国公FAX速報 2004年11月18日《No.1587》

公共サービスの継続性・安定性を脅かすな
11/18 市場化テスト等で規制改革・民間開放推進会議へ申し入れ

 国公労連は、11月18日、市場化テスト等、民間開放問題で規制改革・民間開放推進会議へ申し入れを行いました。これは、同会議が、12月中旬に、(1)市場化テスト、(2)個別官業の民間開放推進、(3)14の重点検討事項について、答申を行おうとしていることにことに対応したもので、検討の具体的方向性、特に公平性、中立性、継続・安定性の確保についての考えを質すとともに、公共サービスを営利企業に委ね、商品化することに反対する立場から申し入れを行い、国民・関係労働者の声を踏まえた公共サービスのあり方検討への転換を求めました。申し入れには、国公労連盛永副委員長、飯塚独法対策部長、太田中執と総理府労連、全法務、全厚生、全経済、全運輸、全港建、全気象、全通信、全労働、全建労、全司法の代表が参加、規制改革・民間開放推進室の岩佐企画官が対応しました。

 申し入れは、冒頭、盛永副委員長が次の2点を質しました。
【盛永副委員長】
1. 規制改革・民間開放推進会議は、12月中旬に答申を出す方向と聞いているが、現在の状況はどうか。
2. 読売新聞が報道しているが、慎重意見を排除し、積極推進の委員ばかりで会議を構成することが政府の政策会議としてふさわしいか疑問だ。公共サービスについて、開かれた検討をする場を作るべき思うがどうか。
 これに対して推進室は、要旨次のように回答しました。
【推進室】
1. 市場化テストについての民間提案を17日に締め切ったが、100件超える提案があり、鋭意整理中で明日には記者発表できると思う。内容的には、ハローワークと社会保険関係が半数近い。推進体制については、これから検討という状況で、会議の「中間とりまとめ」で言及している以上作らないということにはならないが、査定庁や推進室幹部の考えもあり、答申を受けてから整理する。モデル事業について、経済財政諮問会議でもハローワークと社会保険に言及している。早めに来た民間提案から各府省とやりとりしている。12月のとりまとめまで、やりとりをホームページに掲載するなど公開のプロセスで詰めていく。また、実施する以上、ガイドラインが必要で、きちっと作っていく。市場化テスト法については、「中間とりまとめ」では来年度に整理するとしており、12月の答申でどこまで書くかは会議で議論していただく。
2. 読売新聞に報じられたワタミ社長の件は、教育関係のワーキンググループの話で、この関係は前身の総合規制改革会議から続いている話であり、委員の意見は「株式会社の学校経営を認めるべき」というものである。賛否両論の方はワーキンググループに招くことで対応するので、専門委員を辞退していただいた。

 この回答を受けて、以下のようなやりとりを行いました。
【国公労連】 1. より高く売れる相手にサービスを売ろうして、資力の差によりサービスの享受に差が付けられる危惧がある。そのような民営化、民間開放は行わないこと。
2. 参入の自由があれば撤退の自由もある。それによって安定的、継続的なサービス提供を妨げられる危惧を持っている。そのような市場化テスト、民間開放は行わないこと。
3. 公共サービスに関わる国民的な議論が必要で議論にあたって、規制緩和を進めるにあたって強調された経済的効果を検証するなど、真摯な検討が必要。また、個別業務に立ち入る以上、職員・労働組合との協議・合意・納得が必要だ。
【推進室】 1. 市場化テストは、儲かるところだけつまみ食いするのではなく、現状より良いサービスをコストを下げて提供しようとするもので、ベースの人件費、予算は国が提供する。現状より経済力の差でサービスに差がつくとは考えていない。国の予算はすべてに公平に来るから、ある部分をつまみ食い的にやるということではない。長期に就職していない人の職業あっせんは、すでに厚労省が民間委託している。市場化テストは、必ず民が落札するのではない。民の方が利益を確保した上で安いならば民が落札するということになる。
2. 撤退の自由の議論はしていないが、何年かたつと再度入札が行われる。その際、必ずしも同じ企業になるとは限らない。会議では、むしろ企業が変わることがありうべきで、望ましいという議論になっている。
3. 規制を新に設ける場合、その影響を分析し、パブリックコメントを求める手法をこの10月から試験的に各省で行っている。会議として、各省から意見いただいているし、今回のことも含めいろんな形で意見をいただいて答申をし、政府として方針を決定する。
【全建労】 民間開放は、公的施設維持管理→社会資本整備→危機管理→維持管理とノウハウを生かすサイクルを崩す。短期契約は、専門知識をもつ職員を配置できない。
【全労働】 安定所は単体でなく、労基署と連係して機能している。オーストラリアの市場化テストでは、3年ごとの契約で専門知識を持った職員が育てられない。
【全経済】 青色LED発明の対価は600億円と算定された。そのような特許制度を支えるのは、審査会社では無理だ。会議がいう審査の滞貨は、人と金を付けない査定庁の責任。
【全通信】 通信の秘密は憲法で保障。電波監視が、電波の公平・能率的利用の監視のために、公共の福祉の観点から唯一認められている。効率性の議論だけでは駄目だ。
【総理府労連】 統計は、民間委託も進め、自治体の協力を仰いでいる。民間開放のイメージがわかない。信頼性に関わるし、各省横断的取り組みで合理化することにも逆行。
【全法務】 登記業務は、独立した権限を持つ登記官が、法的知識に基づいて厳格に判断し、経済活動を支えている。民間開放は、継続、安定、公平性に関わり、反対だ。
【全厚生】 社会保険業務波は全国一体でやっており、つまみ食いは成り立たない。憲法25条を生かす観点が必要で、市場原理とは相容れない。
【全運輸】 公共サービスを私企業に任せるのは国の責任放棄。民間が落札した場合、もとの職員を省庁間は移転するのは非現実的だ。また、車検期間延長は国交省の調査を待て。
【全港建】 公共サービスを公平に受けられるということを優先すべき。組合と十分な協議を行え。
【全気象】 気象の情報発信の民間開放を進めるというが、情報発信の基盤である観測はコストもかかっている。予報の整合性の確保も必要。住民サービスも国だから無料。
【推進室】 国としてやらなければいけないことを民間開放しようというのではない。民間の知恵を借り、国の責任の上で開放する。会議の委員の構成は、総理の任命だが、各省やいろんな方々の意見を幅広く聞くということは事務局としてサポートする。横断的配置転換は、会議からも意見をいただき、モデル事業を進める中できちんと法制化していく。車検は、国土交通省の調査により延長を議論していく。各省の意見も十分踏まえ、今後も官が責任を持っていく。専門知識を持つ職員を養成することはコスト面で無理なのではないか、というご意見も出されたが、コスト、入札が適正かは第三者の評価も入る。問題ある入札にはならないと思う。

 最後に、盛永副委員長が、「会議に強打されて意見を披瀝してもらいたい。効率性ばかりでなく、良質なサービスを継続的、安定的に提供するための議論を求めたい。最初に結論ありきでは駄目だ。12月で問題は終わりではない。今後も引き続き問題提起をするので真摯な対応を求める」と述べ、申し入れを終わりました。
以上

2004年11月18日
規制改革・民間開放推進会議議長 宮内 義彦 殿
日本国家公務員労働組合連合会
中央執行委員長 堀口 士郎
市場化テスト等、民間開放に関わる申し入れ

 貴会議は、骨太方針2004に基づき、民間開放の横断的手段である市場化テスト推進の方針決定、官業6分野の民間開放、14重点検討事項の今年度中の措置などについて、年末に答申するため、作業を進めている。
 営利企業の参入で、資力により享受できるサービスに差が生じるのではないかという懸念は広く存在している。そもそも公共サービスの役割の一つは社会的不平等の是正を、継続的、安定的に行うことであるのに、「教育も金次第」、「医療も金次第」では、それにまったく逆行する。また、営利企業が効率的であるという場合、よりもうけの大きい分野へ投資を集中するために迅速な参入と撤退の自由が保障されているのである。貴会議は、法的な措置によりサービスの質を確保するという議論をしているが、撤退の規制については議論されていないと認識している。そうであっては、安定、継続的なサービス提供の妨げになりかねないのではないかと考える。
 議論を進める上で、規制緩和・改革を推進する理由とされた経済効果や陰の部分についての検証をおこない、かつ、広範な人々の参画を得て、公共サービスのあり方について国民的合意を得るべきだと考える。さらに、市場化テスト等について、その全体像すら明らかでないままに、結論ありきの論議が行われていることへの不満と批判が広がっている。
 以上のことから、貴職に下記事項の実現を強く求めるものである。


1. 公共サービスは、公正が効率よりも求められることを踏まえ、資力の差によりサービスの享受に差が付けられるような民営化、民間開放は行わないこと。
2. 撤退の自由によって安定的、継続的なサービス提供を妨げられるような市場化テスト、民間開放は行わないこと。
3. 規制緩和の効果について検証を行うとともに、今後影響を被る各層の意見を幅広く聴取し、国民的な議論により、公共サービスのあり方を検討すること。
4. 雇用・労働条件に大きな影響を受けるおそれのある公務・公共部門労働者・労働組合と十分な協議を行い、合意・納得を得ること。


以上


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