国公労連など20団体が参加する実行委員会は2月25日、衆議員第2議員会館で院内集会を開催しました。83人が参加し、「地域主権改革」で直面する各分野の課題への認識を共有し、共同のとりくみを発展させることを確認しました。
開会の冒頭、あいさつに立った全労連公務部会の野村道州制・地方分権対策委員長(自治労連委員長)は、「『地域主権改革』と名称は変わっても自己責任や財の重点・集中化など、国民生活を見捨て大企業・財界のための改革に変わりない。一斉地方選挙の大きな争点に」と呼び掛けました。
また、日本共産党の塩川鉄也衆議院議員が「『地域主権』関連法案は、継続審議の第1次と今国会提出の第2次を一括審議する様相。自民党と公明党は名称にこだわるだけ、みんなの党なども根本は一緒。拙速な審議で可決されかねない。共産党として憲法が定める国・地方自治体の責任発揮を求めていく」と国会情勢を報告しました。
続いて自由法曹団の尾林芳匡弁護士からは、自由法曹団が取りまとめ中の意見書「『地域主権改革』で暮らしはどうなるか」を紹介し、「個々の分野では国民から反対の声が上がる福祉・財政の改悪をひとつの言葉で大くくりにし、まやかしで進めようとしている。改革の正体を全体的に明らかにするとともに共有し、個々の課題への対峙とセットで『地域主権改革』へも対抗しなければならない」と呼び掛けました。
各団体からの報告では、国公労連を代表して全建労の松本副委員長が「昨年末に閣議決定された『アクション・プラン』で道路・河川の移譲が問題提起されたが、氾濫域に多くの資産が集中する河川、物流などの大動脈となる道路を国が管理するなど、もともと重要度や目的に応じて国と地方自治体が責任・役割を分担しているもの。この冬は豪雪による通行止めが相次いだが、昨年度に比べ維持管理費が1割から2割も削減されていることも要因。重要構造物の老朽化で維持管理費は20年後には現在の倍にもなり、247兆円にものぼる建設国債の償還もある。国の責任を放棄したいがための改革。先頭に立って奮闘する」と述べました。
そのほか、全生連(全国生活と健康を守る会連合会)は「公営住宅から低所得者を排除するもの」、全保連(全国保育団体連絡会)は「認可保育所でも死亡事故が増加」と「子ども・子育て新システム」の問題とあわせ実態を報告しました。また、障全協(障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会)は「人権が守られず、少数の難病、障害者が軽視される」、保団連(全国保険医団体連合会)は「命と健康を守る地域医療の崩壊に拍車をかける」、全商連(全国商工団体連合会)は「大企業中心の活動基盤に変質するもの」と今国会で審議されている「国税通則法」改正とあわせ問題を指摘しました。また、自治労連は「国の役割を民間に放り出してから責任を地方自治体に押しつけるもの。地方自治法の改正で民主主義まで壊そうとしている」と改革の本質を明らかにしました。
集会アピール(別添)を確認した後、閉会のあいさつに立った永山日本大学教員は、「2年前から懇談会を立ち上げ今回の院内集会開催に至った。それぞれの団体で運動し研究にとりくんでいるところだが、全体像をつかむ努力が必要。政府は憲法の形骸化を狙い、内から外から崩していこうとしている。TPP参加や消費税増税の問題ともあわせ、言論機関を総動員して『地域主権改革』を撤廃させよう」と呼び掛けました。
〈別添〉
「地域主権改革」を許さず、憲法を生かし、くらしを守ろう
集会アピール
民主党政権は、昨年6月に「地域主権戦略大綱」を閣議決定し、国と地方の役割を変え、社会保障、教育などの「住民に身近な行政」に対する国の責任を放棄し、地域住民と地方自治体に丸投げする「地域主権改革」を推進するとしています。
菅内閣は、継続審議となっている「地域主権改革関連2法案」と地方自治法一部改正案に加えて、更なる義務付け・枠付けの見直しと権限移譲を進める第2次地域主権一括法案を3月中旬にも国会に提出するとし、地域主権改革の動きを加速させています。
昨年末には、国の出先機関廃止に向けた「アクション・プラン」を閣議決定し、国の出先機関が地方自治体と一緒に担ってきた雇用、道路、河川、防災など、国民のくらしの安全・安心を支える国の責任を放棄し、関西広域連合のような広域体制への権限移譲を制度化する法案を、2012年通常国会に提出するとしています。
「地域主権改革関連2法案」の参議院での審議で明らかになったことは、児童福祉法等に基づいて国が定めている、保育所、児童養護施設、知的障がい児施設、介護施設等の設置・運営にかかる最低基準、へき地教育振興法に基づく級地指定、公営住宅法に基づく公営住宅の整備・入居基準など、生存権や教育権にかかわる重要な国の最低基準を廃止するだけでなく、基準を引きさげ、地方自治体任せ、民間任せにかえるものです。
この間、保育、障害者、介護、医療などの福祉・社会保障の関係者、生存権に関わる団体、教育、法曹関係者などから、「地域主権改革」の問題点の指摘や批判の声が上がってきています。
国民の生活は、長引く不況の中で自殺者が年間3万人を超え、路上生活やネットカフェ生活などの住宅難民、医療が受けられない医療難民、介護難民など依然として深刻な状況であり、貧困と格差の中で生活保護の受給者数は増加しています。今求められることは、国の責任で国民の生存権を保障し、地域経済を再生させ、国民の生活を支えることです。
菅内閣が、「地域主権改革」を根本的に見直し、憲法を生かし、国民のいのちと暮らしを守る政治へと根本的に転換することを強く求めるものです。
2011年2月25日
「地域主権改革」に反対し、憲法を生かし、暮らしを守る
2.25院内集会実行委員会
実行委員会参加団体
全国生活と健康を守る会連合会
新日本婦人の会
全国保育団体連絡会
障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会
全国商工団体連合会
日本婦人団体連合会
全国保険医団体連合会
農民運動全国連合会
全国地域人権運動総連合
民主教育研究所
全日本民主医療機関連合会
自由法曹団
NPO法人建設政策研究所
全国農業協同組合労働組合連合会
全国労働組合総連合
全国福祉保育労働組合
全日本教職員組合
特殊法人等労働組合連絡協議会
日本国家公務員労働組合連合会
日本自治体労働組合総連合
以上
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