2004年6月24日
内閣官房行政改革推進事務局
事務局長 堀 江 正 弘 殿
日本国家公務員労働組合連合会
中央執行委員長 堀 口 士 郎
与党「申し入れ」もふまえた公務員制度改革にかかる質問書
去る6月11日に貴職から説明を受けた与党の「今後の公務員制度改革の取組について」(以下「申し入れ」という)ともかかわって、真剣で意義のある交渉・協議を進めるためにも、下記事項について貴事務局としての見解を明らかにされるよう求めます。
なお、貴事務局の見解をふまえたうえで、当方として再質問や要求を提出する考えであることを申し添えます。
記
【公務員制度改革の目的、すすめ方にかかわって】
(1) |
2001年12月25日の「大綱」決定以降の経過ともかかわって、とりわけ、二度のILO結社の自由委員会からの「勧告」が、今回の公務員制度改革に重要な意味を持っていることを確認したうえで、政府としての検討をすすめるのか。
また、過去の公務員制度審議会の論議経過や「残された課題」の取り扱いは、どのように考えているのか。 |
(2) |
「申し入れ」は、「具体的な制度設計」に言及している。そのことともかかわって、「人事院や各府省との間での緊密な連携」や「職員団体と新しい公務員制度の設計・導入について十分な意見交換」を強調していると考えるが、どうか。
また、公務員制度の運用主体である各府省段階での労使の意見交換は、制度設計上も重要な意味を持つと考えるが、どうか。
さらに、具体的な制度設計となると、国家公務員法レベルの抽象的な制度設計ではなく、政令や規則段階も含めた設計が求められていると理解しているのか。例えば、評価制度について、この間言明してきた試行との関係は、どう考えているのか。 |
【能力等級制の目的等にかかわって】
(3) |
能力等級制を導入することが、なぜ能力・実績主義の人事管理を実現することになるのか。現行の公務員制度のどのような点に問題があるとして、能力等級制による改革が必要だと考えているのか。 |
(4) |
少数職種での昇格実態の劣悪さ、実質的な女性職員の昇格の遅れ、転勤を条件とする昇任などの問題は能力等級制の導入によってどのように是正されると考えているのか。 |
(5) |
能力等級制は、職階制にかわる官職分類の制度なのか。「能力等級制を基礎とする人事制度」としているが、「大括りの能力等級」と現行の等級数を引き継ぐ給与等級との関係は、どのように理解すればよいのか。
例えば、係長級といっても、初任のポストから補佐級相当の職務のポストまでに「求められる能力」や職責、職務内容が広範囲に及んでいるが、ある係長ポストを能力等級制で分類することと、給与等級に格付けることとの関係は、どのように理解すればよいのか。つまり、能力等級による官職の分類が先行し、職務の複雑・困難性などに着目して能力等級に対応する給与等級に格付けることになるのか、それとも能力等級と給与等級とは必ずしも厳密な対応関係にはないと考えればよいのか。 |
(6) |
「分かりやすく、使いやすいという観点から従前の考えを改めて整理」したというが、この「従前の考え」とは何か。仮に、03年7月段階の「国家公務員法改正案」を指しているのであれば、どこがどのように違うのか説明されたい。 |
【能力等級の基準、適用範囲等にかかわって】
(7) |
能力等級への「ポスト」=官職の分類は、誰がおこなうのか(移行時及びポスト新設時の双方について)。能力等級制度の所管は、人事院か内閣総理大臣か。能力等級制の適用範囲は、一般職非現業国家公務員のみか。 |
(8) |
スタッフ官職の分類は、どのような基準でおこなうのか。管区機関等の組織については「現場で使いやすいという観点を踏まえて適切に設定」するとしているが、それぞれの機関ごとに設けるのか、基準を示して各省が官職分類をおこなう余地を認めるのか。行(一)以外の職種については、どのように考えていくのか。 |
(9) |
能力等級で考えられている「能力実証の基準」の性格は、どのようなものか。最低か標準か、それとも「ありうべき」基準か。
本省庁を基準に、組織段階のみに着目して地方出先機関の能力等級を設定することでは、同一職名のポストであっても、一段低い能力しかない(求められていない)ということになりかねない。そのことが、「やる気を起こさせ、持てる力を最大限発揮させる人事制度」の障害になるとも考えられるが、どうか。 |
(10) |
「職務を基本とし実績を反映したメリハリのある給与処遇」としているが、能力等級の決定が給与処遇に関連するとの考え方を述べているのか。 |
【評価制度にかかわって】
(11) |
公務員制度調査会などでも、現行の勤務評定制度の問題点が指摘されているが、あらたな評価制度検討にあたっては、そのような問題点の解消をも考えるということでよいか。 |
(12) |
任用と給与との関連が必ずしも明確ではないが、少なくとも、実績評価は直接的に給与を決定するものとして、制度化するという考え方か。
「職責に応じて果たすべき職務」とは、どういうことか。ポストに割り振られた職務=職責ではないのか。 |
(13) |
評価に関する苦情処理だけで足りるとする考えなのか。評価を人事管理に活用して給与処遇にも反映させる以上、評価反映の結果に対する救済システムの整備こそ必要なのではないのか。 |
【任用制度等にかかわって】
(14) |
能力評価の結果、基準をクリアーしていれば昇任させるのか、それとも、上位の能力級の官職に就くことが必要とされるのか。個々の官職への任用の「重要な判断材料」に評価結果を使い、最終的には任命権者の総合判断に委ねるとなれば、現行の勤務評定とどれだけの違いがあるのか。現状の人事管理に目を向ければ、能力等級が生涯に一度しか変わらない職員が相当数にのぼることも考えられるが、このような職員にとっての能力評価の意義は、どのような点にあると考えているのか。 |
(15) |
能力等級制のもとでの分限制度は、どのように考えているのか。仮に、能力評価による降任などの不利益処分が想定されているとすれば、能力評価を「重要な判断材料」とすることでは、任命権者の恣意性が排除できず、身分保障規定の形骸化につながるのではないか。 |
【給与制度にかかわって】
(16) |
能力等級と給与等級を「整合するように設定」するとは、どういう意味か。一つの能力等級に2〜3の給与等級を設定することになると考えられるが、能力等級が上がらなければ、給与等級も上がらないという考えか。
いわゆる「級別定数」という考え方は、維持されるのか。 |
【人材登用等にかかわって】
(17) |
人材交流と能力等級、評価との関係は、どのように考えているのか。交流先への派遣、交流元への復帰、それぞれの局面での能力評価の活用は、どのように検討するのか。派遣・出向したから能力が向上したとはならないと考えるが、どうか。昨年法案が検討された「官民交流法」は、どのようにあつかうのか。 |
(18) |
能力評価を人材育成にも活用するとする一方で、一定ポストまでの「キャリア制度」の維持を打ちだすこと自体が、問題ではないか。能力・実績主義の徹底をいうのであれば、「キャリア制度」の是正こそ中心課題とすべきではないのか。
人材育成を強調しながら、そのための研修制度などの整備に言及しないのは、なぜか。「大綱」では、職員の能力開発を強調していたのではないか。 |
【再就職の適正化にかかわって】
(19) |
早期退職慣行の見直しの課題をどのように考えているのか。現状の定員管理が早期退職を余儀なくしている、とする問題意識はあるのか。長期間勤務を前提とした人事制度の構築というが、現状ではそれが実現していないという認識か。長期間勤務を阻害している制度的な問題点は、どこにあると考えているのか。 |
(20) |
再就職にかかる許可基準の設定は、誰がどのような手続きでおこなうのか。公務員制度の民主制を担保するうえで、専門的第三者機関の関与を制度化すべきではないのか。 同様に、「報告事項」の詳細は、誰がどのように設定するのか。 |
(21) |
特殊法人、独立行政法人にかかわって、いわゆる「役員出向制」と報告との関係は、どのようになるのか。特殊法人などから営利法人などへの再々就職(いわゆる渡り鳥)の規制方策は、検討しないのか。 |
(22) |
行為規制の具体的な内容は、どのようなものを想定しているのか。 |
【その他事項にかかわって】
(23) |
女性の採用・登用拡大や、超過勤務の縮減等は、「大綱」段階で強調された改革課題であったが、どのようにあつかうのか。
また、非常勤職員制度について、今日的な観点から検討すべきではないか。 |
以上
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