2001年11月7日《No.51》
行革推進事務局「原案」を発表
キャリア特権の「合法化」、「能力」重視の信賞必罰人事への改革に固執

 国公労連は11月6日夕、行政改革推進本部から新人事制度の原案を受領し、交渉を行いました。交渉には、小田川書記長を責任者に国公労連から5名参加し、推進事務局側は高原参事官ほか2名が参加しました。
 主なやり取りは次のとおりです。(※○は国公労連、●は推進事務局側)

 【原案の性格について】
○この原案の性格付けはどうなるのか。基本構造が出てから、国公労連としてもいろいろ質問もしてきたが、これに対する中間的な回答と理解していいか。
●原案は、12月に予定している「公務員制度改革の大綱(仮称)」を固めるための「議論の素材」であり、「大綱の基本となる文書」だ。質問書などへの回答とは考えていないが、「基本構造」をベースに組合など関係者の意見もふまえて中間的にまとめたもの。大綱決定に向けて議論するために、これまでの検討結果をまとめたものだ。
○労働組合との関係で考えると交渉・協議の結果ということか。
●交渉協議の定義ははっきりしないところもあるが、回答という意味でいえば、「大綱」が一つの固まり、引き続き議論を続けたい。

 【内容について】
○新給与制度は賃金決定の基本部分の変更であり、分限処分は雇用にかかわる重大な労働条件の変更だ。それらを確定させていく手続きはどうなるのか。
●法律として制定されるもののスケジュールは大綱のときに示したいが、労働条件の基本部分の法案を来年の通常国会に提出するのは難しい。いつどういう形で制度化するかはこれからの検討で、その過程で結論づけたい。
○とすれば大綱の性格が問題になるが、現段階ではどう考えているか。
●閣議決定となるかどうかという問題。今の段階では「大綱」をどう位置づけるか決まっていない。今回の原案はイメージとして示しているが、労働組合、各省にも意見をききたいと思っている。
○現行は代償機能があり、そのもとでの交渉権、仮に「大綱」が事後を拘束するものとして議論するなら、それは労働基本権の侵害だ。合意にもとづく決定を改めて主張する。ILOや国公法第28条との関係で問題意識をもつべきだ。
●労働組合とは今後とも誠実に交渉・協議してやっていきたい。今後とも十分意見を聞いて取り入れるところは取り入れていきたい。
○「大綱」決定まで議論は続けるが、そのためにも10月29日に申し入れた3点について早急に考え方を示すべきだ。労働条件決定システムについては、代償措置なのか基本権回復なのかの二者択一になると思うが、この点を曖昧にした「大綱」決定は断じて行うべきではない。
●国公労連の「申し入れ」は承知している。

以  上



「労働基本権を回復するかどうかは国民の判断」と片山総務大臣が国会で発言
 11月6日、衆議院総務委員会において、2001年人事院勧告にもとづく給与法が可決されましたが、その際、公務員制度改革に関わり、労働基本権問題についての審議もありましたので、その概要を紹介します。
○春名議員(共産党) 6月29日の「基本設計」に「給与制度を始めとする勤務条件に関する制度改革の具体化に向けた更に詳細な検討を進めていくなかで、引き続き労働基本権の制約のあり方との関係を十分検討する」とあるが、何をどう検討しいつの段階で結論が出るのか。
●西村行革事務局長 労働基本権の制約のあり方については、勤務条件の制度をどう改革するのか明らかになって出てくる。重要な問題と認識しておりできるだけ早く検討したい。年末の「大綱」までに結論を出したい。
○春名議員 12月末までということはしっかり記憶しておく。労働基本権の「代償」として人事院勧告制度が作られているが、検討の方向は「労働基本権を回復し、人事院勧告制度は廃止する方向」という道の選択か、それとも「現状の代償制度=人事院勧告制度をそのまま維持するのか」の2つの道の1つしかないと思うが、総務大臣はどう考えているか。
●片山総務大臣 現在は団結権のみなので、これが1つの方向だ。公務員制度問題は推進事務局で議論しているが、すべての労働基本権を付与するのはいかがかという感じをもっている。中身が具体化しないと議論できない。
○春名議員 人事院はどういう見解か。
●中島人事院総裁 それぞれについて検討し、出た結論は整合性の保たれたシステムが大事だ。
○春名議員 「基本設計」では「能力等級毎の人員枠を設定する」とあるが、誰がどう設定するのか。それから「各府省の人件費予算は、給与項目ごとに、明確な統一基準にもとづく積算により設定する」とあるが、「統一した基準」は誰がどう設定するのか。
●西村局長 今回の改革の考え方は、組織、業務の実態に即した人事管理に弾力的に対応する必要があるため、各府省が責任をもってやるという考え方を示した。各府省がどこまで主体的にできるのがいいか検討中で、今後詰めたい。
○春名議員 だから不安だ。現行の「級別定数」の査定の機能は、実態上その配分としての意味をもっている。労働基本権制約の代償機能としての役割をもっている。これを廃止し、具体的な人件費、総定員の枠内で各省大臣が組織・人事制度を設計し、運用するというシステムに転換するということなれば、賃金決定については労使関係の当事者である使用者側の意向によって一方的に決定されることにならないか。
●西村局長 基本的な考え方は能力等級制度になるが、各省バラバラではいけないので統一するが、具体的にはこれから検討する。
○春名議員 人事院の機能も検討するというが、その先には人事院の機能の縮小があるのではないか。そうするのであれば、当然、労働基本権が回復されて、各省庁毎の団体交渉で決着していくということにならざるをえないのではないか。だから、労働基本権を回復するか、代償機能としての人事院制度を守るかの2つの道しか選択はないと思う。それをなし崩しに人事院の機能を縮小して、労働基本権は先送りにするということは最悪の事態になる。
●片山大臣 考え方としていろいろあっていい。公務員の給与が各省ばらばらというのはおかしい。硬直的であれば、主体性も必要だろうが国民の納得できる制度でなければいけない。
○春名議員 公務員は労働基本権を剥奪されているため、この問題は避けて通れないと思う。その代償機能として人事院の勧告制度が作られているが、3年連続のマイナス勧告でも労働者が口を出すシステムになっていない。これを解決するというのは憲法上の要請だ。大臣として真正面から取り組んでいく必要があると思う。認識をききたい。
●片山大臣 3年連続のマイナスは民間準拠の結果であり、マイナスのときはだめというのはいけない。基本権の回復と代償措置はパラレルの話なので、代償機能をだんだん弱めていくということなら労働基本権の方に、という議論は納得できるように思う。どちらを採るかというのは、いい案を作ってもらって、あとは国民の判断だ。

以  上


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