国公労連は31日午後、今回の震災に関する緊急要請書を菅総理大臣にあてて提出しました。国公労連は阿部副委員長を責任者に、上田、高木両中執の3名で臨み、政府は松本内閣参事官が対応しました。松本内閣参事官は、震災からの復旧・復興にむけて持続可能な行政体制をつくらなければならないとの認識を示し、要請内容を関係者に伝えるとともに、実務がよい形で進むように努力すると述べました。
2011年3月31日
内閣総理大臣 菅 直人 殿
日本国家公務員労働組合連合会
中央執行委員長 宮垣 忠
東日本大震災に関する緊急要請書
大震災と原発事故の対策に奮闘されていることに敬意を表します。
3月11日(金)14時46分頃に三陸沖で発生した国内観測史上最大規模となるM9.0の地震によって北海道・東北地方から関東にかけて広範な地域で甚大な被害が相次いで発生しました。
とりわけ、太平洋岸の市町村では、津波によって壊滅的な被害を受け、その被害は、現地の実情が明らかになるにつれて拡大し、30日午後9時現在、死者11,362人、行方不明者16,290人と国内では戦後最大の災害になっています。
くわえて、東京電力福島原発の事故により、広範囲に避難指示が出され、電力不足の懸念から、関東地方でも「計画停電」が行われるなど大きな影響がでています。
さらに、国家公務員も自ら被災しているにも関わらず、国民の安心・安全を確保する国の責任を果たすため昼夜をたがわず懸命に奮闘しています。
こうしたことから、私たちは、被災地への精神的・財政的な救援活動を展開し、一日も早い被災者の救済と復旧に向けた取り組みに全力をあげて奮闘するとともに、貴職に対して、下記の措置をとるよう緊急に要請します。
1 | 政府として、人命救助や行方不明者の捜索・救出を最優先するとともに、福島原発の危険除去や二次災害の防止に全力をあげること。また、被災者の食糧と仮設住宅等の確保、一日も早い電気・水道・ガスなどライフラインの復旧と家屋の修理などに全力を尽くすこと。 |
2 | 災害復旧のため十分な財政支出を含むあらゆる手立てを尽くすこと。また、被災者の生活再建のために雇用の確保をはじめとする特段の措置をとること。 |
3 | 税制について
※別添のとおり。 |
4 | 従来の国土・インフラストラクチャ整備・地域作り計画、防災計画の前提がまったく崩れたことを踏まえ、起こりうる災害の規模を想定し直し、計画を抜本的に練り直すこと。 |
5 | 災害からの復旧・復興に全力をあげるため「地域主権改革」にかかる検討作業を中断し、復旧・復興が実現した段階で、国と地方の責任・役割を白紙から再検討すること。 |
6 | 救援と復旧のための行政体制の確立・拡充とはかること。
(1) |
定員純減計画の検討は直ちに取りやめ、新規採用抑制を撤回し、2011年度末までの臨時定員を定員化するなど必要な要員を確保すること。 |
(2) |
2011年度補正予算において、今後救援と復旧のため予想される業務に対応するため、必要不可欠な要員を一定期間確保するための臨時増員を措置すること。 |
(3) |
被災地の新たな行政需要に対応するための全国的な応援体制を確保すること。 |
(4) |
被災に伴い急増する業務に対応するための外部委託等経費を確保すること。 |
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7 | 災害等にかかる旅費、庁費、超過勤務手当等や復旧の際の庁舎・施設及び備品等の予算を十分確保すること。
(1) |
住居等を喪失した職員に対して、入居可能な公務員宿舎の情報を提供し、迅速な入居をはかること。また、宿舎の現状について専門家による点検を早急に行うこと。 |
(2) |
庁舎の被災状況を調査し、耐震構造等に問題のある建物は使用を中止し、代替え窓口等を検討すること。また、必要な補修を早急に実施すること。 |
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8 | 職員の勤務条件を確保すること。
(1) |
被災した職員に必要な医療措置及び健康確保措置を講じること。
① |
被災により負傷した職員には十分な治療を保障すること。 |
② |
原子力発電所事故による被曝を防止するための対応をはかること。 |
③ |
被災による精神的なダメージに配慮し、専門家による巡回相談や相談窓口の周知など、メンタルヘルス対策を十全に講じること。 |
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(2) |
職員の通勤手段を確保するとともに、自己負担を生じさせないこと。
震災の影響により認定通勤経路での通勤ができない職員については、出勤可能な官署に勤務させることや、他の経路による通勤費用を実費支給するなど、いっさいの自己負担を生じさせないこと。 |
(3) |
被災地での体制確保の困難性に配慮し、緊急的な超過勤務縮減対策を講じること。 |
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9 | 国家公務員共済組合の共済短期給付からの「災害見舞金」を早期に支給すること。また、共済貸付について限度額の引き上げと貸付利率の減免並びに返済期間の延長などの措置を行うこと。 |
以上
《別添》
1 | 震災復興に向けた税務行政の在り方について
(1) |
国税・地方税では、「納税の猶予」(国税通則法§46)、「換価の猶予」(国税徴収法§151)、「滞納処分の停止・納税義務の消滅」(国税徴収法§153)の適用を可能な限り行うこと。また、納税緩和措置に伴う延滞税免除規定では足りないため、特別に延滞税免除期間を設けること。 |
(2) |
平成22年分の所得税確定申告をはじめ、予定納税や中間申告、源泉所得税の納期限を含む、震災後に到来する納期限の延長等の適用を可能な限り行うこと。 |
(3) |
上記2点以外にも点在する徴税面での猶予制度(国税・地方税・保険料等)の適用を可能な限り行うこと。 |
(4) |
これらの緩和措置適用に当たっては、必要書類や証拠書類を簡略化すること。 |
(5) |
調査や滞納整理は、被災地では当面(最低でも1年)はやめ、納税者の権利を守り、納税者に利益となる制度を案内し、納税者利便に徹すること。 |
(6) |
還付金は早期還付金処理を行えるよう体制を整えるとともに、納付額が発生する申告書等の期限の延長や振替日延長などを行うこと。 |
(7) |
納税者の相談窓口を拡充し、全署に税務相談官を配置すること。納税者の利益や利便に繋がる制度を、職員が説明できる資料や研修を配備すること。 |
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2 | 震災復興に向けて当面行うべき税制改正等について
(1) |
雑損控除を平成22年分から適用すること。法人税の繰り戻し還付を適用すること。損失額の算定は「簡便法」による計算も採用できるようにすること。 |
(2) |
当面、被災地域において数年間発生する法人の欠損については、繰越欠損年数を拡大して適用すること。 |
(3) |
租税特別措置法で、大震災における軽減措置(例えば、損失申告の適用年分を拡大することなど)を行うこと。住宅ローン控除では、津波等で家屋が倒壊し、建て替えた場合には、従来のローンの引き継ぎ価格を含め、可能な限り長期間適用できるようにすること。 |
(4) |
津波による漁業関連業者、原発事故による農業所得者、地域産業破壊の影響を受けた中小業者など、被災地での特定事業形態に対する免税・軽減措置を新設すること。 |
(5) |
震災地の固定資産税の非課税化、建て替え後の登録免許税の免除など、考え得る税制改正を行うこと。 |
(6) |
特別震災控除(仮称)を新たに設け、世帯人数に応じた税額控除を新設すること。 |
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3 | 震災復興に向けた財源確保のための税制改正について
(1) |
平成23年度予算関連法案である「所得税法等の一部を改正する法律案」(以下、「平成23年度税制改正法案」という)で審議されている法人税率の引き下げは行わないこと。法人税制に累進税率を導入すること。 |
(2) |
平成23年度税制改正法案で延長した金融所得税制の減税措置・分離課税方式をやめ、総合課税方式での課税とすること。 |
(3) |
租税特別措置法の透明化を進め、とりわけ大企業の課税ベースを広げるのと同時に、震災地での地場産業など中小企業への課税ベースは縮小すること。 |
(4) |
震災復興臨時法人特別税(仮称)を設け、内部留保に対し2%の課税を行うこと。 |
(5) |
被災地で倒壊した居住用建物の建て替えに係る「住宅取得控除」を新設すること。 |
(6) |
震災復興の財源を消費税増税や課税最低限の引き下げに頼らないこと。 |
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以上
今後も、15時を目途に状況を集約してニュースを発行します。各単組・職場や各県国公の状況やとりくみなどの情報を国公労連へお寄せください。
【救援カンパの振込先】
中央労働金庫 新橋支店(普通)2255113 名義:国公労連2
(注)この口座は3月11日に発生した大震災への救援カンパ専用です。
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