2004年12月15日
政府行革推進本部長
小泉純一郎 殿
日本国家公務員労働組合連合会
中央執行委員長 堀口士郎

「今後の行政改革の方針」の策定作業の中止を求める申し入れ

 貴本部は12月24日にも、(1)2005度から5年間で定員の10%以上を削減することとし、05年夏に定員削減計画を改定する、(2)05年度中に中期目標が終了する法人のうち、32法人について前倒し見直しを行い、10法人を削減し、研究・教育関係25法人を非公務員化する、(3)05年中に市場化テスト法(仮称)を整備し、民間主体の第三者機関を設立するとともに、その推進組織を整備する、(4)公務員制度改革の基本方針案として平成17年度中に新たな人事評価制度の試行に着手する、などを内容とする「今後の行政改革の方針」を決定すると伝えられている。このこととかかわって次の点を申し入れる。

(1)  国家公務員の定員問題については、治安対策など特定分野の強化のために地方支分部局の大幅な定員削減と合理化が強調されている。
 国公労連は、防災部門や雇用確保・対策など国民生活の安定に関わる行政実施部門の拡充こそが求められていること、増大する業務量のもとで、恒常的、慢性的な長時間過密労働が国家公務員の健康といのちを蝕む深刻な状況にあることなどを事実をもとに、繰り返し主張してきた。行政サービス提供の第一線である地方支分部局の定員削減や、そのための事務・事業の見直しは、私たちが懸念する行政サービスの形骸化を一層深刻にすることになりかねない。行政実態や国民のニーズを踏まえない削減目標の設定は断じて行わないよう強く求めるものである。
(2)  独立行政法人の見直しにあたっては、組織・業務全般の整理縮小、民営化とあわせて、非公務員化を前提にした検討が進められている。
 国公労連は、国民生活や社会経済の安定に関わる「特定独立行政法人」としての事情に変わりはないこと、雇用・身分・労働条件の安定が国立試験研究機関の公共サービスの安定的提供に不可欠であることなどを主張してきた。中期目標終了前に、組織再編ありきの方針のもと、個別の法人の目標到達状況の検証もないままに、一方的な組織改編を決定することは、独立行政法人制度の基本的なルールをねじ曲げることになる。「法のルール」を無視した「方向付け」は行わないよう強く求めるものである。
(3)  官から民への事業移管を徹底する手段として「市場化テスト」や「官業の民間開放」問題については、官民競争入札による「市場化テスト」を横断的・網羅的に実施するとしている。
 国公労連は、ハローワークや社会保険庁の業務が「市場化テスト」のモデル事業として名指しされているもとで、公共サービスは継続的・安定的に提供されなければならないこと、営利追求や効率性確保を最優先する民間企業は、参入の自由と同時に撤退の自由を有していることから、全国一律のサービス提供が困難になること、人件費削減のため低賃金の派遣や請負、パートなど非正規労働者の増大が懸念されることなど、国民に対する行政責任との関係で重大な問題を有している。したがって、「市場化テスト」をはじめとする「官業の民間開放」の検討作業は中止し、この間の規制緩和・改革の雇用関係への影響などの問題点の検証を行うよう強く求めるものである。
(4)  公務員制度改革については、二度のILO勧告を無視し、労働基本権を棚上げにしたままでの作業の継続と評価制度の導入をめざした現行制度下での試行などが画策されている。
 国公労連は、この間の最大の争点であった労働基本権の回復の課題や、評価制度の勤務条件性の課題解決を先送りし、曖昧にしたままでの公務員制度改革の続行を認めることはできない。ILO勧告にもとづく労働基本権回復を中心課題とする新たな交渉・協議の場の設置を強く求めるものである。
(5)  国公労連は、貧富の格差が拡大し、弱者切り捨てとなる施策は即時中止すべきだと考える。また、年間3万人を超える自殺者が続く異常な状況を改めるためにも、ナショナルミニマムを確立し、国民の共同利益を実現する行政責任の再確認が必要だと考える。
 政府が決定しようとしている「今後の行政改革の方針」は、公務の公共性を損なうものであり、「公正な社会」の実現を求める国民要求に背を向けるものである。そのことから「今後の行政改革の方針」の策定を断じて行わないよう要請する。


以上