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 国公労連速報 2011年6月2日《No.2561》
 給与法案・勤務時間法案にかかわって推進事務局を追及
 ――法案要綱をめぐり書記長クラスで2度目の審議官交渉
     
 

 

 全労連公務員制度改革闘争本部は5月31日、公務員制度改革関連法案をめぐって2度目の推進本部事務局との交渉をおこないました。
 交渉では、協約締結権回復のもとでの給与法案、勤務時間法案をめぐって、過日、提出した「要求書」にそって回答を求めるとともに、前回の交渉でさらに詰めるべき点について、推進事務局の見解を質しました。

 法律事項は基礎事項に限定し、労使交渉の結果は広く反映を

 推進事務局との交渉には、闘争本部から、黒田事務局長、猿橋(自治労連書記長)、今谷(全教書記長)、岡部(国公労連書記長)、蟹澤(全教書記次長)、鈴木(自治労連中執)、瀬谷(国公労連中執)の各闘争委員が参加し、推進事務局は、笹島審議官、村山参事官ほかが対応しました。
 はじめに、「要求書」にかかわって、以下のように回答しました。(○−要求、●−回答)

  • 関係法の整備にあたっては、国家公務員の労働条件決定にあたって、現行の人事院勧告制度を廃止して自律的労使関係制度を確立するという今次国家公務員法改正の目的をふまえる必要がある。少なくとも、以下の点を確認して検討するよう求める。
    1. 労使交渉の結果をできるだけ勤務条件に反映させるには、法律事項は基礎事項に限定し、政令以下で決定できるようにすることが望ましい。
    2. 憲法第27条2項は、国家公務員の労働条件にも当然に適用されることから、公務員労働者の人間らしく働く権利を保障する立場での労働条件基準は、個別法の検討でも重視される必要がある。
    3. 国家公務員の労働条件決定とかかわる国会の権能については、情勢適応の原則と財政民主主義の両面から検討することになる。
       現在でも、勤務時間法は業務運営に責任をもつ各省大臣が勤務時間割り振りの権限を有し、法令よりも人事院規則や各省省令等への委任事項が相当数ある一方で、給与法では、俸給表はもとより、諸手当の支給要件の詳細まで法律にしている。そのような異なりは、関係法整備にあたっても前提にすべきである。
  • ご指摘の点はいずれも重要な考慮要素であると考えている。最も代表的な勤務条件である給与を例にとれば、「労使関係の自律性の確立のためには、使用者が給与の在り方について、職員の意見を踏まえつつ、機動的かつ柔軟に決定できる仕組を確立する必要があることから、政令改正により給与の額等を決定・改定できるよう政令委任範囲を拡大する見直しを行うべき」という視点と、「@租税等により賄われる国家公務員の給与の在り方については国会審議等を通じ国民の理解を得ていく必要があること、A給与水準等は公務への人材確保の重要な要素であり、ひいては行政サービスの質を左右すること、B職務給の原則を実現する必要があることから、少なくとも給与構造の骨格は法定が必要である」という視点との双方の要請を満たす必要があり、どのようなバランスを取った制度設計とすべきか難しい課題であると考えている。
     さらに、こうした検討を進めるためには、新たな枠組の下での団体交渉の実情を検証することも必要である。
     このため、法案では「政府は、この法律及び国家公務員法の労働関係に関する法律の施行の状況を勘案し、国家公務員法第2条に規定する一般職に属する職員の給与に関し、法律の委任に基づき政令で定める事項の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする」旨の規定を置き、政府としての検討姿勢を明確化したところだ。
     現行法における政令委任範囲の範囲やあり方は、自律的労使関係制度における団体交渉を開始するに当たっての労使双方にとっての「初期値」となるものであり、これを前提に交渉が重ねられていくものと認識している。
  • 公務員の労使関係法の整備にともない、いわゆる「チェックオフ協定」の規定(労働基準法第24条参照)を給与法案に明記すべきである。
  • 法案では、労働基準法並びの直接払い、全額払い及び現金払いの原則を一般職給与法に一覧的に定めるとともに、例外的に控除して支払うことができるのは、「法律に別段の定めがある場合」であることも明確に法定の上、現在、懲戒減給、通勤手当の返納額の控除について法定している。
     労働基準法第24条では、法令に別段の定めがある場合のほか、労働協約や過半数代表者との書面協定があれば賃金の一部を控除して支払うことができることとしているが、@非現業国家公務員については、労使関係をめぐる制度を設計する上でも、勤務条件に関する国会の民主的コントロールが存在することも前提に、一定の統一性をもって考えざるを得ないこと、A団結権制限職員の存在を考えると、過半数代表者との書面協定を要件とする制度の導入には慎重にならざるを得ないこと、Bチェックオフについて、ある職場では可能、他の職場では不可能といったことになれば、給与事務の統一的な運用に当たっての阻害要因が増えることとなり、業務管理コストの観点からも望ましくないこと等から、国家公務員法制において労働基準法並びの措置を講ずることは困難と判断した。
     なお、自律的労使関係制度の下、指摘のような制度設計が中央交渉の議題となり得ることを否定するものではない。
  • 級別定数の改定は、各府省の組織及び業務運営ともかかわることから、「予算の範囲内で、各任命権者の意見を聴いて、政令で定めるところにより」と改正すべきである。
  • 級別定数の改定は、組織・定員の改廃や増減に即応して行われる受動的なものであり、現在、人事院規則に基づく指令によって統一的に定める形が採られている。自律的労使関係制度の措置に伴って、内閣総理大臣(公務員庁)が級別定数の改定を担うこととなるが、級別定数自体の法律上の性格が変わるものではないことから、新たに「各任命権者の意見を聴いて」と規定する必然性に乏しい。
  • 現在の給与法は、法レベルで規定にするにはあまりにも詳細な規定を置いている。例えば、地域手当にかかわる特別の措置、広域移動手当の距離規定、通勤手当などは、法と政令との仕分けを検討すべきである。
  • 十分に理解できるが、他方、例示されている手当の関係でも、過去の調整手当の異動保障の在り方や、通勤手当の支給単位期間の在り方については、国会での議論を契機とした制度改正が行われてきており、自律的労使関係制度の施行後、現在の法定事項の範囲を出発点として労使間での協議も踏まえて検討されるべきテーマと認識している。
  • 勤務時間等に係わる内閣総理大臣の責任を「総合調整」としているが、それでは不十分である。少なくとも、旧法での人事院の責務も参考に、内閣総理大臣も「職員に適正な勤務条件確保の責務」を負うことを明記すべきである。具体的には、「事務の運営に関し、職員の適正な勤務条件を確保し、統一保持上必要な調整を行うための必要な総合調整を行うものとする」と法案で明記すべきである。
  • 職員の適正な勤務条件の確保に努める責務を負うのは、各機関の事務を統括し、職員の服務を統督する各省各庁の長であり、人事院勧告規定に係る「職員の適正な勤務条件を確保するため」という部分が、人事院及び人事院勧告制度の廃止に伴い削除されても、各省各庁の長の責務に変化はない。
  • 勤務時間割り振りについて、「労働組合(職員の過半数代表)との協議」を明記すべきである。具体的には、変形労働時間などの特別の勤務時間については、各府省は、内閣総理大臣との協議の前に「対象職員の過半数を組織する労働組合もしく過半数の職員の同意」を得る必要があることを規定すべきである。
  • 各省各庁の長はご指摘の特別の勤務時間について、認証された労働組合から勤務時間割振りについて適法な団体交渉を申し込まれた場合、応諾義務を負い、各省庁レベルの団体協約締結に係る経過措置期間終了後、各省各庁の長が正当な理由なく団体交渉を拒否した場合、認証された労働組合又はその構成員である職員は中央労働委員会に対して申し立てることができるものである。
  • 超過勤務とかかわる条文は、労働基準法第36条に準じて整理しなおすべきである。具体的には、労働組合もしくは職員代表との協議及び内閣総理大臣への事後の届け出を明記すべきである。「年、月、週」単位の上限時間を指針において定め、指針遵守の責務を任命権者が負うことを明記すべきである。また、指針制定に当たっての労働組合及び各府省代表からの意見聴取や、労働組合との「書面協定」(地方公務員法第55条9項に準じた署名協定)の規定を明記すべきである。
  • 公務のため臨時又は緊急の必要がある場合における対応を考えれば、労働基準法第36条に準じた整理を行うことは困難である。
     超過勤務の縮減のための指針の内容は、現在の人事院局長通知の内容等をベースに法案成立後、施行までの間に、国会審議の状況や職員団体及び各府省等の意見を踏まえつつ、定めていくことになる。その際、上限時間をどのように定めるかは重要な論点である。指針に直接的な規範的効力はないものの、@公務員庁は、各行政機関において指針に基づく人事管理を推進することになること、A職員が超過勤務命令に関する行政措置要求を人事公正委員会に対して行った場合、指針の内容を参酌した審査がなされることも予想されること等から、各省各庁の長は、実質的には指針に沿った対応を取ることが期待できる。
  • 介護休暇については、特別休暇などと比較しても法定事項が詳細であり、同条2項(休暇の期間)については政令事項とすべきである。
  • 民間労働法制との関係上、基本的な性格付けや上限について、非現業国家公務員についてどのような制度となっているのかを法律上明示する必要があるのではないかと思料され、この点について慎重な議論が必要と考える。

慢性的な超過勤務を規制するために「36協定」は検討すべき

 この回答に対して、交渉団からは、「法理論上はスジが通っているかもしれないが、自律的労使関係制度といいながらも、労使間で何をどうやって決めるなどかが限定されている。職場で勤務条件が交渉によって決められる制度にすべきであり、このままでは、がんじがらめになって交渉の余地はせまい。本当に使える制度なのか危惧する」と追及すると、笹島審議官は、「公務の制約のなかで、どこまで法律から政令に落としていくのかは、議論があるところだ。一定の整合性をつくって、労使間で一歩ずつすすめる必要がある。その場合でも、国民の理解をえてすすめていく点が重要だ」とのべました。
 これに対して、交渉団は、「たとえば、民間では『36協定』で超過勤務を労使間の話し合いで規制しているが、公務の場合は、こうした制度がなく、そのことで無定量な超過勤務がまかり通っている。自律的労使関係制度と言うのなら、労働条件を改善する方向で法律も検討されるべきではないのか」とせまりましたが、笹島審議官は、「主張は受けとめる。勤務時間の割り振りは、各省ごとに交渉で決めることができる。臨時又は緊急の場合は使用者が超過勤務を命じることができる公務の特殊性から、36協定は困難だ」と退けました。
 交渉団は、「臨時でも緊急でもないのに、超過勤務が常態化しているのが実態だ」と指摘したことに対して、笹島審議官が、「超過勤務縮減は、内閣総理大臣が指針を定めることになっている」とのべると、「いくら総理大臣が指針をさだめても、実効性があるのか疑問だ」とかさねて懸念を表明しました。
 級別定数の改定について、「管理運営事項として取り扱われれば、交渉議題とならない場合も出てくる。各府省の任命権者の意見を聞くことによって、各省における交渉の成果も反映されることになる」と追及しましたが、「新たに任命権者の意見を聞くことを規定できないが、現在、人事院と各省がやっているようなことは、これからも同じだ」と回答するにとどまりました。

交渉上の「管理運営事項」の取り扱いは各府省に周知徹底

 交渉では、前回の国公法、国公労働関係法をめぐって焦点となった、管理運営事項にかかわる交渉での扱い、内閣の事前承認制についてあらためて議論しました。
 交渉団からは、「管理運営事項であることをタテに交渉拒否が実際に起きている現状をふまえれば、新しい労使関係をつくっていくうえで、管理運営事項の処理によって影響を受ける勤務条件は、交渉対象にできる旨を法定化すべきだ」と求めたことに対して、笹島審議官は、「管理運営事項の処理によって影響を受ける勤務条件に関する政府見解は堅持する方針であり、法案成立後、政府見解の趣旨を各府省にあらためて周知徹底したい」とし、その方法は、「みなさんとも意見交換しながら具体化する」と回答しました。
 さらに、協約締結前の内閣による事前承認は、「そのタイミングが問題であり、交渉の当初段階で、使用者側の責任者が事前承認された内容にしばられて交渉することは、自律的労使関係を阻害することになる」との繰り返しての指摘に対しては、「実際の交渉では、さまざまな段階において労使間で一つ一つ積み上げていくことになる。現実には、団体交渉が実質的に終了した時点の団体協約締結前の事務手続きとして事前承認がおこなわれるというイメージだ」と回答し、労使間の自由な交渉をしばるものではないことを強調しました。
 交渉団は、「事前手続きとするならば、そこにいたるまでの使用者としての責任が求められる。とくに、財務当局に対して強く主張するなどの立場も必要だ。運用面でも懸念されることは多く、引き続く議論していきたい」と求めました。
 最後に、交渉団から、「法案要綱をめぐって2回交渉してきた。要求書を提出し、法案の修正も求めてきたが、十分に応えてもらえなかったことは不満が残る」と指摘したうえ、「今日の回答は持ち帰らせてもらい、闘争本部として検討させていただく」とのべ、交渉を閉じました。

以上
 
 
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