04年人事院勧告にあたって(声明)
−−「俸給表水準引き下げ報告」の撤回を求める−−
人事院は、本日6日、一般職国家公務員に関わる給与等の勧告・報告を国会と内閣に行った。「較差は微小なもので、官民給与はほぼ均衡」として月例給改定を見送り、初の「ベアゼロ勧告」を行うとともに、民間企業では回復傾向にあるといわれる一時金についても、「支給月数が(官民で)おおむね均衡」として改定を行わなかった。
結果として、3年連続の月例給引き下げ、6年連続の年収マイナスという最悪の事態を回避できたことは、ナショナル・センター全労連に結集し、最賃闘争とも結合させて全国の職場・地域から公務・民間一体でたたかってきた到達点ともいえる。
しかし、人事院は、寒冷地手当について、250を超える地方議会の意見書採択にも示されている、地域と職場に広がった改悪反対の声を押し切り、機械的な「民間準拠」論による支給地域の切り捨てと支給額の切り下げなど、全面的かつ大幅な制度改悪を本年10月から実施する勧告を強行した。
加えて、民間賃金の低い地域と「均衡」させるところまで俸給表の水準を引き下げた上で、「地域手当」を新設して最大20%もの地域間格差を公務員賃金に持ち込む姿勢を示したほか、昇給カーブのフラット化をはじめとする年功賃金体系是正と「査定昇給」導入などの実績反映の給与制度への転換や、「本府省手当」の新設など機関間格差の拡大にも言及するなど、1985年以来ともいえる給与制度の大「改革」の具体化方向を打ち出している。
政府が6月に決定した「骨太の方針2004」で、「国家公務員賃金への地域の民間賃金水準の反映」が強調され、人事院にはその具体策を本年勧告で示すことが求められていた。そして人事院は、そのような圧力に屈したともいえる経過の中で、給与制度の大「改革」を打ち出した。
このように本年勧告は、地域の民間賃金水準を反映した給与制度改悪の先駆けである寒冷地手当改悪を含め、「賃下げ・給与制度改悪宣言」と一体での「ベアゼロ勧告」であるといえなくもない。そして、人事院が中立第三者機関としての役割を後退させ、地域に勤務する実施部門の国家公務員の賃下げに踏み出すことを宣言する転機の勧告ともなった。
国公労連は、人事院が進めようとする給与制度改悪に反対を表明するとともに、これまでの経過に照らして、あまりにも使用者・政府に偏った「給与報告」の撤回を求める。
人事院は、本日の「報告」で、育児を行う職員の部分休業の拡充、短時間勤務の導入、男性職員の育児参加促進策の検討などにも言及している。国公労連は、職業生活と家庭生活の両立をはかり、男女共同参画社会のもとで次世代育成をめざす施策の一環であると評価し、制度化と定着をめざすとり組みを強める。
また、「報告」では、政府が進めている「公務員制度改革」も意識して、能力・実績に基づく人事管理、再就職ルールの適正化やキャリアシステムの見直しなど、従来から問題意識を表明していた課題にも触れている。国公労連が検討を強く求めてきた非常勤職員の均等待遇や長時間過密労働の是正、サービス残業の根絶などの検討課題は素通りされており、使用者・政府の動向に迎合している一方で、公務員制度民主化の方向での検討課題も含まれている。国公労連は、このような「報告」の具体化検討に際し、民主的公務員制度確立をめざす立場から是々非々で対応する。
今夏勧告に向けては、6月15日の要求書提出以降、職場と地域を基礎にたたかいを強めてきた。2次(6/22、7/27)の中央行動には、延べ2000人(全体3500人)が結集し、3波(6/7〜16、7/12〜23、8/4〜6)の全国統一行動では、全ブロックでの人事院地方事務局包囲行動や、寒冷地手当改悪反対地域集会も積極的にとり組まれるなど、地域からのたたかいも前進した。また、賃金改善署名11.2万筆(全体27.3万筆)のとり組みも背景に、勧告直前までの人事院前座り込み行動など、ねばり強くたたかいを継続してきた。
さらに、「ブロック別給与制度」など政府自らが労働基本権制約の代償措置を踏みにじる暴挙に対して、政府への要求行動を例年以上に強め、総務省や内閣府等への申し入れや抗議行動も展開してきた。
これらのたたかいの反映が「ベアゼロ勧告」であり、寒冷地手当支給地域の切り捨てを一定押し返す結果につながったことは、確認しておく必要がある。
本中央闘争委員会は、厳しい職場実態や強まる公務員バッシングの中でも、切実な諸要求の実現をめざして、たたかいに参加された全国の仲間たちに心からの敬意を表明する。既に述べたように、給与制度改悪反対など、来年勧告に向けてたたかいを早急に構築しなければならない課題も明らかになっている。秋の臨時国会での寒冷地手当法改悪反対のとり組みなどとも結合し、給与の地域間格差拡大に反対するたたかいへの全国の仲間の引き続く結集を呼びかける。
改憲策動の強まりにも見られるように、旧来の制度、仕組みの破壊をあたかも「改革」と強弁する攻撃が熾烈になっている。国民のいのちと暮らしはもとより、憲法と平和・民主主義を守り抜くたたかいや、民主的行財政の確立をめざすとり組みとも一体で、国民的な共同闘争の前進によって局面を打開し、要求前進の展望を切り開くため、たたかいぬく決意を固めるよう心から訴える。
2004年8月6日日本国家公務員労働組合連合会
第7回中央闘争委員会
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