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国公労連速報 2011年5月17日《No.2544》
 政府が公務員給与削減で具体案提示
 「納得できる説明なしで具体案に入れず」
     
 

 

 国公労連は、17日、公務員給与引き下げ問題をめぐり、13日の正式提案を受けた政務官交渉を実施しました。交渉には岡部書記長を責任者に総勢10名が参加(今回は、交渉委員として自治労連の猿橋書記長、全教の今谷書記長も出席)し、政府側は内山政務官が対応、総務省側からは村木人事恩給局長らが出席しました。

 冒頭、内山政務官は「前回、国公労連から引き下げ反対が表明された。それについては引き続き話し合いたいが、本日は大臣が俸給・ボーナスの1割カットを基本にと述べた具体的内容について提案したい」として、別添の内容を説明しました。
 説明を受けて、岡部書記長は「具体的数字をふくむ提案だが、我々が前回指摘した疑問点に納得できる説明がないまま、具体的な話し合いに入るわけにはいかない」と前置きしつつ、@財政事情と総人件費2割削減方針との関係(財政破綻の原因や責任の所在を明らかにし、再建のための全体計画を明らかにした上で提案すべき)を明確にすべき、A地域経済や景気への波及、大震災で消費マインドが冷え込む中での政策として問題が大きい、B被災地で自らのことを後回しに奮闘している職員への挑戦ともいえるようなやり方ではなく、緊急増員をふくむ行政体制の拡充こそが今政府としてやるべきことではではないか、C一方的に閣議決定されても対抗手段もない以上、現行制度によらない賃下げ提案は決定ルールとして重大な問題がある――と主張。改めて政府側の見解を求めました。
 これに対し、政務官は「交渉には誠実に対応する。自分は2割削減のマニュフェスト作成にはタッチしていないが、それは財政健全化の着眼から人件費も応分の寄与してもらうという発想からのものと考える」、「よい仕事をしていながら給与を削減されることでモチベーションへの影響はあるが、財政再建のために公務員にも協力をお願いしたいということだ」、「ルール問題に関しては、同時に交渉権を与えるべく(措置の終期は)平成25年までとしている」などと回答。
 さらに人事恩給局長は、それを補足する形で、「給与の1割削減の考え方は、震災前から財政事情が厳しく一定の人件費削減が必要との観点から閣議決定に盛り込んだもの。震災で当然、復興支出が必要となるなどさらに厳しくなり、改めて給与引き下げを提案したもの」、「今回は人件費2割削減のうちまず給与について1割という提案であり、地方公務員の実例も参考に、このあたりがギリギリの線として提案したもの。定員は復興との関係もあり、従来からの定員合理化はやるが、2割を念頭におく大幅純減に着手するのは困難と考える。その他退職手当などはそれぞれ国会提出時に整理したい」、「経済へのマイナス効果は否定できないが、政府あげて別途復興事業にとりくむことから歳出全体としてはプラスとなり、公務全体の支出の面でカバーできる」などと説明。

 この回答を受けて、組合側はさらに以下のように政府側に姿勢を厳しく追及しました。
 ○ 民間企業なら業績悪化の場合、当然経営責任の明確化が迫られる。政府は政権交代前後でだれも財政悪化の責任をとろうとしない。それなのになぜ、ルールを無視してまで、公務員に責任を転嫁しようとするのか。
 ○ 政府は公務員賃金が高いとか多すぎるという認識に立っているのか。誠意のある話し合いというなら、組合側から求めなくても財政事情などに関しても必要な根拠やデータをそろえたうえで提案すべきだ。今回の提案は地方公務員の例からみても極めて乱暴だ。
 ○ 民主党のマニュフェストは総人件費削減をムダづかいをなくすための政策と位置づけた。1割削減はそれが出発点というが、総務大臣は公務員の賃金はムダづかいではないとしている以上、マニュフェストを出発点にするのはおかしい。
 ○ 復興財源についての全体像も示されないまま、公務員賃金の削減だけが先行的に議論されている。さらに増税など広く国民負担の議論が必至であり、公務員は二重、三重に負担をおわされることになる。
 ○ 大臣は今回の措置は地方公務員には波及しないというが、地方交付税の削減などを通じて地公への影響は必至。また、地方を含めた、独立行政法人への連動はもちろん、医療、福祉関係、地域の中小企業への影響もある。一方で自衛隊は別枠との報道もあるが、政府が本気で考えているならその姿勢を疑う。
 ○ 被災者に向かい合いながら、避難所で寝泊まりして仕事を続けている教師や職員のこと、国民・住民のいのちと暮らしの守り手としての公務員の姿を思い浮かべ、懲戒処分による減給に匹敵する10%もの減額について真剣に考えるべきだ。

 これに対し、政務官は、以下のように再回答・コメントしました。
 ● 財政事情について納得いただける資料はいま持ち合わせていない。給与決定ルールの話しとともに持ち帰らせてもらう。次回までに関連資料を用意したい。
 ● マニュフェストが出発点ではあるが、公務員給与が高いから下げるということではなく、財政健全化の観点からの提案だ。
 ● 地方公務員給与への連動は一切ない。義務教育費へも影響を及ぼさない。交付税をしばることも考えていない。そんなことは提案していない。1割削減で満足しない動きはあるが、われわれは地方に波及させることをふくめそれを遮断している。
 ● 今回の措置は特別職の公務員も対象に入る。ただし、自衛隊の皆さんは復興の中で大変な業務で苦労されており、1割カットとなると国民がどうみるか。カットの対象ではあるが、何らかそれを補うものについて検討の余地を残している。

 最後に、組合側は「地方への影響はないといっても具体的担保がないのが問題だ」、「説明はいずれも納得できない。こういう時期に給与引き下げを提案する政府の姿勢が問題だ。労使関係法などにも意見があり、給与引き下げと抱き合わせで決着するなど現状では認められない。自衛隊給与の扱いとの整合性も一貫性がない。他方で、公務の職場では膨大な数に上る非常勤職員が共に働いているが、これへの措置を含めたトータルな考え方もない。いずれにしても、期限を設けての話し合いではなく、われわれの主張を踏まえた意味のある対話を求めたい」と強調し、政府側の再検討を求めました。
 政務官は「納得していただける話しができず残念だ。皆さんの大変な思いと立場は理解できる。本日のご主張は宿題として持ち帰り、できる限り回答に努力したい」と述べました。


《別添》

 一般職国家公務員の給与減額支給措置要綱(案)

T 俸給月額、俸給の特別調整額、期末手当及び勤勉手当の支給減額率
1 俸給月額
 @ 本省課室長相当職員以上(指定職、行(一)10〜7級)▲10%
 A 本省課長補佐・係長相当職員(行(一)6〜3級)▲8%
 B 係員(行(一)2、1級)▲5%
 その他の俸給表適用職員については、行(一)に準じた支給減額率

 ※1 平成17年給与法改正法附則第11条の規定による俸給(給与構造改革に伴う経過措置額)についても、俸給月額と同率で減額
 ※2 55歳超職員の給与減額支給措置(▲1.5%)適用後の俸給月額等についても、同率で減額

2 俸給の特別調整額(管理職手当)一律▲10%
3 期末手当及び勤勉手当 一律▲10%
4 委員、顧問、参与等の日当 一律▲10%

U 俸給月額に連動する手当等の減額支給
1 地域手当等の俸給月額に連動する手当(期末手当及び勤勉手当を除く)の月額は、減額後の俸給月額等の月額により算出
2 超過勤務手当等の算出基礎となる勤務1時間当たりの給与額や休職者の給与は、減額後の俸給月額等の月額により算出
 ※扶養手当、住居手当等の俸給月額に連動しない手当については、減額の対象外

V 給与減額支給措置期間の終期
 平成26年3月31日

 ◎国公労連注:なお、退職手当については、@今回の措置が臨時・異例のものであることから、長期勤続報償の性格をもつ退職手当への反映は行わないこと、A今後、退職手当水準の官民比較調査を人事院に依頼し、その結果に基づいて検討したいと考えている(着手の時期は民調の遅れもあり調整中)――という口頭説明が別途ありました。

以上
 
 
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