05年人事院勧告にあたって(声明)

−−政府・財界の総人件費削減攻撃に迎合する勧告に抗議する−−

 

 人事院は、本日、一般職国家公務員に関わる給与等の勧告・報告をおこなった。その内容は、本年4月時点の官民賃金が0・36%の逆較差であったとする「マイナス勧告」と、昨年報告で言及していた「俸給水準引き下げ分を原資とする地域給再編」などの「給与構造見直し勧告」を同時におこなうという極めて異例なものとなった。
 サラリーマン増税や消費税率引き上げなどの「大増税路線」を進める政府・財界は、その突破口に公務員の総人件費削減を位置づけ、人事院勧告に対する圧力を露骨にかけ続けた。「二つの勧告」は、結果として、政府の総人件費削減方向に迎合するものである。
 国公労連中央闘争委員会は、その点も含め、公務員労働者の生活切り下げを強制し、独立行政法人を含む730万人の人事院勧告準拠労働者にも直接的に悪影響を及ぼし、民間企業での賃下げに拍車をかけかねない「勧告」に、厳しく抗議する。

 7月26日に出された中央最低賃金審議会が、4年ぶりに2〜3円の「目安」改善答申をおこなったことにみられるように、賃金削減・制度破壊攻撃に対する労働者の反撃の成果が見えはじめていた。
 勧告の第1の不当性は、その流れに逆行する「マイナス勧告」をおこなったことにある。
 その「マイナス勧告」とかかわって、三度目となる不利益遡及の「調整措置」を勧告し、公租公課の負担増の影響をより強く受けている単収世帯の労働者に、相対的により多めの賃下げを強いる「配偶者手当カット」をおこなったことも不当である。

 勧告の第2の不当性は、人事院が2002年に「政府からの要請」を受け、研究会も設置して検討を進めてきた給与構造・地域給「見直し」を強行したことである。
 その最大の問題点は、現に支給されている俸給水準を引き下げて生じた原資をもとに、地域給再編や「俸給表のフラット化」をおこなうという「見直し」手法にある。
 また、人事院は、労働基本権剥奪の代償措置である勧告で、当該の労働者・労働組合の同意や納得を得ないままに、「賃下げをともなう給与配分の見直し」ができるのか、という点での説明責任も十分に果たしていない。地域間のいびつで不安定な民間賃金格差を公務員賃金の決定指標とすることへの国公労連の問題点指摘にも、まともに答えていない。
 「給与構造見直し」の内容論議も全く不十分であり、制度の運用主体である各府省段階での労使の状況認識も一致しないまま、勧告したことも問題である。

 国公労連は、昨年秋闘段階から、職場と地域のとり組みを背景に、「賃下げとなる給与構造・地域給『見直し』反対」を中心要求に、人事院との産別交渉に全力を挙げてきた。
 北海道、東北、新潟、福岡、大阪、愛知などの地域で、県労連や県公務共闘の規模での共闘組織が結成され、人事院包囲行動などがとり組まれた。地域経済への影響を強調してとり組んだ地方議会要請行動では、147議会で意見書採択がおこなわれている。また、署名や、節目毎の決議、要請文、使用者・当局追及などを職場から積み上げ、勧告直前には7・26中央行動を最大の節目に、数次の中央行動で人事院包囲を強めた。
 これらのとり組みが反映し、地域給(地域手当)の支給対象地域の当初案からの拡大、広域異動手当での「転居」要件の除外、枠外昇給制度廃止ともかかわる号俸延長の実施、55歳昇給停止措置の見直し、制度改変前の給与額を保障させる「調整措置(現給保障措置)」の5年間確保、などの前進面があることは確認したい。

 8月8日、小泉首相が「構造改革の本丸」と位置づけた郵政民営化法案が参議院で否決され、それを契機に衆議院が解散されて9月11日の総選挙実施が確定した。この総選挙では、改憲策動とともに、「大増税」や「公共サービス商品化」を加速する構造改革への賛否が最大の争点となり、総人件費削減施策の是非が国民的に問われることになる。
 したがって、国公労連は、05年秋闘前段の8月、9月の時期、不当な総人件費削減攻撃を許さないとり組みと、国政革新を求める労働組合の選挙闘争を一体で展開する。
 不当な二つの勧告への怒りを、諸悪の根本にある「構造改革」路線の流れを変える運動のエネルギーに転化し、全ての組合員が引き続き秋闘に決起するよう呼びかける。

2005年8月15日 

日本国家公務員労働組合連合会
第12回中央闘争委員会

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