2004年7月20日《No.173》

「与党『申し入れ』もふまえた質問書」での推進事務局交渉(1)
「能力等級制」の導入目的さえ曖昧と追及

 国公労連は、7月16日(金)11時から、行革推進事務局と「能力等級制」に関する第1回目の交渉を実施しました。
 これは、6月24日に提出済みの「与党『申し入れ』もふまえた公務員制度改革にかかる質問書」(以下「質問書」という)に基づくもので、国公労連からは山瀬副委員長、小田川書記長、「能力等級制プロジェクト」の全通信・狩野書記長、全労働・森崎書記長、全運輸・安藤書記長を含めて7名が参加し、行革推進事務局は笹島参事官、吉牟田企画官ほかが対応しました。以下はそのやりとりの概要です。

  ◆公務員制度改革の目的、すすめ方にかかわって<質問事項(1)(2)関係>
  
→ILO勧告を含め、これまでの経緯を十分ふまえて議論していく

 上記の「質問書」は23項目にのぼっており、行革推進事務局と項目順に交渉を重ねていくこととしています。
 この内、質問事項(1)(2)の「公務員制度改革の目的、すすめ方にかかわって」は、前回交渉(6/24)の際、笹島参事官が要旨次のとおり回答していますので、その内容を掲載しておきます。

【公務員制度改革の目的、すすめ方にかかわって】
(1)  2001年12月25日の「大綱」決定以降の経過ともかかわって、とりわけ、二度ののILO結社の自由委員会からの「勧告」が、今回の公務員制度改革に重要な意味を持っていることを確認したうえで、政府としての検討をすすめるのか。
 また、過去の公務員制度審議会の論議経過や「残された課題」の取り扱いは、どのように考えているのか。
(2)  「申し入れ」は、「具体的な制度設計」に言及している。そのことともかかわって「人事院や各府省との間での緊密な連携」や「職員団体と新しい公務員制度の設計・導入について十分な意見交換」を強調していると考えるが、どうか。
 また、公務員制度の運用主体である各府省段階での労使の意見交換は、制度設計上も重要な意味を持つと考えるが、どうか。
 さらに、具体的な制度設計となると、国家公務員法レベルの抽象的な制度設計ではなく、政令や規則段階も含めた設計が求められていると理解しているのか。例えば評価制度について、この間言明してきた試行との関係は、どう考えているのか。

【行革推進事務局の回答要旨】
 これまでの経緯はもとより、ILO勧告も十分ふまえて、議論を進めていきたい。(国公労連、行革推進事務局の)双方とも依って立つスタンスに大きな違いはないと思っている。
 「残された課題」(消防職員の団結権、非現業職員の交渉不調の場合等における調整等の方法、刑罰規定の再検討)は確かに重要で、政府も「公務員問題連絡会議」で引き続き検討中だが、消防職員の団結権問題はここ(国公労連と行革推進事務局の交渉)での課題ではないし、刑事罰問題も重たい課題だ。いずれにしても、質問事項(3)以下の議論との関連で出てくるのではないか。
 各府省とも十分な議論をしていきたいと考えている。また、「具体的な制度設計」では、政令や規則の検討も必要となってくることはご指摘のとおりであり、労働組合とは運用課題を含めて十分に議論させてもらいたいと考えている。

  ◆評価制度の試行にかかわって<質問事項(2)例示関係>
  
→試行の重要性を十分認識し、内容・時期の早期具体化に努める

 上記の回答内容をふまえ、今回の交渉では、最初に質問事項(2)の「具体的な制度設計」にかかわる「評価制度の試行」問題について、行革推進事務局の考え方を質しました。
 これに対し、笹島参事官が「評価制度の円滑な導入にとって試行は不可欠だが、制度自体が検討段階にあり、人事院とも制度設計で議論中なので、試行の具体的な内容や時期について確たることは言えない」と回答したため、次のような議論の応酬になりました。

【国公労連の追及点】
 2002年の試行論議の際、試行なしには制度設計ができないとして推進事務局自身が「試行先行」を回答していたはずだ。この秋の臨時国会に法案を出すというのであれば、当然、試行との前後関係が問題になるはずで、その質問になぜ答えられないのか。

【行革推進事務局の回答要旨】
評価制度の設計が全部できないと試行もできないので、それぞれの段階で組合とも相談していきたいということだ。使える制度でないと意味がないので、ステップを踏んでいくことが重要であり、職場の理解なしには進まないことも十分承知している。
 試行の内容や時期については、早めに具体化できるよう努力していきたい。

  ◆能力等級制の目的等にかかわって<質問事項(3)(4)関係>
  
→「能力等級制」導入で何がどう変わるのか、明確に答えられず

【能力等級制の目的等にかかわって】
(3)  能力等級制を導入することが、なぜ能力・実績主義の人事管理を実現することになるのか。現行の公務員制度のどのような点に問題があるとして、能力等級制による改革が必要だと考えているのか。
(4)  少数職種での昇格実態の劣悪さ、実質的な女性職員の昇格の遅れ、転勤を条件とする昇任などの問題は、能力等級制の導入によってどのように是正されると考えているのか。
 続いて、今回の交渉の中心となる「能力等級制の目的等にかかわって」の内、上記の質問事項(3)(4)の問題について、行革推進事務局の考え方を質しました。
 特に、「能力等級制」導入に関する議論の前提として、「現状のどこに問題があり、何をどう変えようとしているのか、なぜ能力等級制の導入が必要なのか」をまず明らかにするよう迫ったのに対し、笹島参事官は、要旨次のような回答を繰り返すにとどまりました。

【行革推進事務局の回答要旨】
 官職分類による職階制や現行の標準職務表による暫定制度も、能力・実績主義に変わりはないが、任用制度の確立をめざして、能力等級制にもとづく「標準職務遂行能力」の策定で公務員の働きぶりや意識の改革につなげていきたい。
 現状の問題点としては、人事管理に具体的基準がなく、年功的運用が公務のパフォーマンスを落としている実態がある。個別の能力を分類することで効率的な公務運営が図れるようになるし、評価結果をつうじて人材育成にもつなげることができる。

 これを受けて、国公労連は、例えば司法処分も行う労働基準監督官の機関別格差による処遇の悪さ、長距離通勤や単身赴任が困難な女性職員の実質的な昇格の遅れなど、現状の山積する問題点が「能力等級制」の導入で解決するのか、と明確な回答を迫りました。
 しかし、笹島参事官は、「どういう職種であろうと、また性別に関係なく、能力等級制の導入でより適材適所が実現する」という抽象的な回答に終始しました。
 以上のやり取りをふまえ、国公労連は、「これまでの議論の積み上げがあるのだから、これをふまえて具体的な回答をしていただきたい。質問事項は多岐にわたっており、議論をスムーズに進めるうえで、対応メンバーの工夫も求めたい」と主張し、今回の交渉を打ち切りました。


以上