11年人事院勧告の取り扱いをめぐって国会でも論争が開始されていますが、国公労連は27日午後7時から総務省政務官交渉を実施しました。交渉には宮垣委員長を責任者に自治労連の野村委員長、全教の北村委員長を加えた総勢14名が参加し、総務省側は主濱政務官が対応しました。
冒頭、宮垣委員長は、「9月30日に人事院勧告が出されて以降、これまでの政府の回答は、私たちが求めているものにはほど遠い内容だ。とりわけ人事院勧告の取扱いについては、実施のための法案提出を行わず給与臨時特例法案の成立に努める、というものであり、納得のできるものではない」と述べ、改めて政府としての回答を求めました。
それに対し、主濱政務官は、政府の立場から以下のように回答しました。
- 本年の人事院勧告の取扱いについては、去る9月30日の提出を受けて以来、政府部内で検討を続けてきた。
- その結果、明日予定されている第3回目の給与関係閣僚会議及び閣議において、国家公務員の労働基本権がなお制約されている現行制度の下においては、人事院勧告制度を尊重することが基本である一方、提出中の臨時特例法案が、@東日本大震災に対処する必要性等に鑑み、一層の歳出削減が不可欠であることから、臨時の特例措置として、今般の人事院勧告による給与水準の引下げ幅と比べ、厳しい給与減額支給措置を講ずるものであること、Aまた、その他の人事院勧告の趣旨も内包しているものと評価することができることなどを総合的に勘案し、人事院勧告を実施するための給与法改正法案は提出せず、既に提出している臨時特例法案の早期成立を期すものとする方向性で、政府としての方針が決定されるものと考えている。
- 皆さんにとっても非常に厳しい内容となるが、現下の厳しい状況を何卒ご理解願うとともにご協力をお願いしたい。
この回答を受けて、宮垣委員長は次のように反論・主張しました。
- 「人勧を実施するための法案は提出しない」との回答だが、政府は労働基本権が制約されている現行法の下では、基本的に人勧を尊重しなければならないはず。日本では国民の権利は法で守られており現行法の定めに従うべきと考える。また、使用者として職員の生活を守る責任からも、今年の勧告について、国公労連との誠意ある交渉・協議を行うべきであり、その前提として給与臨時特例法案の撤回を行うことを求める。給与臨時特例法案の提出に加え人事院勧告を無視することは「2重のルール違反」となる。
- 「給与臨時特例法案は人事院勧告の趣旨も内包する」との見解も述べられた。給与臨時特例法案はもともと「現下の社会経済情勢や厳しい財政事情を踏まえ、国家公務員の人件費を削減する措置」として提案されたものであり、情勢適応の原則に基づく人事院勧告とは全く性格を異にするものであり、引き下げ幅等の数値的なことで「内包する」とは詭弁にすぎない。
- 給与臨時特例法については、国公労連は一貫して、@財政事情悪化の責任を公務員に転嫁する総人件費2割削減に道理も根拠もないこと、A公務員賃金の引き下げがデフレを加速し、経済をいっそう冷え込ませて復興にも悪影響を与えること、B震災からの復旧復興を含め、全国で行政を支え奮闘している公務員の士気を下げること、C労働基本権が制約されている下で現行制度にもとづかない賃金引き下げは憲法違反であること、などを主張して撤回を求めてきた。
人事院も勧告の中で、@労働基本権が制約された状況のもとで国家公務員法第28条の定める手続きを無視していること、A反対を表明している職員団体があること、B給与減額支給措置が行われる間労働基本権制約の代償措置が本来の機能を果たさないこと、などの問題点を改めて指摘し、強い懸念を表明したが、当然の主張であると考える。
- 人事院勧告を見送ることは、明確な憲法違反だ。過去の判例でも、将来への展望を欠いたまま数年間も実施されないような状況となり、人勧制度が労働基本権制約の代償措置としての本来の機能を果たさず、実際上画餅に等しいとみられる状態になった場合は、争議権の行使も適法・合憲との判断も示されている。
給与臨時特例法案は、労働基本権制約の代償措置で最も重要な人事院勧告に基づかない給与引き下げであり、かつ、人勧を無視し3年度間にわたり勧告に基づかずに給与を決定づけることからして「将来への展望を欠く」に十分なものであると考える。また一部の職員団体との合意を理由に強行するものであり、国家公務員法と憲法の規定に反していることは明らかだ。改めてその撤回を求めたい。以上の諸点について、改めて政務官の考えを伺いたい。
続いて自治労連と全教の代表は「特例法を理由に地方自治体の給与決定に対し不当な介入をしないこと」「国民生活第一、国会権力行使を制約する憲法の機能や平和主義の原理を大切にするという民主党の約束からみて今回の措置は重大な背信行為に等しい」などと主張しました。
それに対し、同政務官は、以下のように再回答しました。
- 「今回の人事院勧告の内容及び趣旨は、給与臨時特例法案の内枠であると評価することができる。」とは、給与臨時特例法案は、@東日本大震災への対処等のため、臨時の特例措置として、平均7.8%の削減を行わざるを得ないという状況に鑑みれば、今回の人勧のマイナス0.23%は、この内数であると評価できること、Aまた、減額率は職責に応じてグラデーション(係員級▲5%、中堅層▲8%、管理職層▲10%)を設けており、結果として、総体的にみれば、給与カーブのフラット化の趣旨も図られていると言えることから、人事院勧告の趣旨も内包していると評価できると考えている。
- 繰り返しになるが、給与臨時特例法案は、我が国の厳しい財政状況と東日本大震災という未曽有の国難に対処する必要性に鑑み、一層の歳出削減が不可欠であることから、臨時の特例措置として行うものであり、政府としては、改めて皆さんにも御理解いただきたいと考えており、また、国会において早期に成立させていただくようお願いしているところである。
- 自治体の給与は、地公法の趣旨によって各自治体が条例によって住民の納得が得られるよう自主的に決定するものであり、国と同様の強制は考えていない。
最後に、宮垣委員長は「本日の回答を受け止めることはできない。改めて給与臨時特例法案の撤回と公務労働者の労働条件の改善を求める。明日の閣議で決定されるとのことだが、このように大きな隔たりがある中であえて決定する政府の姿勢に強く抗議する」「これまでの交渉での私たちの主張が理解されず政府はあくまで給与臨時特例法案を強行する構えだが、この結果は職務に専念している組合員に説明しようもない。国会での審議段階では、各議員にも訴え、政府私たちの主張のどちらに大義があるかを判断してもらうと同時に国民にも判断してもらうため、私たちは最後まで努力するつもりだ」と強調し、本日の交渉を締めくくりました。
以上
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