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国公労連速報 2010年12月8日《No.2457》
 全労連・国公労連・全国税の三者が
 政府税調へ民主的税制改正を申入れ
     
 

 

 全労連・国公労連・全国税の三者は12月7日、民主的税制改正を求めて「2011年度税制審議に関する申入書」を政府税調・内閣府へ提出しました。
 三者提出では、全労連・伊藤調査局長、国公労連・秋山書記次長、全国税・田山書記次長が出席、内閣府側は企画調整課・柿澤審議会等専門官付が対応しました。
 申入れに対し、柿澤審議会等専門官付は、「現政権では、昨年は民主党幹事長室に要請窓口が一本化したが、今年も窓口だけ違うが一本化している。また、夏前から各府省で要請事項がまとめられ、政府税調に提出される。今年は、政府税調の取りまとめ直前であり、今までの経緯もあるので、申入書は担当窓口へ回付するが、他団体には、内閣府ではなく各府省へ要請するよう伝えている。来年以降は、夏前に、例えば法人税は経済産業省、証券税制は金融庁など、担当する府省へ要請された方が、より意見が反映され易くなるのではないか」と申入れへの誠実な対応と、今後の民主的税制改正を求める要請についての回答がありました。
 全労連・伊藤調査局長からは、「来年以降の申入について検討していきたい。今回は、とりまとめ直前ではあるが、再分配による底上げを求める立場で、申入れを引き継いでいただきたい」と述べ、要請を終えました。


《申入書》

2010年12月7日
税制調査会
 会長 野田佳彦 殿
全国労働組合総連合
議  長    大黒作治
日本国家公務員労働組合連合会
中央執行委員長 宮垣 忠
全国税労働組合
中央執行委員長 藤平和良

2011年度税制審議に関する申入書

 はじめに

 2010年7月の参議院選挙で与党民主党は、菅内閣総理大臣の「消費税10%」発言に影響され、過半数を割る大敗をしました。
 国の公債残高は、637兆円に達する見込となっています。この財政赤字の原因には長く続いた自民党政権下の政策があげられます
 経済・社会の構造変化は、大企業・高額所得者・大資産家には、権益・利潤を得て、留保する仕組みをもたらしています。他方、地域経済の低迷、内需冷え込み、賃金下落等により、勤労者大衆には人間の尊厳をも否定する「ワーキングプア」に代表される新たな貧困化をもたらしています。
 近時の税制改定により、所得税の最高税率の引き下げや度重なる法人税率の引き下げが行われ、担税力のある高額所得者や大企業の税負担が減り、逆に、定率減税の廃止などにより担税力の小さい低所得者の増税が行われてきた経緯があります。税制は、財源調達機能、所得再分配機能を弱めています。
 民主党政権下で「税制改革」は、「公平・透明・納得」の原則を掲げ検討されました。2010(平成22)年度税制改定において、子ども手当創設に関連し、「所得控除から手当」等への視点で扶養控除見直し(15歳までの年少扶養親族に対する38万円扶養控除廃止、16歳から18歳までの特定扶養親族に対する扶養控除25万円の上乗廃止)、いわゆる「グループ法人税制」(100%グループ内法人間の譲渡取引の損益繰延べ、連結子法人の連結開始前欠損金の持ち込み制限など)整備や租税特別措置の適用実態を明らかにしその効果を検証できる仕組み構築のための、いわゆる「租特透明化法」の創設、脱税犯に対し10年以下の懲役刑若しくは1000万円以下の罰金等による租税に関する罰則強化等が措置されました。
 政府税制調査会、民主党政調の税制改正PTにおける次年度の税制改革の検討課題等、動向が報道されています。
 負担をどこにもとめるか重要な課題です。大企業・高額所得者・大資産家の負担能力に着目し「社会的責任を果たす」制度構築が必要です。
 税制は、民主主義の原則である応能負担原則を徹底し、現在の不公平税制を改め、税負担の公平を確保すべきです。不労所得には重課をし、勤労所得には軽課をし、最低生活費には課税しないという理念が必要です。すなわち、所得課税を税体系の基幹税とし、累進的な総合課税によって所得の再配分機能を確保することです。所得税の最高税率の引き上げや法人税率の引き上げにより、税収を確保し財政再建への道筋をつけるべきです。また、低所得者層に対して課税最低限を引き上げる等の方法により減税を実施すべきです。特に格差縮小に向けて再配分機能を重視する必要があります。すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有しています。
 私たちは、これまで総合累進課税を軸とした税体系の確立、改革を政府ヘ申し入れてきました。2011年度税制審議に関し、組織された労働組合、一納税者、市民、並びに国の税務行政に携わる労働者として、下記のとおり意見を申し述べます。

第一部 本年度の重要項目

第1 個人課税関係
1  所得税の最高税率は引き上げ、最低税率は引き下げること。また、分離課税制度は見直し総合累進課税の構造を強化すること。特に、高額資産保有者に有利な証券優遇税制は廃止し、総合課税により課税すること。なお、総合課税が完全に実施された場合には最高税率を50%とすること。個人住民税は累進税率を採用すること。
2  人的控除は、最低生活費非課税の原則に立脚し、生活保護基準を超える金額とすること。なお、所得税・住民税とも諸控除は、複雑化している現在の諸控除を見直し、当面、基礎控除を180万円(現行38万円)、配偶者・扶養控除をそれぞれ70万円とすること。
3  給与所得控除の見直しにおいて、給与所得控除を「収入の一割程度」にすることなく、給与所得控除は定額部分を大幅に引き上げ高額所得者に対し「青天井」となっている定率部分の上限制度を復活すること。

第2 法人課税関係
1  法人税率は超過累進税率(例えば10%〜50%の5段階)を適用すること。
2  租税特別措置法の税額控除や特別償却など、大企業に有利となる措置を廃止すること。

第3 消費課税関係
1  消費税は廃止することとし、当面税率3%に引下げること。
2  消費税について、生活必需品に「ゼロ税率」を採用するとともに、増税はおこなわないこと。

第4 その他
1  公示制度を復活させること。
2  所得税法等の一部を改正する法律(平成21年3月31日法律第13号)附則第104条を廃止すること。
3  国際的な資金移動に対し一定の課税措置をはかること。
4  富裕税を創設すること。

第二部 主な個別税制及び税務行政等について

第1 個人課税
1  分離課税制度は見直し総合累進課税の構造を強化すること。
2  所得税・住民税の基礎控除を180万円(現行38万円)、配偶者・扶養控除をそれぞれ70万円に引き上げ、政策的諸控除は縮小の方向で検討すること。
例えば、医療費控除は廃止し、医療費支払い窓口での負担軽減措置を講じること。
3  所得税の最高税率は引き上げ、最低税率は引き下げる。なお、総合課税が完全に実施された場合には所得税の最高税率を50%とすること。
4  現行給与所得控除について、「青天井」となっている定率部分の上限制度を復活すること。
5  現行の給与所得控除を法定概算経費控除、勤労控除、把握控除、利子控除の四つに分解し、各控除をそれぞれ独立控除として合算すること。法定概算経費控除と実額経費控除との選択制度にすること。
6  年末調整制度と申告納税制度との選択制にすること。
7  公的年金等控除の額は、控除額が「青天井」になっている制度を改めること。老年者控除を復活すること。
8  白色申告者に専従者給与を認めること。
9  利子・配当所得は総合課税を実施し、源泉分離課税制度を廃止するとともに、20%の源泉徴収を行い、支払調書の課税当局への提出と本人への交付を実施すること。
10  有価証券譲渡益課税おける上場株式等に係る譲渡所得等は、総合課税を実施するとともに、1%の源泉徴収を行い、支払調書の提出と本人への交付を実施すること。
11  商品先物取引、有価証券譲渡益課税おけるキャピタルロスは利益の範囲とし、損失の繰越は行わないこと。
12  一定額以上の高額資産(土地等以外の資産、たとえば貴金属・宝石・書画・骨董品・ゴルフ会員権等)の譲渡や販売は、譲渡者および販売者に対して、譲受人や買い取り人の住所・氏名・価額・品名・年月日等について税務署への届出を義務付けること。
13  土地等譲渡課税(個人)について
(1)  譲渡所得は500万円の特別控除を設けた上で総合課税とすること。
(2)  取得費は、実額取得費ないしは譲渡価額の5%の概算取得費との選択制とすること。
(3)  自己居住用住宅を除く保有期間5年以下の超短期譲渡は、税率10%の追加課税を行い、取得費は実額取得費とすること。
(4)  事業所得または雑所得に該当する土地等の譲渡は次の追加課税を行い、この場合、(2)の特別控除制度は適用しないこと。
@  短期・超短期保有土地以外の土地等は税率5%の追加課税を行い、この場合、取得費は実額取得費または譲渡価額の5%概算取得費との選択制とすること。
A  短期(5年超10年以下)保有の土地等は税率10%の追加課税を行い、この場合、取得費は概算取得費を廃止し実額取得費とし、また、支払利息の経費の算入は認めないこと。
B  超短期(5年以下)保有の土地等は税率15%の追加課税を行い、この場合、取得費と支払利息の取扱は短期保有土地等と同じくすること。
14  各種の特別措置は、原則廃止とし次のものに限定し見直し存続等措置すること。
(1)  居住用の買換えは一般的な最低面積に限定し、特別控除3,000万円との選択適用とすること。
(2)  事業用の買換えは、買換え資産の面積が譲渡資産の面積の2倍までに限ること。
(3)  優良住宅地等のために土地等を譲渡した場合に対する譲渡益への軽課は、全面的に見直しを行い、統合整理すること。
(4)  公共用地取得や公共目的のための譲渡は軽減措置をとり、特別控除5,000万円と買換えとの選択適用を認めること。
(5)  特別措置のうち歴史的遺物保存のための譲渡優遇措置を新設すること。

第2 法人課税
1  実情に合致しない各種措置、特別に優遇している等大企業に有利に働く各種措置は、廃止または見直しすること。
2  大企業に有利な仕組みになっている現行税率の制度を改めて、大企業と中小企業とに区分した上で、利益の大小に応じた負担配分をはかるため、それぞれの所得に応じた超過累進税率(例えば10%〜50%の5段階)を適用すること。
3  貸倒引当金、返品調整引当金は廃止すること。
4  租税特別措置による準備金、特別償却等の加速償却、税額控除は廃止すること。
5  受取配当金益金不算入、プレミアム非課税は廃止すること。
6  みなし外国税額控除は廃止すること。
7  移転価格税制は適切な運用、所要の法令整備をはかること。
8  減価償却制度は、中小企業向けを除き、特別償却等の加速償却は廃止すること。また、減価償却制度見直しで中小企業へ負担増となる措置をしないこと。

第3 消費課税
1  消費税は廃止することとし、当面税率3%に引下げること。
2  食料品等の生活必需品を非課税(ゼロ税率)にすること。
3  大企業の仕入税額控除「課税売上割合95%超基準」を廃止すること。
4  免税点制度について、現行課税売上1千万円を3千万円にもどすこと。
5  消費税について「福祉目的税」としないこと。

第4 資産課税
1  土地を資本の利潤追求の目的物にする政策は改め、不当な利益を生じさせないこと。
2  相続税・贈与税は、所得の再分配を図ることを目的とした税であることに鑑み、次の措置を講ずること。
(1)  農業・林業・水産業の事業承継保障を一定の範囲で措置すること。
(2)  相続税は、最高税率70%とし、配偶者軽減措置は5億円を限度とすること。
3  中小規模法人を除く法人に対して国税としての保有税を課すること。
4  土地等の評価制度における、固定資産税、相続税(贈与税を含む)及び地価税の課税標準としての評価は、売買実例をもとにした評価法から、収益還元法を基本にした評価に改めること。

第5 その他の税制
1  財産(富裕)税の創設を図ること。特に財産債務の明細書の提出を厳格化すること。
2  環境税を導入すること。
3  為替取引など投機的な資金の移動に対して課税を図ること。
4  世界的に拡大する企業活動等の実態把握を図り、的確な課税のため、電子取引拡大等への速やかな対応と、課税権限を充実させること。
5  大企業の保有資産に対する、保有課税を行うこと。
(1)  資本金10億円以上の法人が保有する株式に、財産課税として決算月1ヶ月の平均時価を課税標準として0.1%の有価証券保有税を課すること。
(2)  株式以外の有価証券については0.05%の有価証券保有税を課すること。
(3)  内部留保に特別な課税を実施すること。
6  有価証券取引税を復活させ、税率を1万分の55で課税すること。

第6 地方税
1  法人住民税率は、法人税と同様に超過累進課税の導入を図ること。
2  個人住民税は、最低生活費非課税の原則に立脚し、生活保護基準を超える課税最低限とすること。
3  失業者に対する住民税課税免除制度の導入を図ること。
4  固定資産税は、評価方法や税率を改善して適正な負担にとどめること。
5  大企業の保有資産に対する、保有課税を行うこと。
(1)  生活上必要不可欠な生活用土地建物については、現行の軽減措置を維持する一方、市街地における大規模自己居住用土地は重課すること。
(2)  収益性の低い農業の保護や、市街地における緑と環境を保護する観点から、市街化区域内農地は軽課すること。
(3)  自衛隊や在日米軍の使用する土地の免税をやめ課税すること。
(4)  NHKおよび電力・鉄道・ガス・船舶・航空事業に係る償却資産に対する課税の特別措置は見直すこと。

第7 納税者番号制度、税制改革審議等について
1  納税者番号制度、国民総背番号制度の導入をしないこと。
2  税制に係る審議は、全面的に情報を公開するとともに、審議、会議における委員の選定、運営方法等そのあり方を透明化すること。

第8 その他の事項
1  公示制度を復活させること。
(1)  法人税の公示制度は、所得金額基準とし、売上金額と税額を公示すること。特に、資本金10億円以上の大企業は、所得金額にかかわらず法人税申告書(別表一(一)と別表の各表)を公示する。
(2)  所得税の公示制度は所得金額基準とし、所得の種類、収入金額、申告所得金額および申告納税額を公示すること。
2  一定規模以下の労働組合は非課税団体とすること。
3  労働組合に対し、「収益事業を営まない公益法人等の『収支計算書』の提出」を義務付けないこと。
4  労働組合に対し、「収益事業を営まない公益法人等の『収支計算書』の提出」を義務付けないこと。
5  出納整理期間を廃止すること。国税収納金整理資金に関する法律第14条関係を改正し、当該年度に受け入れた国税収納金は当該年度の一般会計に組み入れるものとすること。受入金の会計年度所属は、当該国税が収納済となった日の属する年度とすること。

第9 税務行政に関する問題
1  租税法律主義を徹底させ、法令・通達等の制定手続きは民主化し公開すること。
2  国会議員、上場企業役員、大口資産家、本府省局長級以上相当公務員の財産債務明細書は提出を徹底させること。
3  情報公開法は改善を図り、オンブズパーソン(行政監察官)制度を導入すること。
4  納税者の権利尊重を前提とした「適正手続き」、特に事前(救済)手続きの確立と、それに基づく公正・公平な執行を行うこと。
5  国税不服審判所の独立性を確保すること。
6  国税職員の労働基本権を回復し、恣意的かつ「実績」主義に基づく新人事評価制度は廃止すること。
7  ノルマ主義による税取競争は行わないこと。
8  国税庁当局による全職員の思想・信条調査、プライバシーの侵害や不当労働行為は厳禁すること。
9  国税庁当局による全国税組合員に対する一切の人事差別は撤廃すること。
10  国会議員、大臣の資産は公開し、厳正な税務調査を行うこと。
11  非常勤職員の処遇を改善すること。



以上

 
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