2006年人事院勧告にあたっての声明
       
−−公務労組連絡会

 一、人事院は本日、一般職国家公務員の給与改定などにかかわって、官民の給与水準がほぼ均衡しているとして、月例給・特別給ともに据え置く勧告をおこなった。また、少子化対策が急務となっているなかで、三人目以降の子等の扶養手当改善や、育児支援のための短時間勤務制度の新設なども示された。
 06春闘では、景気の回復基調のもとで、自動車・電機など大企業各社の5年ぶりのベースアップや冬・夏のボーナス改善など賃上げにむけた明るい兆しが見え始めていた。また、「給与構造の見直し」による賃金水準の引き下げに加え、定率減税の縮小・廃止や社会保障制度の連続改悪のもとで、公務労働者の生活改善にむけた積極的な賃金改善こそ求められていた。
 しかし、人事院は、従来の「企業規模100人以上」ならば月例給で「1・12%、4252円」、特別給で0・05月プラスの官民較差があったものを、比較対象を「50人以上」にまで引き下げることで、ベースアップにむけた仲間たちの切実な願いを打ち砕いた。人事院によって意図的に作り出された「ベアゼロ勧告」に、怒りを持って抗議するものである。

 二、とりわけ、労働組合との十分な話し合いもないままに、「官民比較方法の見直し」を強行したことは、断じて認められない。
 今回の「見直し」は、二重にも三重にも問題を持っていた。その一つは、人事院が、みずからの説明責任を果たさず、「官民給与の比較方法の在り方に関する研究会」(以下、研究会)を隠れ蓑にしてきたことである。
 研究会の最終報告では、公務にふさわしい給与の在り方、人材確保などの視点はなく、まさに「賃下げ」という結論を導き出すためにつくられた研究会であった。その報告を金科玉条にして、40年以上続いてきた現行方式を変更する合理的な理由が何ら示されることなく、比較企業規模引き下げが強行された。
 さらに、64年の池田首相・太田総評議長による政労トップ会談を通して、現行の「企業規模100人以上」とする比較方法への改善がはかられた経緯からすれば、不利益変更は「政労交渉」によって決着されるべきほどの重みを持った問題であり、公務労組連絡会も繰り返しそのことを要求してきた。しかし、そうした努力は、最後までおこなわれることはなかった。
 これらは、将来にわたって重大な問題を残すものである。公務労組連絡会は、不当な勧告の実施を許さず、使用者・政府に対して、「100人以上」の比較にもとづく賃金改善を要求してたたかうものである。

 三、比較企業規模の見直しは、「骨太の方針」で示された政府の要請でもあった。人事院は、「小さな政府」をめざす政府方針に全面的に迎合し、従来のような配分の見直しにとどまらず、比較方法そのものの変更による総額人件費削減の方向へと踏み出した。
 「構造改革」の推進に手を貸し、政府の圧力に屈した人事院には、労働基本権制約の「代償機関」としての役割と責任を果たそうとする姿勢はどこにも見られない。

 四、今後、「骨太の方針」や「地方公務員の給与のあり方に関する研究会」報告ともかかわって、勧告は、地方公務員や教員給与の引き下げにむけた動きを加速させ、さらには、民間賃金にも悪影響をおよぼし、「賃下げの悪循環」に拍車をかけることとなる。
 そのことから、公務労組連絡会は、夏季闘争では、公務・民間の共同を最大限に重視するもと、「人勧・最賃」を一体にした中央行動では官民あわせて総計6千人が結集し、地方でも、官民共同の集会・デモ、人事院包囲行動がたたかわれた。
 また、民間労組にも呼びかけた「給与改善署名」は、21万筆を超えて集約された。加えて最終盤では、人事院前の座り込み行動でたたかいぬいた。
 あらためて、職場・地域から結集された仲間のみなさんの奮闘に心より敬意を表するものである。

 五、労働組合の納得と合意もなく比較方法見直しが強行されたことで、あらためて、公務員労働者の労働基本権回復が重要課題となっている点が指摘できる。政府は、労働基本権にかかわる専門調査会を立ち上げ、検討を開始した。政府に対して、公務員労働者の権利の全面的な回復を強く求めるものである。
 来るべき秋季年末闘争では、公務労働者の権利も踏みにじる不当な勧告をはね返すたたかい、地方公務員、教職員、独立行政法人職員などすべての公務・公共業務関連労働者への賃下げの連動を許さないたたかいに、中央・地方が一体となって奮闘していくことが求められている。
 さらに、秋の臨時国会では、教育基本法改悪法案、国民投票法案などの審議がねらわれるもとで、国民共同のたたかいで悪法を粉砕するため全力をあげる必要がある。
 公務労組連絡会は、国民・住民のいのちと暮らしを守り、憲法を守る使命を持つ公務労働者として、賃金・労働条件を改善するたたかいと結合させ、憲法・教育基本法の擁護、国民犠牲の「構造改革」阻止へ組織の総力をあげて奮闘する決意である。


 2006年8月8日


公務労組連絡会幹事会 
 

TOP