2004年8月19日《No.178》

真正面から答えず弁明に終始する推進事務局を
「能力等級」「評価制度」の矛盾点で徹底追及

 国公労連は、8月18日(水)午前、行革推進事務局と交渉を実施し、前回(8/11、8/13)に引き続いて「能力等級制」「評価制度」に関する説明を受けるとともに、その内容について追及しました。
 この交渉には、国公労連から小田川書記長、岸田書記次長のほか、「能力等級制プロジェクト」の全運輸・安藤書記長を含めて6名が参加し、行革推進事務局からは笹島参事官、「能力等級制」担当の坂口、松重の両企画官が対応しました。以下はそのやりとりの概要です。(注:国公労連、行革推進事務局)

 今回の交渉は、前回からの説明や各資料に対して国公労連が質問事項を述べ、行革推進事務局側がこれに回答するという形式で行われましたが、推進事務局側が質問に真正面から答えず、「(評価制度に)勤務条件性は認めないという前提でこちらは考えている。神学論争的な議論はしたくない」などと頑なな回答の繰り返しに終始したため、議論は度々紛糾しました。

 前回の文書で職種別の能力等級表が示されたが、行政職能力等級表(一)以外の職種の能力等級表ではA(本庁)、B(それ以外)に表が分けられていた。これと給与表の整合性はどのようなイメージとなるのか。また、例えば給与表3級から4級への昇格に際して係員級から係長級への昇任を扱うことになるがこの順序はどうなるのかとか、現状では9級の課長補佐などが存在しているがこれは能力等級の上ではどう扱うことになるのか、など多くの疑問が生じるがどうか。
 整合性について言えば、結論はまだ決まっていないが、給与表も能力等級表と同様に職務の責任、複雑と困難の度に応じて設計されることになっている。ただし、給与表については人事院の判断であり、その内容はまだ聞いていない。能力等級での官職分類は職名ではなく、その官職に求められる職務遂行能力で分類されるため、給与等級9級の本府省課長補佐は能力等級では課長級(4級)に分類されることになると考えている。
 昇任と昇格の順序については、通常は昇格が後から付いてくることになる。ただし、人事院規則の定め方次第では、レアケースであろうが昇任しても昇格しないことも考えられる。昇任しないのに昇格する場合は能力等級を大括りにすることから一般的に考えられる。具体的運用については、まだ検討中である。
 新しい制度は効率的な人事管理を目指すものとして検討されているとの説明であったが、能力等級は内閣総理大臣が、給与表は人事院がそれぞれ所管し、双方に予算上の制約例えば定数を規定するとなると、二重の査定を求める仕組みとなり、むしろ各省の負担が大きくなるのではないか。
 今のところまだ固まっていないが、各府省の負担は現状以上にはしない方向で検討している。検討中なので負担増が全くないと言える段階ではないが、各府省の負担が増えないよう制度設計しなければならないと考えている。

 国公労連「労使協議の仕組みがなければ、制度の民主的運用などできない!」

 評価制度は給与に直結するものではないとの説明であったが、評価が任用に大きく影響を及ぼすことは間違いない。そうであれば当然勤務条件性も認められるはずであるし、公務員制度審議会の指摘のように労働組合との交渉事項となる。また、評価制度の議論は、制度設計と運用の2段階があるが、運用は各省レベルで決められる問題であり、労使協議で十分に議論する仕組みが出来ない限り、制度を民主的に運用することなど出来ない。ここをどのように保障するつもりなのか。
 任用に、ただちに勤務条件性が認められるとは考えていない。評価制度についても、勤務条件そのものではないという整理で制度設計を進めており、組合との意見交換もそれを前提としている。もちろん、いろいろとご意見があれば聞いていくし、見直すべきものがあれば見直していくことになる。
 苦情処理のあり方も二通りあって、個別労使関係だけでなく集団的労使関係での対応も必要である。これは制度設計と同様、運用の段階で極めて重要になる。行革推進事務局の案に出ているのは個別労使関係だけを対象とするものであり、それだけで全てに対応出来るわけではない。評価制度そのものに勤務条件性を認めないと言うが、では、その場合の苦情処理方法をどのように考えているのか。これまで各省の運用が主体でブラックボックスだった人事管理に、民間的手法である評価制度を入れたいというのであれば、同様に民間的労使関係を保障するのが当然ではないのか。

 推進事務局「(評価制度に)勤務条件性なしが前提。神学論争はしたくない。」

 今回の制度改革は、民間に出遅れた公務がようやく評価制度を取り入れるということでやっているわけではなく、あくまでも公務のパフォーマンスを上げるために能力等級制や評価制度を導入する目的でやっている。そのうえで、評価制度には勤務条件性はないという前提に立ってどうしたら制度設計が出来るのかを考えている、というのがこちらの議論だ。入り口の部分で、勤務条件性に関する神学論争的な議論で止まりたくないと思っている。
 現行制度下でも恣意的な運用がなされていることは、全税関の賃金差別事件における最高裁判決での事実認定などを見ても明らかだ。管理運営事項ということで交渉拒否する事例もあとをたたない、この部分の改善こそ必要、したがって、制度設計にあたって労働組合側が能力等級や実績評価の明確な基準を求めるのは当然であり、また、運用の段階での公平性や納得性を保障するためには、それをチェックする仕組みとして労働組合の関与や職員の参加は必要不可欠なはずである。ここを抜きにして議論をしても意味がない。
 当局の恣意性を増やそうと思って制度設計をしているわけではない。具体化にあたっては客観性や透明性のある仕組みをつくることが重要だとの認識だ。具体的には行政措置要求や人事院の関与も考えている。苦情処理方法についても、我々とすればかなり具体的イメージをお示ししているつもりだ。これらを基にして、どういう制度をつくるべきか組合の意見を聞いていきたいと考えている。
 法案を出す段階までに、いろいろと議論をしていきたい。まだ検討中のものもかなりあるが、順次お示しした部分について議論をさせていただきたいと考えている。

 国公労連「本日のようなやりとりはもう認めない!」法案策定まで徹底追及を通告

 以上のやりとりの後、小田川書記長は「制度の基礎が明らかにされないのに、上の仕組みだけを説明されても、十分な意見交換をすることは出来ない。今後も本日のようなやりとりで押し通そうとするのであれば、制度の中身の議論をすることは難しくなる。法案策定までにはきちんとした説明をするよう、強く求める」と行革推進事務局側に厳しく通告し、引き続き8月20日(金)午前には「再就職管理(=天下り)」問題について交渉を行うことを確認し、今回の交渉を打ち切りました。

以上