人事院の公平審理が9月に一巡し、早ければ年度内にも判定が行われる緊迫した局面となっている11月17日、国公労連社保庁不当解雇撤回闘争本部は人事院に対する要求行動を行いました。全労連傘下の各単産と社保庁不当解雇撤回対策会議のメンバーである北海道、東京、愛知、京都、愛媛の各県労連代表、JAL不当解雇撤回裁判原告団、民主団体の仲間も駆けつけ、約200人が人事院に対して公正・公平な早期判定を求めました。
主催者あいさつした国公労連の宮垣中央執行委員長は、社保庁職員の厚労省への転任面接にあたって厚労省が「裏マニュアル」を作成し、職員を選別していたことが明らかになったと批判。厚労省が調査結果として「面接への配慮に欠けていた」と報告した点にふれ、「これは、いかに不公正で客観的を欠く面接と選別が行われていたことを示すものであり、『影響がなかった』ですむ問題ではない。人事院が、この間の口頭審理で明らかになった事実にもとづいて、毅然と分限免職処分取り消しの公正な判定を出すことを強く求める」と力強く訴えました。
激励のあいさつに立った京都総評の吉岡事務局次長は、「京都では夫婦そろって分限免職された人もおり、怒りを感じる。私たちは京都農協労組の解雇撤回闘争にもとりくんでいる。すべての解雇撤回闘争の勝利めざそう」と呼びかけました。愛労連の榑松議長は「公的年金は国民の権利なのに無年金者が増加しており、国の責任で直接運営するべきだ。525人が分限免職されたが国家公務員には雇用保険がないため、どうやって生活していけばいいというのか。社保庁不当解雇を断固として撤回させるため、愛労連は奮闘する」と訴えました。JAL不当解雇撤回裁判原告団の井原さんは、「マスコミの報道と真実は全く違った。国が分限解雇するとは断じて許せないし、国民はそんなことは全く望んでいない。公務と民間が一つになり、勝利までたたかおう」とエールを送りました。
解雇された当事者の全厚生闘争団の國枝事務局次長は、「雇用を守るべき国が解雇すれば、民間でも雇用が守られなくなる。働くルールをつくるたたかいとしても、勝たなければならない」と力強く決意を表明しました。
最後に全厚生闘争団当事者の愛媛闘争団・児島文彦団長の音頭でシュプレヒコールを行い、「人事院は追加の証人尋問を行え」、「人事院は公正・公平な判定を早期に行え」、「社保庁職員の分限免職処分は取り消せ」と怒りを込めた要求を人事院にぶつけました。
人事院は追加の証人尋問を迅速に行え
全労連が人事院に要請書を提出し、公正判定求める
人事院に対する要求行動の後、全労連社保庁不当解雇撤回対策会議メンバーと国公労連、全厚生闘争団は人事院に対して要請を行い、人事院事務総局の埒(らち)調査職が対応しました。
要請にあたって全労連の根本副議長は、「社保庁職員の雇用と身分の確保を求める要請」署名1,343筆と、今年9月から始めた「旧社保庁職員の解雇処分の取り消し」を求める署名15,870筆を提出するとともに、「旧社保庁職員の分限免職処分の取り消しを求める要請書」(別紙)を提出し、「社保庁の解雇事件は国による解雇で非常に重大な問題。国家公務員の解雇は法で制限されているにもかかわらず解雇回避努力がほとんどなく、意図的に解雇したといえる。解雇の不当性は審理で明らかになった。追加証人申請を受け止め実態を明らかにし、速やかに処分を取り消してほしい」と述べました。
秋田県労連の佐々木議長は、「秋田の病院でも分限免職が行われており、社保庁の真似をしていると思われる。公務員を守る労働法制がなく、理論作りが必要。人事院本来の働きを行って欲しい」、愛労連の榑松議長は、「公務員の労働基本権がない中、分限免職を行う際のルールが民間の整理解雇と比べて不足している。懲戒処分歴のある人が年金機構に採用されなかったことは懲戒免職に等しいが、業務目的外 閲覧行為が免職に値するのか疑問だ」と述べました。
また、自治労連の平野中執は「今回の分限免職を悪しき前例にしてはならない。民営化される中、分限免職が出てくると地方公務員に悪い影響を及ぼしかねず、我々は憂慮している」、全教の米田中執は「解雇回避努力がされていると思えない。過去の懲戒処分で完結しているのに、懲戒処分歴のある者を年金機構に雇わないとした対応は、むしろ信頼を失い、国民に与える影響は大きい」と発言。北海道労連の湯本副議長は「不祥事を犯した人が免職されたと思われ、人権問題が起こっている」、岐阜県労連の蒲副議長は「厚労省転任の面接資料では、岐阜の当事者は高評価であったが厚労省に転任できなかった。1回懲戒処分を受けている人がそのために分限免職となったのはいかがなものか」と発言しました。
参加した当事者も全員が発言。児島さんは「解雇撤回の要請署名のお願いをしたら、どんな悪いことをしたのかと言われた」、北久保さんは「人事院は2011年9月に私の懲戒処分を取り消した。審理は2009年6月に終わっており、判定が早ければ年金機構に採用されたはず」、松本さんは「幹部職員は処分されず、末端の職員が処分された。弱い者に責任をなすりつけるものだ」、伊藤さんは「厚労大臣は証言に立つべき」、國枝さんは「今回の解雇は、組織変更に乗じた大量不当解雇だ。病気休職者や育児休業者を解雇したことは、分限免職の人選について公正・公平性を欠くもの」と訴えました。
全厚生の飯塚顧問は「政治的思惑の中で首切りが行われたことを受け止めて欲しい」、杉浦書記長は「事追加証人尋問を職権で行い、勇気を持って役割を果たして欲しい」と発言。
国公労連の川村副委員長は、「当初から欠員を生じた年金機構は今も混乱している。この実態をみて人事院は分限免職の問題を判断する必要がある。東京弁護団は10月3日に公平局に追加証人を申請したが、1ヶ月以上ほったらかし。行政手続法上も問題だ」と人事院の姿勢を質しました。
参加者からの要請を受けた埒調査職は、「要請について受け止め、各担当局にお伝えします」と述べるにとどまりました。最後に、榑松議長が「今回の処分は政治的になされた。社保庁幹部や政府の責任を回避し、職員に責任を転嫁した。行政が政治的であってはならないと伝えて欲しい」、川村副委員長が「この問題は人事院の使命に関わる問題であり、公平局だけでなくすべての部局、人事官にも伝えて欲しい」と述べて要請を終わりました。
第4回全労連社保庁不当解雇撤回対策会議開く
北久保さんの免職取り消し団体署名のとりくみなどを確認
要請終了後、全厚生書記局において第4回全労連社保庁職員分限解雇撤回闘争対策会議を開き、全労連と当事者のいる各地方労連、自治労連、国公労連、全厚生闘争団が参加しました。各地方労連参加者が各地でのとりくみなど報告するとともに、懲戒処分が取り消されたことを受けて厚労大臣あての「北久保さんの分限免職処分を取り消せ」団体署名のとりくみを確認。年度内にも想定される人事院判定の局面も踏まえて、人事院宛個人署名のとりくみなど単産・地方組織での運動を広げていくことなどを議論し、確認しました。
(別紙)
2011年11月17日
人事院総裁
江利川 毅 殿
全国労働組合総連合
議 長 大黒 作治
旧社保庁職員の分限免職処分の取り消しを求める要請
公的年金を担ってきた社会保険庁は、2009年末に廃止され、2010年1月に日本年金機構が発足した。その際、社保庁で働く525人の国家公務員が、厚生労働省によって分限免職されました。
日本年金機構は、発足後間もなく2年になろうとしていますが、今日に至るも正規職員や准職員に欠員を生じており、この間5000人を超える職員が入れ替わるなかで、専門性が著しく損なわれ事務処理の誤りも多発しています。これでは機構発足にあたっての「国民の信頼を基礎として常に安定的に実施されるべきもの」とする基本理念に反するだけでなく、国民の年金権保障さえもが危うくなるばかりです。その背景には多数の社保庁職員が年金機構に採用されず年金業務に習熟した職員が決定的に不足していることにあります。
国民が安心し信頼できる年金制度とし、専門的、安定的な業務運営体制を維持確立するためには、年金機構を希望する旧社保庁職員を正規職員として採用し、その経験と能力を存分に発揮させることが不可欠です。
しかるに日本年金機構の発足に伴う社保庁職員の扱いについては、貴院での口頭審理の結果、厚労省配転、各省庁間配転が極端に少なく、分限免職の回避努力が不十分であったこと、個人面接も統一基準がなく面接官が意志的に評価していたこと、育児休業やメンタル不全で休職中の職員、夫婦がともに解雇されたことなどが明らかになりました。
最高裁判例法理として確立している、人員整理の必要性、解雇回避努力、人選基準の合理性、労働組合や当事者への説明責任など、整理解雇の4要件を満たさない解雇は違法であることは言うまでもありません。その点では、旧社保庁での不公正な分限免職が許されるなら公務、民間を問わず「解雇自由」となってしまうことが懸念されます。旧社保庁職員の分限免職は、まさに働くすべての労働者の雇用と生活に直接関わる大問題です。
全労連は、以上の立場から、貴人事院が、旧社保庁職員の分限免職処分を取り消す判定を下されるよう強く要請します。
以上
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