<パート1> 憲法ををつかみ直し、その輝く価但を語ろう。

<問題意識>−改憲反対の世論をおこすというときに、憲法を知らず、その価値を確信なしには語れない。
○憲法とは何か?一その豊かで先進的な価値をつかむ
○だが、広範な”違憲状況”がある
○”ゆれ動く到達点”−最大の”せめぎ合い”に
○国民の改憲支持の考えに正面から答えないで、多数派結集はできない
○多くの国民は憲法を充分に知らない
○もう一度、私たち自身がつかみ直す必要がある
 *7回の学習会の経験でそのことを痛感した
 **だが、「注解日本国憲法」的解説ではないはず(少なくとも、一回1時間〜1時間半の学習会ではそれは困難)
○中心を、国民の要求との関係で、骨太に語ることが必要だと思う。

1 日本国憲法とは何か(資料「憲法重要条文」参照)
(1)憲法とは−国の基本法・国民の権利章典(国の国民に対する約束)
 ○明治憲法との決定的違い(〈補1〉参照)
 ○近代憲法の大原則は国民の自由と権利の保障−国は絶対に侵害しない
 ○ワイマール憲法を経て、国家のもう一つの約束一社会権の保障(イタリア憲法)
 ○国(権力・「強者」)は、国民(「弱者」)に対して憲法を護る義務(立憲主義、憲法99条)
(2)日本国憲法の内容をみる−3つの柱(五つの原則)
 ○3つの柱一国民主権、恒久平和、基本的人権の尊重
  [1] 日本国憲法は立憲主義に立つ(〈補1〉「明治憲法」との違い参照)
  [2] 憲法三原則−国民主権・恒久平和主義・基本的人権の尊重+議会制民主主義・地方自治(私見ではさらに司法の独立・違憲立法審査権)(〈補1〉参照)
 ○5つの原則3つの柱+議会制民主主義、地方自治
 ○これら全てを貫く基本精神としての憲法前文と憲法13条−世界の憲法にはない「平和的生存権」
  ・個人の尊重と幸福追求権
 ○世界の憲法に比べて、より進んだ憲法
  ・もっとも進んだ規定−戦争の放棄、軍備をもたない
  ・豊富な人権、とりわけ、いわゆる社会権規定の充実

〈補1〉明治憲法との違い
○明治憲法は「見せかけの立憲主義」、近代憲法とは言えない
 ・天皇主権、「不可侵」(現人神としての天皇)
 ・議会は立法権なし、「協賛」し、天皇が決める
 ・統帥権の独立
 ・「法律の範囲」でしか認められない「弱い人権」
 ・勅令の発布
 ・弱い司法権(天皇の裁判官)、法律・勅令の審査権なし
○「弱い憲法」を超えた権力行使−特高警察と軍の専制

2 日本国憲法の特別の歴史一半世記を超える”せめぎ合い”の歴史に学ぶ
(1)敗戦と新憲法
 ○侵略戦争の敗北と、反ファシズムの勝利のなかで世界の人々の到達点(国連憲章、ILO憲章の反映)に立ち、しかも随所でさらに進んだ憲法(明治憲法と異なる原理)
 ○嫌がった日本の保守勢力−だが、彼らも承認した(国会では長時間の審議、修正可決)
 ○国民は歓迎、当時の民主勢力の要求にも合致
 ○「押しつけ憲法」ではない
  *ベアテ・シロタ・ゴードンさんの証言と私の証言
(2)生まれた直後からの違憲攻撃と今日までの「押しつけ改憲」策動
 ○労働者の権利に対する攻撃−2・1スト禁止、公務員のスト権利奪、政治活動の制限、レッドパージ、職場の自由と民主主義侵害、不当労働行為、多い脱法のリストラ、「合理化」、女性差別
 ○憲法9条への攻撃−警察予備隊創設、自衛隊へ、日米共同軍事同盟化の推進と一連の戦争協力立法へ
(3)そして今、目の前に広がる違憲状況
 [1] 平和は?−世界第2位の軍事費、何よりもイラク出兵
 [2] いのちとくらしはどうなっているのか?
  −憲法に反する労働状況と国民生活の状況
 ア)5300万人労働者の状況−生命と健康までが危ない(〈ノート@〉「労働状況はどうなっているか?」参照)
  ○過労死自殺の増加、推計1万人の過労死、メンタルヘルス障害、有病率の激増
  ○高失業と労働条件切り下げ、雇用の流動化−人間らしく働く権利(憲法27条)の侵害
 イ)人間らしく生きるための社会保障はどうなってるか
  ○社会保障の連続改悪
   ・(憲法27条)人間らしく生きる(憲法25条)権利の侵害
  ○年金制度の改悪
  ○医療制度改悪
 [3] なぜこんなことに?
  ○自然現象でも、資本主義制度から必然的に生じる結果でもない
  ○「ルールなき」がためでさえない−憲法制定以来今日までの「ルール破り」の結果である
(4)だが憲法は生きている−守られ、守り、生命を吹き込んだ私たち
  ○憲法は消し去られたのでも「空洞化」したのでもない
  ○憲法をよりどころにしたたたかって成果をあげてきている
  ○多くの憲法裁判の勝利(自由法曹団『憲法判例をつくる』日本評論社参照)
   ・憲法は私たちを守ってくれた憲法があったからこそ
   ・たたかい勝利することにより、私たちは憲法を守り、生命を吹きこんだ
   〈例1〉憲法25条をめぐった−「人間裁判」(朝日訴訟)
   〈例2〉憲法19条をめぐって−三菱樹脂高野裁判、一連の電力人権裁判
   〈例3〉憲法14条(労基法3条、4条)をめぐって−芝信女性昇格差別是正など

 [1] 平和を守って
  ○「一人も殺させてはいない」−ダグラス・ラミス氏の指摘
  ○高度の「戦力」(武装力)だが「軍隊」にはしきれてはいない
  ○彼らにとって「不自由」な戦争立法
  ○アメリカの核使用計画ストップなど何度も歯止めをかけてきた
   ・ベトナム戦争で
   ・北朝鮮先制攻撃阻止で
 [2] 人間らしく働く権利を守って
  ○労働者の権利を守り、憲法を生かし、育てたたたかい
   ・職場の自由と民主主義をめぐる運動の発展
   ・女性差別是正の前進
   ・労働法制闘争での「解雇規制」規定の獲得
 [3] 生存権を守って
  ○社会保障闘争の成果−「朝日訴訟」の成果は今に続く
  ○医療制度改悪反対の広がり
 [4] 教育を受ける権利を守って
  ○教科書裁判と「歴史教科書」不採択運動
  ○教育基本法改革反対運動の発展

3 パートTの結論―憲法は輝く
 ○憲法は古くはない−「今が旬」
  ・すでにパートTの1の(2)で述べた憲法の内容が実現していたら……
  ・平和で、みんなが平等に人間らしく生き、働けたら……
 ○「古い」のではなく、憲法の侵害状況をとりのぞけば、もっとも役に立つ憲法になる
 ○それだけではない「もうひとつの日本」のグランドデザインになる一未来への”光”

〈補2〉環境権やプライバシー権を保障するために改憲が必要か
−必要ではない
○民主党の「創憲」の宣伝ポイントに自民も賛成
○そう考える国民に対する答えは
 ・憲法13条をはじめとする現憲法で充分
 ・あとは適切な立法(あるいはいまある法律の改訂で充分)
○だましのテクニックにのるべきではない
 ・改憲勢力(とりわけ自民党)は、改憲の正体かくしの口実にしているだけ
 ・環境破壊の大企業野放し、利権のための大土木工事の主犯はゼネコンと政府−「盗人猛々しい」の類
 ・緒方宅盗聴は警察、プライバシー侵害の盗聴法制定は政府・自民党、そして学会、公明党ぐるみの宮本顕治宅盗聴事件
 ・なお、国民投票法(自民案)が一括採決方式に固執するのは「だまし」の証拠

〈ノート -1-〉   労働状況はどうなっているか?
−広範な「違憲」状況・世界のルールに違反一憲法、法律

○「ルールなき資本主義」の中心は「ルール破りの資本主義」
○巨額の利益は大企業に
 (1)生命と健康が奪われている
○のっぴきならない証拠・生命が奪われている.
 ・過労死自殺、リストラ性自殺の増加L
 ・03年の自殺は最高の34,427人−原因の一番多いのは「経済」「生活」「勤労」
 ・過労死推計約1万人膨大な「予備軍」−限度時間、「週48時間以内」の30代労働者は、48.4%(60)時間以上24.2%)
○拡がる健康破壊
 ・メンタルヘルス障害の増大(約6割が強い不安、悩みストレス有り)
 ・有病率の急上昇−1990年の23.6%から2002年の46.7%に
○最大の原因「ルール破り」・不払い残業の横行
 ・政府統計からの推計で未払い残業推計年300時間
 ・奪われている賃金10兆円
  (2)「氷山」の下の高失業と雇用の激変
○失業率5%前後、失業者350万人前後−実際にはその倍、「10人に1人」が失業(半失業)者
○パート、派遣、契約社員、請負の増加と正規雇用労働者の置き換え
 ・前者は32%に増加。(派遣は95年63万人から03年213万人に)。
  *新日本婦人の会の調査
○雇用形態激変などをテコとする新たな女性差別の拡大
 ・8時間以上、7時間以上あわせて約7割が働いている
 ・賃金は月15万円未満約4割、25万円以上は3.5%しかいない
 ・時給平均は889円
 ・女性労働者の50.7%が不安定雇用労働者(パートの7割は女性)、賃金は男性一般労働者の34.4%
○若者の未来を閉ざす労働状況−国と社会の未来を閉ざす暴挙
 ・若年者の失業率は約10%前後、.一般平均の約2倍
 ・フリーターは99年の183万人から01年の417万人に(7割は正社員希望)
 ・賃金は150万〜200万
(3)リストラ「合理化」成果−利益増と人件費減がぴたり一致(経産省「法人企業統 計」)
 ・04年(4月〜6月期)は3年前の同期と比べて2兆4,100億円減少
 ・経常利益の増額は2兆4.700億円
  *消費税アップと企業減税はほぼ同額



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