2004年9月6日《No.180》

6月以降の交渉経過をふまえ「申し入れ」提出・交渉
 〜「曖昧で性急な法案検討作業は止めよ」との追及に対し
  推進事務局が「法案提出前には全体像を示す」と回答〜

 国公労連は、9月2日(木)午前10時30分から行革推進事務局に対して、「国家公務員制度改革」に関わる「申し入れ」(別掲参照)の提出・交渉を行いました。
 これは、推進事務局による「国家公務員制度改革関連法案」の検討作業に関し、本年6月以降の国公労連との交渉・協議の経緯と、8月27日に推進事務局が与党に説明した「法案の骨子(案)」(8月5日の一部修正版)をふまえて実施したものです。
 この交渉には、国公労連から山瀬・盛永両副委員長、小田川書記長ほか3名が参加し、行革推進事務局からは笹島参事官、岩崎・相川両企画官ほか2名が対応しました。以下はそのやりとりの概要です。

◆能力等級制にかかわって/曖昧なままでの制度導入には反対
【国公労連の追及点】
 能力等級制は標準官職、標準職務遂行能力の内容が不明で、出先機関や専門職の分類の考え方が十分示されていない。また、能力等級を活用した任用、育成の仕組みが現状とどう違うかが不明確で、能力等級の設計や運用、官職分類にあたっての労働組合との関係が不明である。
 標準職務遂行能力は能力等級や官職分類の基本となるとともに、能力評価の基礎になる。能力等級制や評価任用がどうなるのかは大きな問題だ、具体的にいつ示すのか。
 個々の官職の分類はどうするのか。行政組織法令から自動的に決められるのか。個々の官職が何級に分類されるかは職員の処遇にもかかる重大な問題であり、当局の恣意制が制限されるチェックの仕組み、労組の関与が必要。
 8月5日の「骨子(案)」はまだ生きているのか。本省とそれ以外を区別する能力等級表A・Bには賛成できない。
 機関間格差の是正が組合の要求だ、これも同列に扱って欲しい。機関間格差が省庁間格差につながっている。また、府県機関がないため、地方出先機関の処遇が劣悪になっている例もある。こうした問題の是正措置も不明確だ。官職分類を各省にまかせると省によって有利、不利が出る可能性がある。チェックはどうするのか。全体像は法案作成の決定手順の前に具体的に示してもらいたい。

【推進事務局の回答要旨】
 与党に示した「骨子(案)」は決定したものではなく、引き続き制度官庁と調整して具体的な議論が出来るようにしたい。出先機関や専門職をどうするかは現時点で未定だ。より良い公務員制度改革をし、公務員が活力を持って仕事に専念するための仕組みを検討、議論したい。「骨子(案)」で引き続き意見交換し、共通理解の部分をふやしたい。能力等級や評価制度への組合の関心は分かる。能力等級は制度の中での中核であり、他の制度との関係にも関心があることも分かる。組合とも話をして、共通の理解を深めたい。能力等級は基本的に官職分類であるが、組織関連法令とも一体で、各行政機関が権限と予算の範囲で判断するもの。
 能力等級が職務遂行能力をベースに作られるのは指摘の通りだ。しかし、標準職務遂行能力の基準は法律ではなく内閣総理大臣が決める。それは官職が行政組織の中でどのような能力を求めているかを記述するもので、官職分類の一環として定められるという整理になる。能力等級制は官職分類であり、能力評価の基礎である。
 基本は個々の官職ではなく、この指とまれ式に標準官職と本省の能力等級を決める。組織段階に沿った「課長」「補佐」などの職名で自動的に分類される仕組みではない。
 級別定数的な世界は別になる。官職分類は予算上の制限がある。能力等級も含め、先週出したものは与党との対応が中心であり、その後検討を続けているが詳細などについて回答できるものではない。能力等級表のA・Bについて「骨子(案)」からは落ちているがまだクリアではなく調整中だ。
 各省の要望もあり、意見をふまえて調整している。また、制度官庁との間で詰めながら話しているため、見えにくい部分があるが、それらは順次示したい。各省からも懸念の声が出されたり、これからの合意形成が難しく、段階的に進めるプロセスになろう。いきなり法案要項にするようなことはしない。

◆評価制度にかかわって/能力評価と実績評価の矛盾を追及
【国公労連の追及点】
 能力評価は推進事務局で検討し、実績評価は人事院で検討するとしているが、これで全体の整合がとれるのか。
 能力評価は職務を遂行する上で発揮した能力の評価、実績評価は実際に職務を遂行した実績評価というが、能力評価と実績評価の違いがわかりにくい。能力評価は中期的な評価というなら、実績評価の積み上げでも可能。どうして二つの評価をやらなければならないのか。また、給与と任用は厳密に分けられるものではない。
 昇格のありようや差の付け方で、評価の透明性、納得性も違ってくる。
 能力等級制度と整合する給与制度と言いながら、評価制度と給与制度をバラバラに検討すると任用段階で混乱し矛盾を生じる事になる。一体的に議論したら良いのではないか。

【推進事務局の回答要旨】
 能力評価、実績評価それぞれ職務行動を通して発揮された能力あるいは実績を評価するもの。前者は任用に、後者は給与に活用する。
 たしかに、評価シートは似たものがあるとか、両方やるのに負担が大きすぎるという各省の意見もある。実際のやり方では重複感がないようにする工夫が必要。主体がはっきりしないと言うが公務員制度の評価制度は推進事務局が一元的に行う。ただし、給与制度全般の見直しにかかわるものは人事院で検討を始めている。
 能力評価が中期的な観点で、実績評価はより短期的な観点での評価である。ただし、任用の際に実績をまったく見ないわけでもなく、2つを活用することになる。法律上の書き方はこれからだが、任用制度と能力実績との関連で評価を活用することが受け止められるように書く。勤勉手当にどう反映するかなどは、給与の中でどう書くかの問題だ。いずれにせよ評価制度は評価制度として独立させて検討する。
 実績反映の給与や給与構造、カーブのあり方等の給与制度は能力等級制から自動的に決まるわけではない。給与制度を人事院が検討すること自体は矛盾しない。ただし、能力等級制との整合性は当然必要だと考えている。
 降任と降格をどうするか等、降任と降格の関係はまだ整理されてはいない。降任すれば降格することとなるが、同じ能力等級の中での昇格・降格をどう扱うかは実績評価に基づくことになる。能力等級は潜在能力ではなく発揮する能力、補佐なら補佐としてのマネジメント能力などをみる。それを発揮しなければ能力はないことになる。給与と任用の関係は人事院と連携しながらやっていく。

◆評価制度にかかわって/勤務条件性とチェックの仕組みを!
【国公労連の追及点】
 評価について勤務条件性を認めるべきだ。民間でも労組や職員代表を認めている。また、評価制度については試行が必要要件である。使えるものかどうか判断せずに導入するのは問題がある。
 昨年の11月、ILOとユネスコが、日本政府に対して教員の評価をめぐって当該組合との交渉を行うべきという勧告を行った。労使で管理運営事項と交渉事項を議論して整理せよとの指摘である。
 明確な管理運営事項もあると思うがグレーゾーンもある。民間の労使関係では、グレーゾーンは出来るだけ労使の話し合いが必要だとしている。評価制度について、管理運営事項だとしているが、交渉事項とすべきである。評価には絶対がない以上、評価基準について労使との話し合いのもとに、より良いものを作りあげていくべきである。そのためにも試行が必要だ。
 これまで能力等級制や評価制度について議論してきたが、片山委員会へ提出した書類などをみても、我々の要求をとり込んで変更した記述はなく、聞き置く程度でありきわめて問題だ。評価中心の人事制度を導入し任命権者単位の人事管理に移行することとしているが労組、職員との話し合う仕組みがないと失敗する。

【推進事務局の回答要旨】
 評価制度は今回の改革で重要な位置を占める。任用・給与の重要な判断材料となるが、実際の活用あたっては人事管理上の総合判断で決まる。従来の司法判断も勤務条件に入らないとしており、それを判断しつつ制度設計している。実際に使える制度でなければならないという点は同感であり、基準の設定など具体化の中で話し合いながら検討したい。
 能力評価、実績評価は思いつきで言っているのではなく、総務省、人事院でも検討されたし、各省とも話し合い、いろんな議論をふまえて現在に至っている。全体像はまだ示せないが、具体化については試行を進める中でフィードバックしながら進めていきたい。
 行政は国民の負託を受けて業務をやっており、労使で決めるべきかという問題がある。交渉事項かどうかより、試行を含め組合と話し合いながらやっていきたい。どこまでが管理運営事項でどのまでが勤務条件かの議論は別として話し合いは出来る。現行制度による交渉は可能だ。また、労働組合との話し合いの重要性は十分承知している。

◆労働基本権にかかわって/個別議論の場をキチンと設けよ!
【国公労連の追及点】
 労働基本権について、事務局として担当を設けて検討しているのか。また、二度の「ILO勧告」にそった具体的な制度検討と、交渉・協議を強く求める。

【推進事務局の回答要旨】
 労働基本権問題の担当は私(笹島参事官)であり、交渉・協議の進め方を議論していきたい。ILOと我々では考え方やスタンスに乖離がある。一方、ILOの勧告には組合とも話し合って議論を進めよという主旨も含まれている。ILOへの対応は政府としても進めることになっているが、まだ政府全体の合意はできていない。

 最後に小田川書記長は、「今回の回答があまりにも曖昧で、このような状況で法案作成作業が進められるとすれば、今後どれだけ組合として検討期間があるのか疑問だ。いずれにしてもスケジュールありきでなく、議論の場をキチンと保障すべきだ」と主張し、交渉を打ち切りました。
以上