公務員の政治的中立性の厳格な遵守を求める(談話)
5月14日の新聞各紙は、「総務省『郵政』2幹部更迭へ」(読売新聞)などとする報道を行った。事の詳細は明らかではないが、「公務員の政治的中立性」を政治が蹂躙する事態が、事もあろうに内閣総理大臣によって行われたことに、強い危機感をいだかざるを得ない。 公務員と政治との関係については様々な意見があり、近年は、内閣による各府省・幹部公務員の「統制」強化を求める意見が強くなっている。しかし、法治国家である以上、議論過程の意見ではなく、実施されている法律にもとづき、個々の行為を判断すべきであり、報道の内容が事実とするならば、見過ごすことのできない問題がある。 政権交代を前提とする民主国家においては、政権交代の度に公務員の入れ替えが行われ行政執行が変化するという不合理性を排除し、行政の中立・公正性を担保するために、行政執行を専門家である職業公務員に委ねて継続性・安定性を維持することが、民主的且つ効率的と考えられている。したがって、「職員は法律又は人事院規則に定める事由による場合でなければ、その意に反して、降任され、休職され、又は免職されることはない」とする国家公務員法第75条の持つ意味は、極めて大きい。そのような意味を持つ身分保障規定を守るべき責務は、内閣を構成する政治任用の公務員であることは言うまでもない。 報道によれば、小首総理大臣は、麻生総務大臣に対し、同大臣の任命の下にある二人の官僚の「解任」を求めたが「拒否」され、結局、「更迭」することで落ち着いた、とされている。 憲法第66条には内閣の連帯責任が明記され、それを受けた内閣法では「行政事務の分担管理」(同法第3条)が明文化されている。また、一般職国家公務員の任命権については、国家公務員法第55条において「各大臣等」に属するとされている。内閣の長としての内閣総理大臣が、各府省の職員の人事に介入する権限は、法律上は認められていないのである。 また、先に言及した国家公務員法第75条との関係で、勤務実績の判定などが行われたとする報道はない。多くの報道は、政府が法案提出を閣議決定した郵政民営化法案の策定に、「総務省2幹部」が非協力的であったことが「更迭事由」として指摘しているが、これは職務命令違反の範囲と考えられるものであり、意に反する不利益処分が認められるものとは考えられない。 民主的な行政は、法に基づく民主的な手続きを経て執行されることで実現するものである。行政のトップが、現にある法律を無視し、民主的な手続を経ず、自らの「感情」に従って、人事介入をおこなうということでは民主的な行政は根づかない。 国公労連は、現行の公務員制度の全てを是とするものではないが、少なくとも「政治的中立性」の厳格な維持が民主的行政を担保する要にあるとする点については、その具体化、発展を強く求めるものである。また、民主主義を軽視するかのような「首相のリーダーシップ強化」論議が繰り返されている昨今の状況に強く懸念を表明する。
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