声 明
一、人事院は、本日、国会と内閣に対して、「1・07%、4054円」の官民逆較差にもとづき、一般職国家公務員の年収を5年連続で引き下げる給与勧告をおこなった。
月例給の2年連続の引き下げ、5年つづきの減となる0・25月もの一時金の大幅な削減、2年連続の扶養手当(配偶者手当)、住宅手当(持ち家)など諸手当の引き下げを含めて、国家公務員労働者の平均年収を過去最大16・3万円も減収させる勧告は、制度史上最悪のものであり、断じて受けいれられるものではない。
公務労組連絡会は、公務員労働者の切実な要求に背をむけた「賃下げ勧告」に対し、怒りをもって抗議するものである。
二、長引く不況のもと、750万人の公務関連労働者はもとより、民間労働者にも直接・間接の影響をあたえる勧告の社会的な影響力をふまえれば、デフレ不況打開にむけ、人事院には、「官民較差」にとどまらない積極的立場での検討がこれまで以上に求められていた。
しかしながら、人事院は、「民間準拠」との従来の姿勢に固執したばかりか、日本経団連の賃金交渉妥結集計1・65%(定昇込み)をはじめどの調査結果ともかけ離れた「官民較差」をはじき出し、公務労働者に民間をこえた賃下げをせまった。
そのうえ、4月にさかのぼって賃下げする「調整措置」を盛り込んだことは、労使合意ぬきの不利益変更や不利益遡及が今後いっそう民間でまかり通るなど、労働者の権利侵害におよぶ重大な問題をはらんでおり、再びその行為をくり返すことは到底容認できない。
また、一時金の期末手当からの引き下げは、勤勉手当の比重を高め、能力・業績主義強化にもとづく給与制度を先取りしたものと言える。一方、研究会の報告にもとづく地域給与の見直しでは、検討対象を国家公務員としているものの、地方公務員や教員給与にも影響がおよび、ひいては、地域経済への悪影響も懸念される。
これらを見ても、今夏勧告は、労働基本権制約の「代償措置」どころか、過日、目安額据え置きが答申された最低賃金制とともに、日本の低賃金構造を支えてきた勧告制度の役割をあらためて鮮明にしている。
加えて、年金給付カット、福祉施設運営費の切り下げなどにも波及して、国民犠牲の突破口に利用されてきた事実からも賃下げ勧告は重大である。
三、公務労組連絡会は、「マイナス勧告」阻止により「賃下げの悪循環」をくい止め、国民生活の改善、不況打開、地域経済の活性化をはかるため、国民共同のたたかいを追求してきた。とりわけ、人事院勧告・最低賃金の改善、賃金底上げのたたかいを一体的に取り組み、民間労組との共闘態勢の確立に力を尽くしてきた。
30万筆を集約した賃金改善要求署名、官民労働者が人事院・厚生労働省前に結集した「7・9中央行動」、3日間連続の座り込み行動、3500人が人事院前を埋めつくした「7・31中央行動」を通して、官民一体で人事院への怒りの声を集中した。
こうしたたたかいは、地方組織においても追求され、賛同と連帯の輪は地域から着実に拡大している。
賃下げ勧告は強行されたが、今夏季闘争では、今後の賃金闘争の発展につながる貴重な財産を築いた。
あらためて、職場・地域から奮闘された仲間のみなさんに敬意を表するとともに、民間労組のみなさんの熱い結集に心より感謝するものである。
四、勧告を経て、運動の重点は、使用者たる政府に公務労働者の生活と労働条件の改善をせまるたたかいへと移る。政府に対しては、賃下げの勧告を実施させず、労働組合との交渉・協議をつくすことをねばり強く求めていく必要がある。
また、地方人事委員会に「国準拠」で勧告を出させないことや、財政赤字を理由とした自治体職員の賃金カット、地方財政の切り捨てを許さないため、地域から共同したたたかいが重要となっており、公務労組連絡会がその先頭に立って奮闘することが求められている。
加えて、たたかう権利の剥奪が要求前進を阻んでいるもとで、労働基本権回復などILO勧告にもとづく民主的公務員制度を実現する課題がいっそう重要さを増している。
こうして迎える秋季年末闘争は、衆議院の解散・総選挙をひかえ、政治の流れが大きく動くなかでたたかわれる。そのなかで、公務労働者の生活改善はもとより、国民犠牲の小泉「構造改革」を許さず、国民共同の旗を高くかかげてたたいぬく決意である。
2003年8月8日
公務労組連絡会幹事会
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