国公近畿ブロックは7月16日、自治労連近畿ブロックと共催でシンポ「『地域主権』改革でどうなる住民のくらしと公務の役割〜道路・河川やハローワーク移譲問題を考える」を97名の参加で開催しました。
「地域主権改革」は住民犠牲につながる
集会の冒頭あいさつに立った、自治労連近畿ブロックの松本議長代行は、この間、「関西広域連合」事務局への要請行動(7/13)や全国知事会への要請行動(7/15)の取り組みの中で、「地域主権改革」の問題点について指摘を行い、一方的な進め方は住民犠牲につながることから、住民や国の機関に働く労働者の意見もしっかり聞くように要請を行ったことを報告しました。
しかし、知事会への要請行動では、東日本大震災からの復興に係わって「高速道路ネットワークの整備促進」や「復興特区」を中心とする、およそ被災住民の要求とはかけ離れた内容の要請を、菅総理あてに行っていることが明らかとなりました。とりわけ「復興特区」は将来の「道州制」にもつながるものであることから、住民犠牲の押しつけとなる可能性があると指摘しました。
身近な自治体の消滅が復興の障害に
続いて、広原盛明氏(京都府立大学名誉教授・元学長)を講師に迎えて講演をいただきました。講演では、東日本大震災以降の最近の政治動向として、菅首相のパフォーマンス政治・ポピュリズム行動が目につくが、自身の延命化を図るだけのものであり、政治的求心力の失墜にしかつながらないと断じました。
また、過去の大震災では、その時々の政治姿勢の本質が見えてくるとし、関東大震災(1923年)の時は、「天皇制」と「私有財産制度」の護持を旨とする「治安維持対策」がしかれ、阪神淡路大震災(1995年)の時には、財界からの政策提言に基づく「新自由主義的構造改革」がスタートしたと指摘しました。阪神淡路大震災の際には、財界の戦略で「復旧ではなく創造的復興」方針の下、「大神戸計画に基づく神戸空港建設」などが進められるとともに、コミュニティを無視した市街地改造計画によって市街地復旧の歪みと遅れ、災害復興住宅における孤独死の発生、巨大開発事業の負の遺産(神戸空港・長田再開発など)をもたらす結果を招き、住民犠牲の施策が推し進められたと述べました。今回の東日本大震災においても、財界・政府の震災基本対策は、大震災を奇貨とする新自由主義的国土再編成の推進、「選択と集中の原理」に基づく「国土形成計画」と「道州制」の実現を推進する姿勢であると指摘しました。
最後に、今回の大震災では「地方分権」改革による深刻な地域矛盾が明らかになったと述べ、指摘しています。この間の平成大合併によって旧町村から役場が消え公務員が削減されたことから、「地域の非常事態に対応できるマンパワーと自治体の権限が奪われる結果となっている」とし、今後の復興にとっても「自治体の消滅が多大な障害となっていることが明白となっている」と問題を指摘しました。その上で、今回の大震災では「公務の役割・重要性」が広く国民に認識されていることから、政策変更が行われない限り広範な国民世論の批判に晒されることになると強調しました。
国民の命と暮らしを守るためには地域に根ざした国の機関が必要
記念講演に続く特別報告では、全建労近畿地本が菊池副委員長が「多くの府県にまたがる河川は調整が非常に難しく、国民の命と暮らしを守るためには、『地方分権』でなく地域に根ざした国の機関=地方整備局が必要」と述べ、また、東日本大震災対応において地方整備局が果たしてきた役割について説明を行い、近い将来に発生が予測される東南海・東海地震などに対する大災害には国の機関が重要であると報告しました。
また、全労働近畿地協の宮本事務局長は、職業安定所(ハローワーク)の移管問題で、「国民の勤労権の保障は国が行うという立場で運動をすすめてきた。近畿では「特区」を活用した地方への早期の移管が推し進められようとしており、引き続き「地域主権改革」反対に全力で取り組む」と発言しました。
地方自治体で働く労働者で組織する自治労連からは府県職部会の瓜生政策委員長が、「『地域主権改革』の方向は、地方自治のうち団体自治を強める方向はあると思うが、住民自治、住民との連携をどう強めるかの視点はほとんどない」と指摘しました。また、府県から市町村への権限移譲においては「地域主権戦略大綱の内容を先取りして移譲している」と述べ、結果として「自治体の裁量によって自治体間格差が広がる」との問題点が明らかになっていると報告しました。
管理レベルが維持できるかどうかは疑問
その後のフロア発言では、「橋下知事は『地方でできることは地方で』と予算・権限の移譲を強く求めているが、現在の国道の管理レベルを維持できるのかは、大きな疑問がある」(大阪府職労)、「ハローワークについて京都府知事は『元もと、府の施設』であり、『特区』制度を活用し"突破"していく、と発言している」(京都府職労)、「職員の身分にも関わる問題」(全経済)との意見も出ました。
近畿が先頭に立って頑張れ
集会の最後に、今回のシンポについて広原氏から「『公共の力』は、国民の生命を守る『砦』であることから、この事を広く国民にアピールしていかなければならない。財界や橋下知事はメディアを活用して世論をつくってきた。労働組合はこれを超える運動をつくり上げていかなければならない。この問題では近畿が先頭に立って頑張らないといけない」と、感想を述べました。
〈全建労近畿地本のニュースより転載〉
以上
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