与党・行財政改革推進協議会
「今後の公務員制度改革の取組について」
平成16年6月9日


 内外の難しい課題が山積している現在、政府の企画立案能力や行政サービスの質が従来とは比較にならないほど厳しく問われている。簡素で効率的な行政を実現するためには、行政運営の基盤である公務員制度の改革が不可欠である。
 与党は、これまで、公務員制度改革を重要政策課題として位置づけ、3月5日の「公務員制度改革について(片山メモ)」を踏まえつつ、議論を進めてきた。
 新しい時代の要請にこたえられる公務員制度を実現するためには、早急に改革の具体化を図り実行に移すことが必要であり、与党として今後の取組方針を取りまとめた。
 内閣においては、この方針を踏まえ、国家公務員法改正法案等の改革関連法案を早急に取りまとめて本年中に国会提出するよう、要請するものである。
今回の改革においては、「能力等級制を導入し、能力・実績主義の人事管理を実現すること」、及び「退職管理の在り方を見直すとともに再就職の適正化を図ること」が改革の主要な柱であり、これらについては別紙1及び別紙2の方針に従って作業を進めること。
多様かつ高度な行政ニーズに的確に対応するためには、公務部門における人材の確保・育成、人材の活用(能力本位の登用、交流の拡大等)が極めて重要な課題であり、計画的かつ戦略的な人材のマネジメントが行われるよう、具体的な制度設計を進めること。その際、内閣、各府省、人事院それぞれが責任を持って取り組めるようにすること。
改革の具体化作業を進めるに当たっては、内閣の総合調整機能を発揮しつつ、人事院や各府省との間で緊密な連携を図ること。
改革を進めるに当たっては、職員団体と新しい公務員制度の設計・導入について十分な意見交換を行うとともに、労働基本権の在り方についても幅広く意見交換を行うこと。

別紙1 能力・実績主義の人事について
1 基本方針
(1) 改革の趣旨
行政全体を活性化し、公務員にやる気を起こさせ、持てる力を最大限発揮させるような人事制度を構築すること。
簡素で効率的な行政の実現のため能力・実績主義の人事管理の徹底を図るとともに、政治的中立と行政運営の公正の確保に努め、公務員に対する国民の信頼を確保すること。
(2) 新たな人事制度の構築
公務員の働き方を変え、公務能率を向上させるため、採用試験区分や年次で一律の人事管理を改め、能力本位で適材適所の人事配置を実現すること。
具体的な制度設計に当たっては、
 ・国民から負託された職務(ポスト)に対し、
 ・ふさわしい能力を有する者を任用し、
 ・職務に見合った働きに対して適正な処遇を行う。
を原則とすること。
このため、分かりやすく、使いやすいという観点から従前の考えを改めて整理した上で新たに能力等級制を導入することとし、制度設計の具体化を進めること。また、制度の運用について監視の在り方等を検討すること。
能力等級制を基礎とする人事制度においては、能力等級ごとに発揮すべき能力を明らかにするとともに評価制度を整備し、能力に基づく昇進を実現するとともに、人材の育成に積極的に取り組むこと。
同時に、職務を基本とし実績を反映したメリハリのある給与処遇を実現すること

2 能力等級制
能力等級制の構築に当たっては、以下の点を基本とすること。
ポストの内容や組織・職制段階等に着目してポストを任用・評価のための等級(能力等級)に分類し、任用に際しての能力の実証の基準として、能力等級ごとに発揮すべき能力を設定すること。
能力等級は、例えば本府省の課長級、課長補佐級、係長級、係員級の4段階に局長級等の幹部職級を加えた各府省共通の等級とし、管区機関等本府省以外の組織については、現場で使いやすいという観点も踏まえて適切に設定すること。
簡素な能力等級の仕組みを活用し、適正な評価の下での抜擢人事など思い切った任用を実現すること
能力等級制の導入に伴い、職階制は廃止すること。

3 評価制度の構築
能力・実績主義の人事管理・給与処遇を徹底するため、
 1)職員が実際にとった職務行動を通じて発揮された能力
 2)職員がその職責に応じて果たすべき職務を遂行した実績
の観点から職員の勤務の状況を適切に把握する評価制度を構築し、
 ・能力評価は主として任用に活用し、人材育成にも活かす。
 ・実績評価は主として給与に活用する
など、効果的な制度の運用を図ること。
評価制度の公正性と納得性を担保するため、評価に関する職員の苦情や不満等に適切に対応する枠組みを整備すること。

4 任用制度
職員の任用に当たっては、採用試験区分や年次で一律ではなく、能力評価の結果を基礎とした能力主義の任用を徹底するとともに、組織全体の適材適所の人事配置、職員の能力の発揮や職員の育成の視点を考慮した任用を実現し、公務員の持てる力を最大限発揮させるようにすること。
実際の任用においては、任命権者が、評価結果を重要な判断材料とし、能力等級ごとに定められた発揮すべき能力及び個別官職ごとの適性その他の要素を総合的に判断して行うこと。

5 給与制度
年功的・横並び的な運用を改め、職務を基本とし実績を反映したメリハリのある給与処遇を実現すること。
給与等級は、能力等級制と整合するように設定すること。
給与等級は、現行制度との連続性を踏まえ、現行の等級数を基本に区分すること。

6 人材の登用、人材の交流
優秀で多様な人材を確保するため、中途採用を含めた採用の仕方、処遇の在り方等を検討すること。
官民を始め、府省間、国・地方間、人事グループ間の人材交流を拡大するため、政府として目標を設定するなど、計画的に取り組むこと。
いわゆるキャリア・ノンキャリアや事務官・技官などの入口時点での資格にとらわれない能力本位の人事を実現すること。
特に、キャリアについては、幹部候補生としての育成は一定のポストまでとし、それ以降は、能力主義を徹底すること。


別紙2  公務員の再就職の適正化について
1 基本方針
(1) 行政とそれを支える公務員への国民の信頼を確保するためには、公務員の再就職の適正化を図ることが必要であり、国民の納得が得られるようなルールの設定を行うとともに、人事管理・退職管理全体の問題として政府を挙げて取り組むこと。
職員の再就職により職員の職務の公正な執行が歪められることのないよう、国民の信頼が得られるような厳正な再就職ルールを確立すること。
また、公益法人等の運営の在り方、補助金の適正化、規制改革の推進等の観点からも積極的に改革に取り組むこと
いわゆる天下り問題の背景には、早期退職を前提にした人事慣行がある。早期退職慣行についてはこれを見直し、できるだけ長期間、活力を持って勤務できるような人事制度を構築すること。
(2) 内閣は、適正な再就職ルールを設定するとともに、営利企業、公益法人、独立行政法人等を通じ、国と密接な関係にある法人等への再就職を一元的に管理し、チェックを行うこと。
このため、営利企業への再就職の「承認制」に加え、非営利法人への再就職について「事前報告制」を導入し、内閣はこれらの仕組みを活用して再就職の適正化を図ること。
1) 営利企業への再就職の「承認制」
離職後2年間、離職前5年間に在籍していた機関と密接な関連のある企業への再就職については、内閣の責任において承認することとする。
2) 公益法人、独立行政法人、特殊法人等への再就職の「事前報告制」
離職後2年間、一定クラス以上の職員が離職前5年間に在籍していた機関と密接な関連のある法人に再就職する際には、事前に、最終官職、再就職先の名称、年齢等を、在籍府省を通じて内閣へ報告することとする。
内閣への報告を踏まえ、内閣が責任を持って、再就職状況のチェックを行い、必要な場合には府省に対して是正を求めることとする。また、必要に応じルールの見直し等の措置を講ずるものとする。
再就職に関するチェックが適切に行われるよう、内閣における事務処理体制について検討を行うこと。
(3) 再就職に関する情報開示については、公表事項の見直しなど、その在り方を改めて検討し、透明性の向上を図ること。

2 適切なルール設定による再就職の適正化
(1)営利企業
営利企業の再就職ルールを設定するに当たっては、透明性・客観性を高めるため、再就職を認めないこととする類型について、できる限り法律で規定すること。(詳細な事項は政令等で定める。)
再就職ルールの内容についても、見直しを行うものとする。
再就職者を通じて官民が癒着関係にならないよう、営利企業に再就職した後の行為規制を導入すること。
(2) 公益法人・独立行政法人・特殊法人等
公益法人、独立行政法人、特殊法人等については、役員構成、年齢、処遇など法人類型ごとの特性に応じて再就職ルールを閣議決定等により機動的に設定すること。
公益法人等への再就職の適正化に併せて、公益法人等の運営や現行の補助金制度等についても思い切った改革を進めるとともに、行為規制の在り方についても検討を行うこと。
公益法人への再就職については、準則主義への移行等、公益法人制度の抜本改革を踏まえて改めて検討を行うこと。

3 人事管理の見直し
(1) 早期退職慣行の是正
新しい人事制度において、能力・実績主義の徹底により、年次主義の打破につながるようにすること。
複線型人事管理や多様なキャリアパスを可能にするよう、能力・適性に応じた人事を行い、併せてスタッフ職の整備・充実、シンクタンク等政策研究機能の充実等の具体化を急ぐこと。
(2) 右肩上がりの処遇の見直し
早期退職慣行是正や長期在職に対応した給与・退職手当制度の在り方について検討を行い、必要な見直しを行うこと。


参考  公務員制度改革について(片山メモ) 2004.3.5
1 改革の基本
行政とそれを支える公務員に対する信頼を確保すること
公務員にやる気を起こさせ、持てる力を最大限発揮させ、公務全体が活性化すること。

2 能力・実績主義
公務員の人事管理の基本は、次のとおりであることを確認すること。
 ・国民から負託された仕事(ポスト)に対し、
 ・ふさわしい能力を有する者を任用し
 ・仕事に見合った働きに対して適正な処遇を行うこと
このため、評価制度を整備し、能力や実績の評価結果を基礎として公務員の任用・育成を行い、また、評価結果を踏まえたメリハリのある給与等の処遇を行う枠組みを構築すること。
評価制度の導入に当たっては、試行を行う等十分な準備を行うとともに、苦情処理の仕組みについても検討すること。
能力等級制については従前の考え方を改めて整理し、能力評価基準の仕組みの簡素化などを図りつつ、分りやすく使いやすいものとすること。

3 退職管理と、長期在職
早期勧奨退職を前提とする人事管理を見直し、同期横並び主義を改め、長期間において、能力・適性に応じた人事配置を可能にする仕組みを検討すること。
在職期間の長期化が人件費の増加や組織の肥大化につながらないよう、右肩上がりの処遇の見直し、スタッフ職の整備等を検討すること。

4 再就職の適正化
営利企業、特殊法人、独立行政法人、公益法人等も含めた再就職全体について、国民の信頼が得られるよう、内閣として明確なルールを定めること。
同時に、内閣が責任を持ってチェックする仕組みを検討すること。
基本的な事項を法定するなど、透明性の高い仕組みとするとともに、情報公開を徹底すること。

5 人材の育成と交流
優秀で多様な人材を確保するため、中途採用を含めた採用の仕方、処遇のあり等を検討すること。
官民を始め、府省間、国・地方間、人事グループ間の人材交流を拡大するため、政府として目標を設定するなど、計画的に取り組むこと。
いわゆるキャリアについては、幹部候補生としての育成期間終了後は、実力本位の人事管理にするとともに、いわゆるノンキャリアについても、幹部職員への登用を拡大すること。