域の市場化と一体で進められている。構造改革の中でいわれている『新しい公共』なるものは、実質は国が保証すべきサービスの放棄を意味する」と指摘しました。
八木橋さんは障害者施設の職場実態にふれ、「障害者自立支援法はすべてのサービスに10%の本人負担を強い、障害者にとってきわめて重い。支援法施行当時、地域ごとに独自のサービスを受けられるというふれこみだったが、実現しなかった」として、地域主権がその謳い文句に反して地域の切り捨てになることへの危惧を表明しました。
討論では、憲法の基本的人権、特に25条を中心とした社会権の保障をめざす運動の重要性が強調されました。
憲法を軸にして世論広げる運動すすめよう
2日目の特別報告で、青森県労連の奥村栄議長が「青森県の労働者・県民の状態から見た運動の課題」と題して特別報告を行いました。青森県内の労働者の実態について、アンケートの調査結果をもとに報告し、「労働者の貧困と苦境の背後にあるのは、構造改革路線による対米従属・大企業優遇の政策。そのツケを青森県の労働者市民が負わされている。憲法と労働者の団結を軸にしたたたかいが求められる」と話しました。
青森社保協の山本公行副会長は、「国保の現状と問題点」と題して特別報告。年収200万円世帯に年間46万円の国保料負担が生じるなど、国保料値上げが低所得者層を直撃している弘前市の例で実態を報告しました。また、民主党が国保の広域化を推進していることにふれ、「小泉構造改革の延長上にある発想。各自治体が国民健康保険の事業を手放したい一心で広域化賛成に回るのは無責任。赤字自治体同士が広域連合を組んでも赤字のままで、国保財政の再建にはならない。国庫負担を増やすことが重要だ」と指摘しました。
地域主権改革という課題の大きさから、すべてについて十分な議論ができたとは必ずしもいえないものの、公務の役割と地域社会の活性化について、憲法を軸にした議論の端緒が確認できた点で有意義なセミナーだったといえます。地域主権改革は公務職場だけでなく、市民生活をも脅かすことを広く訴えかけ、認識を共有するよい機会となった点も特筆したいと思います。
(青森県国公議長 立柳 作之進)
以上
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