2004年6月25日《No.169》

与党「申し入れ」ふまえ『質問書』提出
能力等級制、評価制度の問題点など23項目

 国公労連は、6月16日の第22回闘争本部会議での意思統一を経て、6月24日、行革推進事務局に「与党『申し入れ』もふまえた公務員制度改革にかかる質問書」(別紙参照)を提出し、交渉を行いました。
 今回の交渉は、政府・行革推進事務局が秋の臨時国会にむけて公務員制度改革関連法案の検討作業を進めるにあたり、与党から政府に申し入れのあった「今後の公務員制度改革の取組について」と題する与党行財政改革推進協議会の文書(以下「与党『申し入れ』」)について、6月11日に行革推進事務局から説明を受けたことをふまえたものです。
 この交渉には、国公労連から山瀬副委員長、小田川書記長ほか4名が参加し、行革推進事務局からは笹島参事官、吉牟田企画官ほかが対応しました。

  真剣で意義ある交渉・協議にむけて責任ある見解を

 冒頭、小田川書記長は、「6月11日に与党『申し入れ』が提出されたことをふまえ、今後真剣で意義のある交渉・議論をすすめるため、能力等級制と評価制度を中心に、任用制度や給与制度、『天下り』問題を含めて、国公労連の問題意識を別紙のとおり質問書にまとめた。出来るだけ早い時期に回答を求めたい」としたうえで、23項目にのぼる質問事項のポイントを順次説明しました。

 これに対し、笹島参事官は、要旨以下のとおり回答しました。
 【推進事務局の回答要旨】 今後は、基本的に私と各担当で対応していきたい。国会も終わり、与党も選挙中で動いていないので、腰を落ち着けて制度設計の話ができるのではないか。国民の視点からも納得のいく改革をしていきたい。
 既にご説明したとおり、6月9日に与党合意がなされ、その日に政府に申し入れがあった。総理にも自民党の片山委員長、林事務局長から細かい説明があったと聞いている。日程的に動き始めているので、いろいろ話をしていきたい。
 与党「申し入れ」は精力的に議論されたもので、政府として重く受け止めるが、「申し入れ」はあくまで与党のものであり、政府として逐一説明できないかもしれない。政府案はこれからで、事務局案をつくりつつあり、人事院とも給与制度で詰めている最中だ。
 当面のスケジュールとしては、今後1カ月くらいの間に国公労連とも精力的に話し合いを行い、その議論を制度設計に活かしていきたいと考えている。

  「透かしペーパー」=知らぬ存ぜぬでは済まされない

 これを受けて、小田川書記長は、「質問事項に対する推進事務局のスタンスを聞こうとしているのであり、言葉の問題ではない」と切り返した後、国公労連として論点を変えて次の問題を糾しました。
 【国公労連の追及点】 国公労連とこれから具体的な交渉・協議に入ろうとしている一方で、行革推進事務局は先週、能力等級制に関する20枚余りの「透かしペーパー」(コピーをとると省名が出る)を各省にのみ配布し、意見報告を求めている事実が判明した。国公労連も現物を入手している。昨年7月も「関連法案」を「透かしペーパー」にして各省にのみ配布した前科があるが、今回は入口段階からフライングするのか。事実関係を明らかにしたうえで、回収するか、我々にも出すかのどちらかだ。

 これに対し、笹島参事官は、「そのような事実は承知しないし、そのようなペーパーも存在しない。行革推進事務局でいろんな案を検討しているが、あくまで内部の問題だ。このようなことで信頼関係を損なうことがないよう、きちんとする」と回答しました。
これを受けて、国公労連側は、「あくまで白を切るのであれば、各省意見の報告期限もなし」ということなどを強調し、交渉を終えました。

以上



【 別紙 】
2004年6月24日

内閣官房行政改革推進事務局
事務局長  堀 江 正 弘  殿
日本国家公務員労働組合連合会
中央執行委員長  堀 口 士 郎

与党「申し入れ」もふまえた公務員制度改革にかかる質問書


 去る6月11日に貴職から説明を受けた与党の「今後の公務員制度改革の取組について」(以下「申し入れ」という)ともかかわって、真剣で意義のある交渉・協議を進めるためにも、下記事項について貴事務局としての見解を明らかにされるよう求めます。
 なお、貴事務局の見解をふまえたうえで、当方として再質問や要求を提出する考えであることを申し添えます。



【公務員制度改革の目的、すすめ方にかかわって】
(1)  2001年12月25日の「大綱」決定以降の経過ともかかわって、とりわけ、二度のILO結社の自由委員会からの「勧告」が、今回の公務員制度改革に重要な意味を持っていることを確認したうえで、政府としての検討をすすめるのか。
 また、過去の公務員制度審議会の論議経過や「残された課題」の取り扱いは、どのように考えているのか。
(2)  「申し入れ」は、「具体的な制度設計」に言及している。そのことともかかわって、「人事院や各府省との間での緊密な連携」や「職員団体と新しい公務員制度の設計・導入について十分な意見交換」を強調していると考えるが、どうか。
 また、公務員制度の運用主体である各府省段階での労使の意見交換は、制度設計上も重要な意味を持つと考えるが、どうか。
 さらに、具体的な制度設計となると、国家公務員法レベルの抽象的な制度設計ではなく、政令や規則段階も含めた設計が求められていると理解しているのか。例えば、評価制度について、この間言明してきた試行との関係は、どう考えているのか。

【能力等級制の目的等にかかわって】
(3)  能力等級制を導入することが、なぜ能力・実績主義の人事管理を実現することになるのか。現行の公務員制度のどのような点に問題があるとして、能力等級制による改革が必要だと考えているのか。
(4)  少数職種での昇格実態の劣悪さ、実質的な女性職員の昇格の遅れ、転勤を条件とする昇任などの問題は能力等級制の導入によってどのように是正されると考えているのか。
(5)  能力等級制は、職階制にかわる官職分類の制度なのか。「能力等級制を基礎とする人事制度」としているが、「大括りの能力等級」と現行の等級数を引き継ぐ給与等級との関係は、どのように理解すればよいのか。
 例えば、係長級といっても、初任のポストから補佐級相当の職務のポストまでに「求められる能力」や職責、職務内容が広範囲に及んでいるが、ある係長ポストを能力等級制で分類することと、給与等級に格付けることとの関係は、どのように理解すればよいのか。つまり、能力等級による官職の分類が先行し、職務の複雑・困難性などに着目して能力等級に対応する給与等級に格付けることになるのか、それとも能力等級と給与等級とは必ずしも厳密な対応関係にはないと考えればよいのか。
(6)  「分かりやすく、使いやすいという観点から従前の考えを改めて整理」したというが、この「従前の考え」とは何か。仮に、03年7月段階の「国家公務員法改正案」を指しているのであれば、どこがどのように違うのか説明されたい。

【能力等級の基準、適用範囲等にかかわって】
(7)  能力等級への「ポスト」=官職の分類は、誰がおこなうのか(移行時及びポスト新設時の双方について)。能力等級制度の所管は、人事院か内閣総理大臣か。能力等級制の適用範囲は、一般職非現業国家公務員のみか。
(8)  スタッフ官職の分類は、どのような基準でおこなうのか。管区機関等の組織については「現場で使いやすいという観点を踏まえて適切に設定」するとしているが、それぞれの機関ごとに設けるのか、基準を示して各省が官職分類をおこなう余地を認めるのか。行(一)以外の職種については、どのように考えていくのか。
(9)  能力等級で考えられている「能力実証の基準」の性格は、どのようなものか。最低か標準か、それとも「ありうべき」基準か。
 本省庁を基準に、組織段階のみに着目して地方出先機関の能力等級を設定することでは、同一職名のポストであっても、一段低い能力しかない(求められていない)ということになりかねない。そのことが、「やる気を起こさせ、持てる力を最大限発揮させる人事制度」の障害になるとも考えられるが、どうか。
(10)  「職務を基本とし実績を反映したメリハリのある給与処遇」としているが、能力等級の決定が給与処遇に関連するとの考え方を述べているのか。
 
【評価制度にかかわって】
(11)  公務員制度調査会などでも、現行の勤務評定制度の問題点が指摘されているが、あらたな評価制度検討にあたっては、そのような問題点の解消をも考えるということでよいか。
(12)  任用と給与との関連が必ずしも明確ではないが、少なくとも、実績評価は直接的に給与を決定するものとして、制度化するという考え方か。
 「職責に応じて果たすべき職務」とは、どういうことか。ポストに割り振られた職務=職責ではないのか。
(13)  評価に関する苦情処理だけで足りるとする考えなのか。評価を人事管理に活用して給与処遇にも反映させる以上、評価反映の結果に対する救済システムの整備こそ必要なのではないのか。

【任用制度等にかかわって】
(14)  能力評価の結果、基準をクリアーしていれば昇任させるのか、それとも、上位の能力級の官職に就くことが必要とされるのか。個々の官職への任用の「重要な判断材料」に評価結果を使い、最終的には任命権者の総合判断に委ねるとなれば、現行の勤務評定とどれだけの違いがあるのか。現状の人事管理に目を向ければ、能力等級が生涯に一度しか変わらない職員が相当数にのぼることも考えられるが、このような職員にとっての能力評価の意義は、どのような点にあると考えているのか。
(15)  能力等級制のもとでの分限制度は、どのように考えているのか。仮に、能力評価による降任などの不利益処分が想定されているとすれば、能力評価を「重要な判断材料」とすることでは、任命権者の恣意性が排除できず、身分保障規定の形骸化につながるのではないか。

【給与制度にかかわって】
(16)  能力等級と給与等級を「整合するように設定」するとは、どういう意味か。一つの能力等級に2〜3の給与等級を設定することになると考えられるが、能力等級が上がらなければ、給与等級も上がらないという考えか。
 いわゆる「級別定数」という考え方は、維持されるのか。

【人材登用等にかかわって】
(17)  人材交流と能力等級、評価との関係は、どのように考えているのか。交流先への派遣、交流元への復帰、それぞれの局面での能力評価の活用は、どのように検討するのか。派遣・出向したから能力が向上したとはならないと考えるが、どうか。昨年法案が検討された「官民交流法」は、どのようにあつかうのか。
(18)  能力評価を人材育成にも活用するとする一方で、一定ポストまでの「キャリア制度」の維持を打ちだすこと自体が、問題ではないか。能力・実績主義の徹底をいうのであれば、「キャリア制度」の是正こそ中心課題とすべきではないのか。
 人材育成を強調しながら、そのための研修制度などの整備に言及しないのは、なぜか。「大綱」では、職員の能力開発を強調していたのではないか。

【再就職の適正化にかかわって】
(19)  早期退職慣行の見直しの課題をどのように考えているのか。現状の定員管理が早期退職を余儀なくしている、とする問題意識はあるのか。長期間勤務を前提とした人事制度の構築というが、現状ではそれが実現していないという認識か。長期間勤務を阻害している制度的な問題点は、どこにあると考えているのか。
(20)  再就職にかかる許可基準の設定は、誰がどのような手続きでおこなうのか。公務員制度の民主制を担保するうえで、専門的第三者機関の関与を制度化すべきではないのか。 同様に、「報告事項」の詳細は、誰がどのように設定するのか。
(21)  特殊法人、独立行政法人にかかわって、いわゆる「役員出向制」と報告との関係は、どのようになるのか。特殊法人などから営利法人などへの再々就職(いわゆる渡り鳥)の規制方策は、検討しないのか。
(22)  行為規制の具体的な内容は、どのようなものを想定しているのか。

【その他事項にかかわって】
(23)  女性の採用・登用拡大や、超過勤務の縮減等は、「大綱」段階で強調された改革課題であったが、どのようにあつかうのか。
 また、非常勤職員制度について、今日的な観点から検討すべきではないか。

以上