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国公労連速報 2011年5月13日《No.2542》
 政府が「3年間・公務員給与の1割カット」提案
 組合は違法性を指摘し撤回求める
     
 

 

 本日(13日)、国公労連は公務員給与引き下げ問題をめぐる総務大臣交渉を実施しました。交渉には宮垣委員長を責任者に総勢11名が参加(今回は、交渉委員として自治労連委員長と全教委員長も出席)し、政府側は片山総務大臣が対応しました。

 冒頭、片山総務大臣は、公務員給与引き下げに関する政府の方針として、次のように説明・提案しました。
 ● かねてより、政府としては現下の社会経済情勢や厳しい財政事情を踏まえ、国家公務員の人件費を削減する措置について検討してきた、現在の人事院勧告制度のもとで極めて異例のことであるが、自律的労使関係制度が措置される間においても、それを先取りする形で話し合いを行ったうえで、給与引き下げ法案と自律的労働関係制度の関連法案を一体で提出したいと考えている。
 先月の春闘要求に対する回答では、国家公務員の給与の引き下げについては、具体案がまとまった段階で良く説明し、理解が得られるよう話し合いたい旨をお伝えしたが、本日政府として引き下げの方針がまとまったのでお示ししたい。
 ● 我が国は厳しい財政事情にあり、特に今般の東日本大震災の発生とそれへの対処を考えれば、歳出削減は不可欠だ。国家公務員給与も例外ではなく、みなさんの理解がえられるよう話し合ったうえで、給与の引き下げをおこないたい。
 具体的には、平成25年度末まで、俸給、ボーナスの1割カットを基本として引き下げることについて、政府代表としてみなさんに提案したい。
 ● 職員のみなさんには大きな痛みをともなう措置である。震災対応をふくめ、日夜、公務に精励していただいているなか、大変、心苦しく思うが、ご理解いただき、ご協力をよろしくお願いしたい。

 それを受けて、国公労連の宮垣委員長は、次のように主張しました。
 ○ 大臣から国家公務員給与の削減の提案があったが、内容は公務労働者の労働条件の大幅な切り下げであり、かねてから主張してきたように重大な問題があり、認めがたい。
 ○ 震災復興財源確保の一環としての公務員給与削減に言及したが、それについても認められない。復興財源は、国家公務員の賃金の一部をカットして確保できる金額とは桁違いであり、それに見合った財源論議が必要だ。それを承知のうえで、復興のために公務員もみずからの給料を差し出し貢献せよと、使用者たる総務大臣が考えているとすればきわめて重大だ。私たちは「全体の奉仕者」としての使命にもとづいて、公務労働者の専門性も発揮しながら、被災地の復興に全力をあげる決意だ。それが公務労働者としての貢献のあり方であり、賃下げで貢献せよという考え方にはくみしない。
 ○ 今回の提案にかかわって、以下の点について総務大臣としての考え方を明らかにすべきだ。
 @ 政権公約である国家公務員総人件費2割削減の方針は、もともと道理のないもので、抜本的に見直すべきだが、民主党のマニフェストがことごとく破綻するもとで、なぜ公務員総人件費削減にしがみつくのか。
 今回、被災にあった公務労働者は、家が流され、家族も失いながらも全体の奉仕者としての使命感から不眠不休で被災者の救援活動にあたってきた。また、全国各地の国や地方自治体の公務労働者が被災地に派遣され救援・復旧業務を続けている。今後、長期にわたる被災地の復興の先頭に立つのも、やはり公務労働者だ。
 また、震災を通して、公務・公共サービスの重要性があらためて明らかとなっている。このような震災の教訓からすれば、「小さな政府」や公務・公共サービス切り捨ての「構造改革」の見直しが急務であり、何よりもまず公務員総人件費削減方針を撤回すべきではないか。主要国の中で日本の公務員数・公的部門職員数は最も少なく、フランス、アメリカ、イギリスの半分以下、国家公務員の人数にいたっては、フランスの10分の1以下だ。今やるべきことは、賃下げよりも震災の復興のために公務員の数を増やすことだと思うが、大臣としてどのように考えるのか。
 A 公務員の賃下げの悪影響について、大臣としてどのように考えるのか。
 雇用情勢の悪化や国内消費の伸び悩みで景気の回復が遅れていることに加え、震災による日本経済の落ち込みが懸念される。個人消費の拡大は政府として取り組むべき課題であり、労働者の賃金底上げや雇用の安定、確保こそが求められている。そのような中での公務員の賃下げは、民間労働者の賃金にも影響し、賃下げによる消費の冷え込みは避けられない。国内生産の減少、国と地方の税収の減少にもつながり、景気回復をめざす流れにも逆行するものだ。地方自治体の交付金にも連動する部分があり、自治体財政にも影響がおよぶことになる。公務員の賃金を下げるというなら、こうした広範囲におよぶ否定的な影響もふまえた検討が必要だが、大臣としてその認識をお持ちなのか。
 B 給与引き下げは「きわめて異例の措置」と言うが、労働基本権制約のもとでは人事院勧告にもとづかない労働条件の切り下げは、明確に憲法に違反する。憲法を踏みにじるようなことを「異例の措置」などとして検討すること自体が不当なことだ。大臣は、昨年の臨時国会の答弁で、条例で地方公務員の賃金をカットした経験について述べているが、それに準じて国でも賃金カットが可能という考えなのか。可能だとするなら、職員が納得できる合理的な説明を求めたい。
 それに続いて自治労連の野村委員長は、「すでに財務省は地方交付金の削減に言及している。震災以後、自分のことは後回しで住民本位で復旧・復興に取り組んでいる職員の努力を無為にするもの。地方への引き下げの強要は地方主権改革の精神とも相反するものだ」と主張。さらに全教の北村委員長は「復興財源の全体像が決まる前に人件費だけが取り上げられるのはおかしい。理解を得られる話し合いというなら、ゴールを決めてやるべきではない」などと主張しました。

 これを受けて、大臣は「本当に異例のことで、心苦しい気持ちを満ちながらの提案であり、皆さんからの厳しい意見・反論は重く受け止めたい」と述べたうえで、以下のように回答・コメントしました。
 ● 民主党の総人件費2割削減方針は、選挙を戦うさいに示された政策であり、民主主義の論理からすれば、その実現にできるだけ努力するのは一つの原則と考える。また、この方針の背景には財政問題と国民感情もあろう。
 ● 公務員の数は仕事の量との関係で決まり、公務員の数だけを減らせばよいというものではない。減らすなら仕事を軽減すべきであり、それについては定員管理の中でこれまで同様、仕事を見直しながら定員も見直していくことになる。
 ● 給与引き下げが消費の冷え込みにつながることは理論的には否めない。しかし、今回の震災で、予算については2次補正もかなり積み上げがあり、財政運営上、今後公的支出は増えざるをえない。それは全体の景気の上昇要素ともなる。
 ● 憲法違反かどうかは議論がある。鈴木内閣当時も経緯は異なるが人事院勧告と違う取り扱いを行った。私が鳥取県知事の時にはその時の議論も念頭に、議会の同意を得ながら(従来と異なる)給与決定をしたことがある。今回も公務員の労働基本権制約の中でどうするかという重要な論点を抜きにはできないが、強いていえば財政事情が険しく、平時ではない異例の状況であること、また25年度までの臨時的措置として期限を切った時限的措置ということで、一定整理している。
 ● 地方公務員との兼ね合いでは、今回の措置は国家公務員についてのものであり、政府として国家公務員についての結論と同時に地方公務員にも同様の措置を求めることは考えていない。それについては、昨年の人勧取り扱いをめぐる閣議決定で、従前と大きく異なり、地方公務員の給与への言及は本来おかしいと判断して廃止した経緯もある。今回も地公についてものをいうつもりはなく、その点は誤解ないように願いたい。
 ● 今回の措置は震災の復興財源確保を前提にするものではない。公務員給与については昨年11月の人勧処理の中ですでに引き下げを表明している。当時も財政事情や国民感情などを念頭に検討し、通常国会に引き下げ法案を提出することにしていたが、そうこうするうちに大震災が発生し、巨額の財源が必要となった。結果的に公務員給与の削減分がそれに使われることはあるが、復興財源のために「まず隗(公務員)より始めよ」というようなことではない。
 ● 結論ありきというが、前々から引き下げの考え方はお話しており、できるだけ理解と協力をお願いしたい。本日の話し合いもそのためのものだ。

 最後に、宮垣委員長は「我々の主張に対する見解も伺ったが、納得のできる説明とはいえない。引き続き検討し、合理的な説明や考え方を示すべきだ。労働組合との合意をめざすというのならば、今後、誠意ある交渉・協議を求めたい。本日は、入口に過ぎず、具体的な内容が示された段階では、改めて必要な意見をのべたい」と主張。それに対し、大臣は「このような問題がすんなり受け入れられないことは重々承知しているが、意のあるところをくんでほしい。本日のところは立場が開いているが、話し合いは有意義であった。近日中に具体案を示したい。その段階で改めて話し合いたい」と述べました。
 なお、交渉終了時に「公務員賃金の引き下げに反対する要求署名」を提出。同署名の総計は既提出分を含め125,457筆分となりました。

以上
 
 
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