「こんな不当処分は許せない」「労働者としての権利を守ろう」――社保庁廃止に伴い分限免職(整理解雇)された39人の全厚生組合員が処分の取消を求めてから1年余が経過。札幌において2月2日から4日までの3日間、懲戒処分歴のない北海道の2人にかかる人事院の公開口頭審理が行われました。口頭審理は、請求者側と処分者側がそれぞれ証人をたて、証拠資料や事実関係の確認・尋問を行うものでが、今回は、処分者側の証人の審理が行われました。
会場に用意された30の傍聴席は、北海道国公、道労連、社保OBをはじめとする支援者で連日一杯となりました。
「ハローワークの活用も解雇回避努力の一つ」、傍聴者から怒りの声が
最初は、社保庁廃止に伴う雇用対策全般を担当していた藤原証人(当時社保庁総務課)に対する尋問。
請求者代理人の8人(北海道6、東京2)の弁護士は、分限免職に直接かかわった藤原証人に対して、職員への周知方法やその基準、回避努力の具体的内容等について集中的に尋問を行いました。弁護団は、書証の作成時期が不明であること、一部内容に不整合の点があること、さらには本人記載書類に後で修正加筆が行われた形跡があること、などを追及。処分者側証人が回答に窮する場面もありました。処分者側代理人は、確認して追加書証の提出を検討すると述べましたが、処分者側の証人尋問であるにもかかわらず代理人が即答できないなど処分者側の不誠実さが浮き彫りになりました。
弁護団はさらに総論部分の主張についての妥当性を問う詳細かつ重要な質問を重ねました。他省庁や自治体等への受け入れ要請などは極めて形式的で、再度の状況確認などはまったく行われていないこと、ハローワークの活用なども分限免職回避策の一環として指示されていたこと、機構発足を前に採用辞退者が相次ぐなど大幅な欠員が生じていたにもかかわらず、機構に正規職員への追加採用などは求めなかったこと、など処分者の行為が形式的には行われていても、真に分限免職を回避するものではなかったことが明らかになりました。また、弁護団の鋭い質問に証人が明確に回答できない場面も多数ありました。
思想信条が評価の対象に、あいまいな評価基準
次に厚労省配転に当たって当事者2人の面接を担当した細谷証人と渡利証人(共に当時北海道厚生局)、そして転任候補者の選考会議のメンバーである高崎証人(当時北海道厚生局)の審理が行われました。
処分歴もなく病気休職中であった高島請求人は、年金機構にも厚労省にも採用されませんでしたが、厚労省配転の面接を担当した細谷証人は、面接調書や当時の状況等について「覚えていない」「記憶にない」とあまりにも無責任な態度に終始。「首を切られているんだ!」「そんな態度でまともな審理ができるか!」と代理人、傍聴者の怒りが噴出しました。人事院の公平委員からも、「請求人の指摘は一理も二里もあり、資料の提出も含め誠実に対応」するよう指示が行われました。
一方、渡利証人は自分の判断基準に沿って評価したことを確信的に証言。弁護団は、評価の手順、要素、基準とその選考会議での補正方法などを集中的に追及しました。焦点となった面接内容と評価結果の問題では、面接担当者に対する事前の打ち合わせも十分行われていないこと、面接官2人によるわずか10分の面接時間の中で評価が行われていること、懲戒処分歴がないにも関わらず社保庁での懲戒処分に対する反省が重要な要素とされていることなど、一生を左右する重大な面接があまりにもおざなりに行われている実態が明らかになりました。
北海道での転任候補者を決定する「選考会議」のメンバーであった高崎証人の尋問では、北海道における希望者は140名で、本省から指示のあった受入定数は41人であったこと、選考会議メンバーは北海道厚生局長以下4名であり証人を除く3人は面接も担当していたこと、公平・公正な評価を担保する基準があいまいであること、越後請求人については面接担当者2人の評価結果が分かれていたこと、などが明らかになりました。
年金機構設立委員会及び職員採用審査会の事務局も併任していた佐藤証人(当時社保庁日本年金機構設立準備局)は、年金機構を第一希望とした高島請求人への対応が焦点となりました。健康状態の関係から10月まで採否保留者とされてきたこと、不採用の要素となった担当医師への照会が異常な状況で行われていること、などが明らかになりました。証人の態度はすべての質問に対して、まるで他人事のようなものでした。機構の現状や年金問題について無責任な発言をする証人に対して傍聴席から怒りの声が発せられました。
最終日は、北海道内の雇用対策の総括責任者であった仙庭証人(当時北海道社会保険事務局)に対する尋問。道内の出先機関等へは欠員があった場合に受入検討を求める要請であり、その後は何も対応していないこと、意向調査の書式があいまいで十分に意向が伝わっていないこと、尋問に対しあいまいな回答が多かったこと、など証人自体としての問題も浮き彫りになりました。こうした問題点については、人事院の公平委員会からも迅速・正確な審理に向け真摯に対応するよう処分庁側代理人に再度の指摘が行われました。
第2ステージは4月下旬に請求者側の証人尋問
北海道事案の公開口頭審理については、4月27・28日に請求者側証人に対する尋問が予定されています。なお、証人には、年金記録問題等で飯塚全厚生前委員長が、国公労働者の雇用問題で川村国公労連副委員長が証言する予定です。
北海道国公、連日報告集会を開催
初日の審理開会前には審理会場となった合同庁舎前で、弁護団と当事者、傍聴参加者による集会を開催。3日間の口頭審理での要求前進にむけて弁護団と当事者を激励しました。
また、審理終了後には毎日報告集会を開催し、担当弁護士から尋問でのポイントなど審理の特徴点や回答内容の問題点等について報告を受け、傍聴参加者の感想などを交流しました。また、越後さんと高島さんの二人も感想と決意を述べ、翌日の尋問と傍聴行動の成功にむけて決意を固めあいました。
各地での傍聴行動を成功させよう!!
《当面の審理日程》
・2/22〜24 埼玉事案(1名)会場:人事院関東事務局(さいたま新都心合同庁舎)
・3/1〜3 香川事案(1名)会場:高松第2地方合同庁舎(高松市)
・3/8〜10 秋田事案(3名)会場:秋田県教育会館(秋田市)
・3/16〜18 岐阜事案(1名)
・3/22〜25 愛媛事案(4名)
以上
|