全労連公務員制度改革闘争本部は6月2日、政府が今通常国会に提出を予定している公務員制度改革関連法案にかかわって、園田内閣府大臣政務官と交渉しました。
交渉では、2度にわたる審議官レベルの交渉では十分に要求に応えていないことへの不満を表明するとともに、公務員賃下げの交渉をめぐるなかで、政府が、「自律的労使関係制度の先取り」としていることへの問題点を指摘しました。
園田政務官からは、「公務員も憲法上は労働者であり、権利は保障されるべき」とし、その方向で今後も努力することがのべられました。
法案とりまとめは議論の到達点だが、まだ道半ばだ
園田政務官との交渉には、闘争本部から小田川本部長を先頭に、黒田事務局長、猿橋闘争委員(自治労連書記長)、国公労連から川村副委員長、全教から磯崎副委員長が出席しました。
はじめに、園田政務官は、「今般の公務員制度改革関連法案の核心を改めて申し上げれば、国民のニーズに合致した効率的で質の高い行政サービスを実現し、もって国民の信頼を確保するため、非現業国家公務員に協約締結権を付与するとともに、人事行政に責任を持つ使用者機関を設置することにより、労使交渉を通じ、自律的に勤務条件を決定していくことができる制度を築くことにある。これは60年間以上続いてきた第三者機関に依存した勤務条件決定の枠組からの歴史的な転換であり、その重みをあらためてみなさんと共有しておきたい」とのべました。
これに対して、小田川本部長は、次の点について表明しました。
- ○ 10年来の懸案であった公務員制度改革とかかわって、国家公務員の労働関係に関する法律案、国家公務員法改正法案をはじめ、関連法案までの取りまとめがおこなわれることは、議論の到達点、大きな節目と受けとめる。
- ○ そうはいっても、われわれの基本的な要求である公務員労働者の基本的人権としての労働基本権回復や、この間のILOからの数次の勧告などに照らせば、なお道半ばと言わざるを得ない。
消防職員の団結権や、地方公務員制度改革はもとより、団結権保障の範囲、団体協約締結権のより完全な保障、さらには争議権回復に向け、引き続の検討と努力を、この際、改めて要請する。
- ○ 「自律的労使関係制度に関する改革素案」や「全体像」をめぐる交渉・協議をふくめて、繰り返し指摘してきたように、労働組合の事前認証制や、管理運営事項を交渉対象事項からはずすこと、協約締結にあたっての内閣の事前承認が必要なことなどの問題点は是正されないまま法案化されることの問題点は大きい。
その結果、「自律的労使関係制度」が、労使間の話し合いのもとで労働条件を決めていく制度としては不十分な、中途半端なものとなり、実質的には公務員労働者の権利、労働条件が制約され、悪化を加速することすら懸念する。
そのような懸念もあって、法案検討段階でも、あらためて闘争本部として「要求書」を提出し、修正も求めてきたが、十分に応えていただけなかったことは不満だ。
- ○ 現在、政府が提案している公務員の賃金引き下げをめぐる「交渉」では、賃下げが必要な理由や、背景となる財政事情などについて、この間、労働組合に対してまともな説明もされず、「公務員総人件費2割削減」という政権党のマニフェストも背景にした政治的な「交渉」がすすめられている。
今回提出の公務員制度改革関連法案は、労使合意があれば、理屈も根拠もない労働条件不利益変更まで認めたものではないと思う。団結権さえ認められない労働者が多数であり、かつ、例えば賃金についての根本基準も明らかにされて、労働条件の激変を避ける仕組みになっているはずだ。
- ○ 今回の賃下げの交渉を、「自律的労使関係制度の先取り」と主張する向きもあるが、それは、今回の法案内容を全く理解していない。それだけ、政府内での意思統一が遅れているのではないか。そのことが、法運用段階に影響することを強く懸念する。国会審議の段階も含め、政府全体の考え方の統一と明確を求めておきたい。
公務員であっても憲法上は労働者であると確認されている
これに対して園田政務官は、以下の通り回答しました。
- ● 本法案に関し、全労連闘争本部のみなさんからは、「素案」「全体像」「法案要綱」の各段階で有意義なご意見をいただいてきた。
ご意見をふまえ、たとえば、「国家公務員の労働関係に関する法律案」において不当労働行為を禁止するとともに救済等の手続を設けたことや、「国家公務員法等の一部を改正する法律案」により改正される国家公務員法に、「職員に関する人事行政は、国民全体の奉仕者としての職員の職務遂行が確保されるよう、公正に行われなければならない」旨の人事行政の原則を明記したこと等は重い意義を有するものと考える。
- ● 消防職員の団結権については、前回もお話ししたが、総務省で対応しており、その後、政務三役と協議し、ヒアリングもおこなわれている。総務省の副大臣・政務官とも連携してとりくんでいきたい。
- ● 自律的労使関係制度について不十分とのご指摘があったが、まずは一歩踏み出すことが重要だ。運用面でも不十分と言われている点を補っていけるのではないか。使用者が真摯に応えていく努力が必要だと考える。また、不満な場合は仲裁手続き等も措置している。労使が向かい合いつつ、一歩一歩すすんでいくことが大切だ。
- ● 賃下げの交渉について、今回の公務員制度改革法案とは違う話だ。自律的労使関係制度の先取りということをどのような意味で発言しているのかわからないこともあり、コメントは差し控えさせていただきたい。
- ● 当然ながら、公務員のみなさんは、憲法上では労働者であることは間違いのないところであり、確認されてきている。財政民主主義などの憲法上の特殊性はあっても、労働者である以上、権利は保障されるべき。
その点は、国公法第1条で「職員の福祉及び利益の保護」が根本基準として示されているところだ。これをふまえて方向性を持って改革をすすめていきたい。
国会段階でも法案の修正要求などを検討していく
交渉参加者からは、「公務員も労働者との発言があったが、民間法とのへだたりなど、要求書で求めた内容が十分に反映されていないことは、やはり残念だ。その点で、交渉・協議は継続して必要だ。国会段階では、法案の修正もふくめて検討させてもらいたい」「地方公務員の制度を検討するうえで、文部科学省との交渉もすすめられるよう尽力を求める」「地方公務員の労使関係は多様であり、かつ複雑だ。国家公務員の制度は、基本法で5年間の期限があるが、地方公務員には期限がなく、調整がされないままに時間が経つ危険もある。政府全体として、地方公務員の制度を確立するために努力してもらいたい」などの意見がのべられました。
園田政務官は、「不十分なところはさらに検討し、国民にしっかりと理解してもらえる形をつくりたい。労働基本権については、公務員も国民の一人であり、みなさんにも協力いただき、政治と行政の信頼を得られるよう努力していきたい」とのべ、「政府としては、まずは明6月3日の閣議において公務員制度改革関連法案の国会提出を決定した上で、国会において、速やかに御審議の上、成立させていただけるよう最大限努力してまいる決意である」とのべました。
小田川本部長は、「決意は受けとめる。これからも議論していきたい。なお、前回も申し上げたように、総務省に対して、労働組合との協議ができるように意見をのべていただきたい」と求め、交渉を終えました。
なお、公務員制度改革関連法案は6月3日に閣議決定され、国会に提出されました。
以上
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